16:00 〜 17:30
[S24P-01] CNNを用いた水圧破砕AE波形のP波初動極性読み取りとモーメント・テンソル推定
シェールオイル・ガス開発や地熱開発では,岩盤の透水性を向上させ,資源の流路を確保するために水圧破砕技術が利用されている.本研究では,水圧破砕による亀裂造成プロセスを明らかにするため,室内水圧破砕実験を実施し,実験中に生じるacoustic emission event(以下AE)を測定して,そのモーメント・テンソル(MT)解を推定した.大量のAEのMT推定を効率よく行うために,畳み込みニューラルネットワーク(CNN)によるP波初動極性の読み取りを行い,得られた結果をもとに個々のAEのMT解を推定した.
実験は,65 x 65 x 130 mmの直方体形状の黒髪島花崗岩10個に対して5 MPaの一軸圧縮載荷下で実施した.供試体中央部に穿孔した破砕孔に1 cc/min(1.6 x 10-8 m3/s)で破砕流体を圧入することで水圧破砕を行い,試験中に生じるAEを,供試体に設置したプリアンプ内蔵型の高感度・広帯域のM304Aセンサ16個,共振型のPICOセンサ(共振周波数550 kHz)8個の計24個のAEセンサを用いて14bit,10 MHzで連続収録した.得られたAEデータからSTAとLTAの比を用いる手法(Allen 1978)による波形抽出を行い,供試体の速度異方性を考慮した非線形最小二乗法(Rothman et al. 1974)を用いてAEの震源位置・発震時刻を推定した.さらに,得られた震源を初期震源としてdouble difference法(Waldhauser & Ellsworth 2000)により震源を再決定した.
上記の処理で得られたすべてのイベントのうち,14個以上のM304Aセンサでシグナルノイズ比15以上の波形が得られたイベントに対してP波初動極性を手動で読み取り,得られた49375個の読み取り結果をCNNの訓練に用いた. 図1に本研究で構築したCNNと訓練結果を示す.このネットワークでは,理論走時周辺の150サンプル分の波形を入力とし,その波形の初動極性を0(引き)から1(押し)の連続量で出力する.訓練は,手動読み取りデータの80%を訓練データ,20%を検証データとして行った.M304Aで得られた波形に対する結果ではepoch=72,PICOではepoch=47で訓練・検証データに対する損失の差が最小となった.この時の精度は出力値の閾値を0.5(0.5以上を押し,0.5未満を引き)とした場合,それぞれ95.30%,96.83%,閾値を0.05(0.95以上を押し,0.05未満を引き)とした場合,それぞれ99.22%,99.11%であった.初動極性の自動読み取りにはこれらのepochでの重みパラメータを用い,また,出力値の選定には閾値0.05を採用し,出力値が0.05-0.95である読み取り結果は以降の解析に用いなかった.CNNにより1399767個の波形の初動極性の自動読み取りに成功し,この読み取り結果を元に各波形の理論走時周辺の30サンプルから初動振幅値を読み取り,これらを用いて49299イベントのMT解を推定した.
AEの時空間分布からは,破砕孔での流体圧の急降下(breakdown)を伴う最終的な亀裂造成の準備過程として2つのフェーズが確認された.最初のフェーズ(第1拡大フェーズ)は,破砕孔での流体圧が,breakdownが生じる圧力の10–30%で始まり,破砕孔から時間とともに三次元的に広がるAE活動で特徴づけられる.2つ目のフェーズ(第2拡大フェーズ)は,breakdown圧の90–99%で始まり,破砕孔から最大圧縮軸方向に二次元的に進展するAE活動で特徴づけられる.得られたMT解析結果からは,第1拡大フェーズでは様々な方向の開口型AEが起こったことが示唆された.第2拡大フェーズでは,AE震源が描き出す面上での開口に対応するメカニズム,すなわち古典的水圧破砕理論から予想される開口型のイベントが支配的であることがわかった.また,第2拡大フェーズでは開口型AEに加え,せん断型AEも生じたことが確認された.これらの結果から,第1拡大フェーズは,既存の空隙を利用して破砕流体が岩体に浸透する過程,第2拡大フェーズは,boreholeから主亀裂が生じ進展する過程に対応すると解釈できる.
実験は,65 x 65 x 130 mmの直方体形状の黒髪島花崗岩10個に対して5 MPaの一軸圧縮載荷下で実施した.供試体中央部に穿孔した破砕孔に1 cc/min(1.6 x 10-8 m3/s)で破砕流体を圧入することで水圧破砕を行い,試験中に生じるAEを,供試体に設置したプリアンプ内蔵型の高感度・広帯域のM304Aセンサ16個,共振型のPICOセンサ(共振周波数550 kHz)8個の計24個のAEセンサを用いて14bit,10 MHzで連続収録した.得られたAEデータからSTAとLTAの比を用いる手法(Allen 1978)による波形抽出を行い,供試体の速度異方性を考慮した非線形最小二乗法(Rothman et al. 1974)を用いてAEの震源位置・発震時刻を推定した.さらに,得られた震源を初期震源としてdouble difference法(Waldhauser & Ellsworth 2000)により震源を再決定した.
上記の処理で得られたすべてのイベントのうち,14個以上のM304Aセンサでシグナルノイズ比15以上の波形が得られたイベントに対してP波初動極性を手動で読み取り,得られた49375個の読み取り結果をCNNの訓練に用いた. 図1に本研究で構築したCNNと訓練結果を示す.このネットワークでは,理論走時周辺の150サンプル分の波形を入力とし,その波形の初動極性を0(引き)から1(押し)の連続量で出力する.訓練は,手動読み取りデータの80%を訓練データ,20%を検証データとして行った.M304Aで得られた波形に対する結果ではepoch=72,PICOではepoch=47で訓練・検証データに対する損失の差が最小となった.この時の精度は出力値の閾値を0.5(0.5以上を押し,0.5未満を引き)とした場合,それぞれ95.30%,96.83%,閾値を0.05(0.95以上を押し,0.05未満を引き)とした場合,それぞれ99.22%,99.11%であった.初動極性の自動読み取りにはこれらのepochでの重みパラメータを用い,また,出力値の選定には閾値0.05を採用し,出力値が0.05-0.95である読み取り結果は以降の解析に用いなかった.CNNにより1399767個の波形の初動極性の自動読み取りに成功し,この読み取り結果を元に各波形の理論走時周辺の30サンプルから初動振幅値を読み取り,これらを用いて49299イベントのMT解を推定した.
AEの時空間分布からは,破砕孔での流体圧の急降下(breakdown)を伴う最終的な亀裂造成の準備過程として2つのフェーズが確認された.最初のフェーズ(第1拡大フェーズ)は,破砕孔での流体圧が,breakdownが生じる圧力の10–30%で始まり,破砕孔から時間とともに三次元的に広がるAE活動で特徴づけられる.2つ目のフェーズ(第2拡大フェーズ)は,breakdown圧の90–99%で始まり,破砕孔から最大圧縮軸方向に二次元的に進展するAE活動で特徴づけられる.得られたMT解析結果からは,第1拡大フェーズでは様々な方向の開口型AEが起こったことが示唆された.第2拡大フェーズでは,AE震源が描き出す面上での開口に対応するメカニズム,すなわち古典的水圧破砕理論から予想される開口型のイベントが支配的であることがわかった.また,第2拡大フェーズでは開口型AEに加え,せん断型AEも生じたことが確認された.これらの結果から,第1拡大フェーズは,既存の空隙を利用して破砕流体が岩体に浸透する過程,第2拡大フェーズは,boreholeから主亀裂が生じ進展する過程に対応すると解釈できる.