日本地震学会2020年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(3日目)

一般セッション » S18. 地震教育・地震学史

S18P

2020年10月31日(土) 16:00 〜 17:30 P会場

16:00 〜 17:30

[S18P-02] 地震火山こどもサマースクールin TANGOでの活動と今後の展望

〇日色 知也1、加納 靖之2、室谷 智子3、特定非営利活動法人 地球デザインスクール、地震火山地質こどもサマースクール 実行委員会 (1.普及行事委員会、2.東京大学、3.国立科学博物館)

地震火山こどもサマースクールは、日本地震学会、日本火山学会、日本地質学会に加えて開催地団体を主催として、災害だけでなく災害と不可分の関係にある自然の大きな恵みを伝えることを目的とし、1999年から毎年夏休みに全国各地で開催している。2020年より前身の地震火山こどもサマースクールから地震火山地質こどもサマースクールに名称を変更した。
2019年度は特定非営利活動法人地球デザインスクールが主体となり、8月10~11日の2日間にわたり京都府北部の京丹後市および宮津市、伊根町で実施した。開催にあたり、地震火山こどもサマースクールin TANGO実行委員会を設置し、実行委員長に加納靖之(東京大学地震研究所)を選出した。また、講師には尾池和夫氏(京都造形芸術大学)、松原典孝氏(兵庫県立大学)、横山光氏(北翔大学)、大邑潤三氏(東京大学地震研究所)、室谷智子(国立科学博物館)を迎えた。「丹後半島のヒミツを解きあかそう!」をテーマに、日本海拡大期から現在までの歴史やそこに成立した地域社会との関係について、野外観察や身近な材料を使った実験、研究者との対話を通して理解し、自然の恵みや観光、自然災害についての理解を深めるとともに、丹後半島の形成過程や丹後地域の過去、現在、そして未来を考えることを活動の目的とした。
丹後地域が含まれる山陰海岸ジオパークは、平成22年10月に世界ジオパークネットワークへの加盟が認定されたジオパークである。京都府、兵庫県、鳥取県にまたがる東西約120km、面積2458.44㎢の大きさをもち、丹後地域はその東端に位置する。地質学的な知見から、丹後地域は主に基盤岩である白亜-古第三系の宮津花崗岩類、それらと不整合関係および貫入関係にあたる新第三系中新統の北但層群、および中部更新統以降の地層より構成される。また、1927年に北丹後地震を引き起こしたとされる郷村断層帯と山田断層帯が分布する。
現地では、20人のこどもたちを4つのチームに分け、天橋立、新井崎神社、丹後海と星の見える丘公園、Hi-net 網野観測点、郷村断層、京丹後市郷土資料館などを回った。天橋立、新井崎神社、丹後海と星の見える丘公園など周辺の地形観察や実験観察から、どこに断層地形が見られるのか、それぞれの地形にはどのような特徴がありどのように形成されたのか、などをグループごとに考えた。特に実験では、日本海の拡大、北但層群中のハイアロクラスタイトのでき方、断層の形成、天橋立の形成と成長など、丹後半島の自然について身近なものを用いて考察した。さらに、国指定の天然記念物である郷村断層と京丹後市郷土資料館では、1927年の北丹後地震による被害や復興ついて学んだ。プログラムの最後には、こどもたちがチームごとに学んだことをまとめ、「丹後半島はどうできた?」「この丹後半島で、どう遊び、どう暮らす?」について発表を行った。発表では、大地震が生じたことでより強固で安全な街づくりが進行するきっかけとなる、自然景観を保ちながら天橋立の侵食を防ぎたい、地元の丹後のいい所を守りたいなどの意見が挙げられ、プログラムを通じて、深く考察していることがうかがえる。
今年度は浅間北麓ジオパークでの開催を予定していたが、新型コロナウイルス感染症拡大と感染防止の観点から来年度に延期とした。この企画は、こどもたちが現地で自然と触れ合いながら、その地域の環境や災害について考えることができることが最大の特徴である。サマースクールの継続的な実施のためにも、来年度開催に向けて、今情勢に合致した開催形式を検討していく予定である。