日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[G] 環境・多様性・保全

2024年3月30日(土) 09:00 〜 10:30 G会場 (小会議室8)

09:30 〜 09:45

[G-18] 棚田耕作放棄地における捕食性節足動物の生息状況を考慮した管理について

◯岸本 圭子1、綿引 大祐2、豊田 光世3 (1. 龍谷大・先端理工、2. 東京農大・農、3. 新潟大・佐渡セ)

全国的に急増している耕作放棄地の拡大は放棄地内部の生物群集を変化させるだけでなく、生物の移動を通じて周辺の耕作地への波及的な影響も予想される。例えば、放棄地が病害虫の発生源となりうるなど負の影響が懸念される一方で、植物の遷移が進んだ放棄地は鳥類の生息地となり、周辺の耕作地の害虫を抑制する効果が期待されている。これまで新潟県佐渡島の一地域の棚田において耕作者が抱える問題を調査したところ、放棄地の拡大に問題意識はもっているものの畦畔の草刈りや害虫防除にかかる負担が大きく、放棄地管理に手が回らない現状が明らかとなった。演者らは、適切かつ省力的な放棄地管理を構築するために、水田害虫の天敵となりうる動物の放棄地から耕作地への波及的な影響の解明を目指し研究を進めている。本講演では、水田害虫の潜在的な天敵候補である捕食性節足動物のクモ類やゴミムシ類の個体数と、放棄地面積や草刈り頻度との関係について報告する。スィーピング法によって植物上のクモ類を、ピットフォールトラップによって地表徘徊性クモ類と捕食性ゴミムシ類を定量的に採集し、複数の環境要因との関係を一般化線形モデルによって解析した結果、少なくとも植物上のクモ類と捕食性ゴミムシ類では放棄地の存在が個体数を高めていることが示唆された。