14:00 〜 17:30
[S02P-06] 千葉県における地震被害予測システム
1.はじめに
防災科学技術研究所は、平成19年3月より、千葉県の震度観測網と防災科学技術研究所の強震観測網K-NETの震度情報を用いて、震度分布や被害分布等を予測する「地震被害予測システムの開発に関する共同研究」を千葉県と実施している。地震被害予測システムは、千葉県の地震被害想定調査で整備された地盤データや建物データ等を有効活用しており、地震発生時の初動体制に有益な情報を提供することを目的としている。また、平常時は、設定した震源から得られた震度分布等を用いて、図上訓練等に利活用できる柔軟なシステムになっている。
2.震度情報の活用
千葉県内で震度4以上の有感地震が発生した際、地震被害予測システムは、千葉県の震度観測網から分岐された震度情報と防災科学技術研究所からメール送信されたK-NETの震度情報を統合し、震度分布や被害分布を250mメッシュ単位で即時的に予測している。震度観測網の震度情報にK-NETの震度情報を取り込むため、両観測網の震度情報のマージは、K-NETから千葉県が分岐している観測点のトリガー時刻を用いて、同一地震の震度情報かどうか判定している。
現在の地震被害予測システムは、令和元年度に改修を実施しており、人口、建物、地盤の基礎データに加えて、建物被害分布、液状化危険度分布、人的被害分布の推定法は、平成26・27年度の千葉県地震被害想定調査に準じている。また、新たに避難者数や帰宅困難者数を推計できる機能を付加している。
3.SVGの利用
地震被害予測システムの震度分布等の表示は、JIS化されたSVG(Scalable Vector Graphics)のデータ構造を採用している。SVGとは、インターネットの標準化団体であるWorld Wide Web Consortiumが勧告したフォーマットであり、2012年に日本工業規格(JIS)になっている。
SVGは、ベクトル画像の描画に必要なデータや座標系、投影、レンダリングなどをXML(Extensible Markup Language)形式で記述できるとともに、インターネットとの親和性が極めて高く、EdgeやChrome等のWebブラウザで表示することができる。 SVGは、ベクター形式の地図情報やラスタ形式の震度分布図等が扱えるとともに、XML形式のデータ記述によって、観測値情報などをメタデータとして埋め込むことができる。地震被害予測システムは、SVGの被害予測情報を市区町村や町丁目単位で出力・表示するとともに、市町村に被害予測情報をFAX送信できるようにモノクロ出力にも対応している。なお、背景地図は、基盤地図情報をSVGに変換した上で使用している。
4.予測情報の配信
地震被害予測システムで得られたSVGの被害予測情報は、防災情報システムネットワーク経由で配信することにより、県庁内と県の関係機関(出先、市町村、消防本部等)の防災PCのWebブラウザで閲覧することが可能である。なお、地震被害予測システムの配信は、震度分布、液状化危険度、全半壊棟数の予測をはじめ、死傷者数や避難者数の市区町村集計、駅周辺の帰宅困難者数となっている。
千葉県は、地震被害予測システムと津波浸水予測システム(高橋ほか、本学会)を構築しているが、これらシステムの予測情報は、防災情報システムネットワーク経由で配信されるため、県庁や関係機関の防災PC以外では閲覧することができない。しかし、地震発生直後は、県職員のみならず、市町村職員や消防職員等が予測情報を知ることが重要である。この問題を解決するため、予測情報をインターネット経由で配信するクラウドシステムを構築しており、地震被害予測システムで得られた震度分布、液状化危険度、全半壊棟数の予測情報や震度情報は、ユーザーが所有するスマートフォンやタブレット等で閲覧することが可能である。
5.おわりに
千葉県は、地震や津波の発生時、市町村と予測情報を共有した初動体制が確立できるようにするため、地震被害予測システムや津波浸水予測システムを用いた訓練を市町村と実施しており、今後も千葉県の地震津波防災の取組みに協力していきたい。
防災科学技術研究所は、平成19年3月より、千葉県の震度観測網と防災科学技術研究所の強震観測網K-NETの震度情報を用いて、震度分布や被害分布等を予測する「地震被害予測システムの開発に関する共同研究」を千葉県と実施している。地震被害予測システムは、千葉県の地震被害想定調査で整備された地盤データや建物データ等を有効活用しており、地震発生時の初動体制に有益な情報を提供することを目的としている。また、平常時は、設定した震源から得られた震度分布等を用いて、図上訓練等に利活用できる柔軟なシステムになっている。
2.震度情報の活用
千葉県内で震度4以上の有感地震が発生した際、地震被害予測システムは、千葉県の震度観測網から分岐された震度情報と防災科学技術研究所からメール送信されたK-NETの震度情報を統合し、震度分布や被害分布を250mメッシュ単位で即時的に予測している。震度観測網の震度情報にK-NETの震度情報を取り込むため、両観測網の震度情報のマージは、K-NETから千葉県が分岐している観測点のトリガー時刻を用いて、同一地震の震度情報かどうか判定している。
現在の地震被害予測システムは、令和元年度に改修を実施しており、人口、建物、地盤の基礎データに加えて、建物被害分布、液状化危険度分布、人的被害分布の推定法は、平成26・27年度の千葉県地震被害想定調査に準じている。また、新たに避難者数や帰宅困難者数を推計できる機能を付加している。
3.SVGの利用
地震被害予測システムの震度分布等の表示は、JIS化されたSVG(Scalable Vector Graphics)のデータ構造を採用している。SVGとは、インターネットの標準化団体であるWorld Wide Web Consortiumが勧告したフォーマットであり、2012年に日本工業規格(JIS)になっている。
SVGは、ベクトル画像の描画に必要なデータや座標系、投影、レンダリングなどをXML(Extensible Markup Language)形式で記述できるとともに、インターネットとの親和性が極めて高く、EdgeやChrome等のWebブラウザで表示することができる。 SVGは、ベクター形式の地図情報やラスタ形式の震度分布図等が扱えるとともに、XML形式のデータ記述によって、観測値情報などをメタデータとして埋め込むことができる。地震被害予測システムは、SVGの被害予測情報を市区町村や町丁目単位で出力・表示するとともに、市町村に被害予測情報をFAX送信できるようにモノクロ出力にも対応している。なお、背景地図は、基盤地図情報をSVGに変換した上で使用している。
4.予測情報の配信
地震被害予測システムで得られたSVGの被害予測情報は、防災情報システムネットワーク経由で配信することにより、県庁内と県の関係機関(出先、市町村、消防本部等)の防災PCのWebブラウザで閲覧することが可能である。なお、地震被害予測システムの配信は、震度分布、液状化危険度、全半壊棟数の予測をはじめ、死傷者数や避難者数の市区町村集計、駅周辺の帰宅困難者数となっている。
千葉県は、地震被害予測システムと津波浸水予測システム(高橋ほか、本学会)を構築しているが、これらシステムの予測情報は、防災情報システムネットワーク経由で配信されるため、県庁や関係機関の防災PC以外では閲覧することができない。しかし、地震発生直後は、県職員のみならず、市町村職員や消防職員等が予測情報を知ることが重要である。この問題を解決するため、予測情報をインターネット経由で配信するクラウドシステムを構築しており、地震被害予測システムで得られた震度分布、液状化危険度、全半壊棟数の予測情報や震度情報は、ユーザーが所有するスマートフォンやタブレット等で閲覧することが可能である。
5.おわりに
千葉県は、地震や津波の発生時、市町村と予測情報を共有した初動体制が確立できるようにするため、地震被害予測システムや津波浸水予測システムを用いた訓練を市町村と実施しており、今後も千葉県の地震津波防災の取組みに協力していきたい。