日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[G] 発生学・遺伝学

2024年3月31日(日) 13:30 〜 14:45 G会場 (小会議室8)

14:15 〜 14:30

[G-35] ハマダラカにおいてdoublesex遺伝子の雄型産物は唾液腺の発達を抑制する

◯山本 大介1、水島 大貴1、加藤 大智1 (1. 自治医大・医・医動物学)

ハマダラカは吸血によりマラリアを媒介する感染症媒介昆虫である。ハマダラカの吸血は卵巣発育のための雌特異的な事象であるが、それに伴い吸血に関連する複数の器官で性的二型がみられる。雌の唾液腺は吸血を円滑に行うための唾液を産生、蓄積する場として重要な器官で、雄と比べて非常に発達していることが知られる。我々は、昆虫の性的二型の分化を担うdoublesex遺伝子の雄型産物(DSXM)を欠損させると雄の唾液腺が雌様に発達することから、DSXMによる雄分化の結果、雄唾液腺の発達が抑制される可能性を以前に報告した。本研究では、この説をさらに強固なものとするため、雌の唾液腺において異所的にDSXMを発現させ、発達への影響を解析することを試みた。ハマダラカ(Anopheles stephensi)において雌の唾液腺特異的にDSXMが発現する遺伝子組換え系統を樹立した。発現誘導に用いたプロモーターは唾液腺の側葉先端部(distal-lateral lobe)で強く働くものであったが、樹立した系統では雌の側葉先端部が矮小化あるいは破損していた。その結果、これらの唾液腺では唾液量が非常に減少していた。以上により、ハマダラカの唾液腺は雌型が基本で、雄ではDSXMが発達を抑制することが強く示唆された。