日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

ポスター発表

[PS02] ポスター発表(学生B:コアタイム1)

2024年3月30日(土) 11:30 〜 12:30 桜(学生) (桜)

[PS02-107] キイカブリダニ雌成虫による他個体の卵に対する保護

◯西川 紗恵1、長 泰行2 (1. 千葉大学・応用昆虫、2. 千葉大院・応用昆虫)

キイカブリダニ(以下、キイ)は、雌成虫が産卵場所にとどまることで卵を捕食者から守ることが知られている。また、野外において同所的に同じ場所で複数の雌成虫が卵とともに存在し、雌成虫は同種他個体の卵よりも自分の卵をよく守ることが先行研究で明らかになっている。しかしながら、雌成虫が他個体の卵を守るのかどうかは明らかになっていない。本研究では、卵捕食者であるミヤコカブリダニ(以下、ミヤコ)存在下で、キイ雌成虫は同種他個体が産卵した卵を守るのかどうかを明らかにするため、ミヤコの有無、キイ雌成虫の有無を操作してキイの卵の生存率を調べた。ミヤコがいない場合、キイ雌成虫の存在は卵の生存に影響しなかった。一方、ミヤコの存在下では、キイの卵を母親ではない雌成虫と維持した場合、雌成虫がいなかった場合に比べて卵の生存率は高かった。キイ雌成虫は実験中に産卵するため、卵の増加による薄めの効果が卵の生存率を高めた可能性がある。しかし、産卵場所にある卵の数によって卵の生存率は変化しなかったため、薄めの効果ではなくキイ雌成虫が他個体の卵の生存率を増加させたと考えられる。これまでの結果から、キイ雌成虫は自分の卵を他個体の卵よりも捕食者から守るが、自分の卵とともに他個体の卵も守ることが示唆された。