日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[G] 系統・生物地理・進化・種分化

2024年3月31日(日) 09:00 〜 11:30 G会場 (小会議室8)

10:00 〜 10:15

[G-26] 日本のクロマダラカマバチは2系統に分けられる(ハチ目カマバチ科)

◯三田 敏治1 (1. 九大院・農・昆虫)

クロマダラカマバチGonatopus clavipesは旧北区に分布する無翅のカマバチで、日本国内でも河川敷などで広くみられる。広食性とされ、複数のヨコバイ類への寄生が報告されているが、日本では主にマダラヨコバイPsammotettix striatusに寄生している。また、欧州では、本種の色彩はほぼ全身黒色から頭部、中体節に黄褐色部をもつものまで様々とされており、国内でも色彩変異があるが地域的にみるとそれほど多様ではない。一般的に無翅昆虫は移動性が低く遺伝的固有化が進む傾向があるが、本種は飛翔能力のある寄主成虫に寄生可能なので、水田カマバチ類同様に広範囲で寄主に運ばれているかもしれない。そこで、mDNAのCOI領域を国内の個体間で比較したところ、北海道の集団と関東+九州の集団間で塩基配列に約1.5%の差異が認められることがわかった。また、北海道の集団は他の地域に比べて明らかに体色が黒く、欧州の主要な色彩パターンと一致した。関東+九州の集団では検討した個体間で塩基の置換が認められなかった。このことは遺伝的交流の存在を示唆する。加えて、羽化個体の性比が極端にメスに偏っていたため、産雌性単為生殖をおこなっている可能性についても検証が必要である。