11:00 〜 11:30
[S23-03] [招待講演] 海域観測による新しい地殻活動モニタリングに向けて
南海トラフ沿いの大規模地震の発生の可能性が相対的に高まったと評価された場合等に、気象庁は臨時情報を発表する。この場合、日頃からの地震の備えの再確認やできるだけ安全な防災行動をとることが推奨されている。2011年東北地方太平洋沖地震は甚大な被害をもたらしたが、「通常と異なる動き」があったことがb値、p値、地殻変動、地震活動、前震の余効変動等から示された(内閣府、2012)。この「大規模地震の発生の可能性が相対的に高まった」ことを南海トラフ域で示すために、定常的な地殻活動のモニタリングが必要であると考えている。
南海トラフ域は東北沖と異なりマグニチュード(M)2以上を持つ地震活動が低調である。そのため、できるだけ小さい地震を捉え、それらの地震活動の背景である地殻内の応力場変化を把握することが重要である。海底地震・津波観測監視システム(DONET)は稠密な観測体制を構築している。M0.7以上の地震を観測しているが、それらの地震の震源位置、具体的にはプレート境界、上盤、下盤のいずれに分布するか知ることが必要である。これまで海域における断層情報総合評価プロジェクトを通して構築してきた南海トラフ域の三次元速度構造を用いてDONETの走時データから震源位置を評価し直した。その結果海洋性地殻内の断層イメージを得、また、2016年4月1日三重県南東沖の地震の位置がプレート境界であることを確認した。海域構造探査による断層評価と海域観測網によるゆっくりすべりを含めた地震活動を直接比較することが実現しつつある。南海トラフ域の観測体制としては、地殻変動成分も含む超広帯域かつ稠密な観測環境が望ましい。それは、連動発生を考慮すれば余効変動の把握は必要不可欠であるからである。しかし、海底水圧計にはドリフトノイズが含まれ、また、南海トラフ域には海水密度が異なる黒潮が時には位置を変えながら分布する。このドリフトの校正技術や、海面ブイ等を用いた気象と海象の両方の同時観測が行われ、地殻変動観測実現に向けて検討を進めている。
現在、防災科研では、海域観測網は南海トラフ域の土佐沖から日向灘にかけて新たな南海トラフ地震津波観測網(N-net)を構築中である。DONET, S-netやN-netといった海域観測網と高感度地震観測網(Hinet)を組み合わせ、広帯域な地殻活動モニタリングを実現していきたい。これらの情報は、推移予測シミュレーションにつながり、地域の防災減災に貢献することになる。これらの情報を利用して、「地震の備え」や「安全な防災行動」を各地域でカスタマイズしながら取り入れて避難訓練を実施するような形が望ましいと考えている。
南海トラフ域は東北沖と異なりマグニチュード(M)2以上を持つ地震活動が低調である。そのため、できるだけ小さい地震を捉え、それらの地震活動の背景である地殻内の応力場変化を把握することが重要である。海底地震・津波観測監視システム(DONET)は稠密な観測体制を構築している。M0.7以上の地震を観測しているが、それらの地震の震源位置、具体的にはプレート境界、上盤、下盤のいずれに分布するか知ることが必要である。これまで海域における断層情報総合評価プロジェクトを通して構築してきた南海トラフ域の三次元速度構造を用いてDONETの走時データから震源位置を評価し直した。その結果海洋性地殻内の断層イメージを得、また、2016年4月1日三重県南東沖の地震の位置がプレート境界であることを確認した。海域構造探査による断層評価と海域観測網によるゆっくりすべりを含めた地震活動を直接比較することが実現しつつある。南海トラフ域の観測体制としては、地殻変動成分も含む超広帯域かつ稠密な観測環境が望ましい。それは、連動発生を考慮すれば余効変動の把握は必要不可欠であるからである。しかし、海底水圧計にはドリフトノイズが含まれ、また、南海トラフ域には海水密度が異なる黒潮が時には位置を変えながら分布する。このドリフトの校正技術や、海面ブイ等を用いた気象と海象の両方の同時観測が行われ、地殻変動観測実現に向けて検討を進めている。
現在、防災科研では、海域観測網は南海トラフ域の土佐沖から日向灘にかけて新たな南海トラフ地震津波観測網(N-net)を構築中である。DONET, S-netやN-netといった海域観測網と高感度地震観測網(Hinet)を組み合わせ、広帯域な地殻活動モニタリングを実現していきたい。これらの情報は、推移予測シミュレーションにつながり、地域の防災減災に貢献することになる。これらの情報を利用して、「地震の備え」や「安全な防災行動」を各地域でカスタマイズしながら取り入れて避難訓練を実施するような形が望ましいと考えている。