The 2022 SSJ Fall Meeting

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Room C

Regular session » S03. Crustal deformation, GNSS, and gravity

[S03] AM-1

Wed. Oct 26, 2022 9:45 AM - 10:45 AM ROOM C (8th floor (Training Room 820))

chairperson:Yutaro Okada(Kyoto University), Yuto Nakamura(Hydrographic and Oceanographic Department, Japan Coast Guard)

10:15 AM - 10:30 AM

[S03-10] Acoustic signal angle/device dependences and up-down component error in SGO-A

*Yusuke YOKOTA1, Koya Nagae2, Tadashi Ishikawa2, Shun-ichi Watanabe2, Yuto Nakamura2 (1. Institute of Industrial Science, University of Tokyo, 2. Hydrographic and Oceanographic Department, Japan Coast Guard)

海上保安庁はGNSS-音響測距結合方式(GNSS-A)による海底地殻変動観測を継続的に実施している.この観測網をSGO-Aと呼ぶ.現在,GARPOS(Watanabe et al., 2020, FES)と呼ばれる解析手法による結果が公表されている.船舶側の海上局と海底局の間は10kHzの正弦波で構成される音響信号によって測距される(冨山, 2003, 海洋情報部技報).送信信号と受信信号に対してそれぞれ理論波形との相関処理を行うことで信号の送受時刻を精密に決定して往復走時を計測する.
これまでのデータから水平動よりも大きい上下動のばらつきは,(i)音響信号の読み取り誤り(永江ほか, 2022, 地震学会)にくわえて,次の2つの要因による音響往復時間の計測誤りに依存していることがわかってきた.
(ii)ソナーの有限の大きさに依存した信号の位相反転,重畳などによる角度依存性
(iii)海上局,海底局や観測時期などの機器に依存した位相,タイミングの崩れ具合の違い
これら(ii)と(iii)の影響は見かけの受信波形・相関波形からは容易に識別することができない場合が多いが,GARPOSの最終残差に0.1msec (信号1波長分) ごとのがたつきが見られることで認識される.
音響信号の角度依存性はHonsho et al. (2021, FES)で東北大の観測で用いられる7次2波のM系列信号に対して指摘されており,SGO-Aで用いられている9次4波のM系列信号でも生じていることが確認されたものである.(ii)の角度依存性には(iii)で指摘される機器依存性も関係している.海上局と海底局の機器の組み合わせが変更された場合に角度依存性の表出の仕方が変化する.これらの複合的な影響による信号相関波形の違いに応じた読み取り閾値を考慮しなければ1波長(0.1msec)以上の読み取り誤りを生み,とくに上下動の推定に悪影響がある.
既に広く研究されているGNSS観測における誤差は,①大気圏・電離圏遅延量などの自然由来誤差(Davis et al., 1985, RS; Boehm et al., 2006, JGR)と②サイクルスリップなどの非自然由来誤差(Lau & Cross, 2007, JG),③アンテナ補正量・マルチパスなどの衛星角度に依存した誤差(Kunysz, 2010, IEEE; Banville & Langley, 2013, JG)に分けられる.GNSS-A観測における海中音速度場による誤差(Yokota et al., 2019, MGR)は①のアナロジーであり,(i)信号の読み取り誤差は②,(ii)角度依存誤差と(iii)機器依存誤差は③(②を含む場合もある)のアナロジーであると考えることができる.
本発表では,GARPOSによる推定結果を利用することで,全期間に統一的に利用できる信号トラベルタイムの補正法を考察し,SGO-A観測網のより正しい上下動を導出する方法を議論する.この中で,(iii)を適切に補正することで最も懸念される海底局置き換えなどによる10cm近いバイアス的なずれはほぼ補正可能であることがわかった.ただし,(iii)の物理的な原因は不明であり,今後,水槽実験などで調査する必要がある.
(ii)はGARPOSの最終残差に対する移動平均などによるスムージング結果を用いることで補正することは可能であり,残差のばらつきを抑えるだけでなく,一部の観測エポックの上下動誤差の低減に効果を示すことがわかった.こちらも詳細な原因は不明であるが,以前から実験的に指摘されており(望月ほか, 2007, 海洋情報部研究報告),今後,水槽実験などで調査する必要がある.
これまでの考察から,σ~2-2.5cm程度の精度は実現できる見通しであるが,将来的にはさらに高度で尤もらしいトラベルタイム補正が実現することで精度を上げることができると考えられる.

謝辞:本研究は東京大学地震研究所の公募研究ERI JURP 2022-Y-KOBO25により実施されています.