日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[E] その他

2024年3月30日(土) 10:00 〜 10:15 E会場 (小会議室1)

10:00 〜 10:15

[E-19] 動物園のニスコーティングされた糞標本を食害したナガヒョウホンムシの事例

◯細谷 忠嗣1 (1. 日本大学生物資源科学部)

2023年5月に、福岡県の大牟田市動物園において展示用に作成された複数種の「うんち標本」が保存中に昆虫類に食害され、糞標本に複数の穴が空けられ、また小型甲虫の死骸も確認されたとの相談を受けた。糞標本は天日乾燥後にニスコーティングされたものであり、通常の展示用糞標本の作成方法に従ったものであった。食害を受けた糞標本はツキノワグマとヤマアラシの2種であり、特にツキノワグマにおいて被害が大きかった。また、これらの糞標本は作成後、展示およびイベントで来園者が直接触るなどされた後、非密封状態で約2年間倉庫において保存されていたものであり、2023年5月の確認時には加害甲虫は死骸のみで生き虫は確認されなかった。 小型甲虫標本および糞標本を受け取り後、食害した小型甲虫の同定を行ったところ、ヒョウホンムシ科のナガヒョウホンムシPtinus japonicus Reitterであった。本種は、貯蔵害虫・文化財害虫等として知られており、動植物質の乾物、穀類など幅広い食性が記録されており、昆虫標本を含む動物標本等に対する食害も報告されている。しかし、獣糞に対する食性や乾燥させた糞標本に対する食害に関する報告は確認できなかったので、本発表で事例報告を行う。