日本地震学会2022年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(1日目)

一般セッション » S08. 地震発生の物理

[S08P] PM-P

2022年10月24日(月) 15:30 〜 18:00 P-2会場 (10階(1010〜1070会議室))

15:30 〜 18:00

[S08P-01] 2016年ニュージーランド・カイコウラ地震の応力場とSlip Tendency解析

*岡田 知己1、松野 弥愛1、田上 綾香1、松本 聡2、河村 優太2、飯尾 能久3、佐藤 将1、中山 貴史1、平原 聡1、Bannister Stephen4、Ristau John4、Savage Martha5、Thurber Clifford6、Sibson Richard 7 (1. 東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センター、2. 九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター、3. 京都大学防災研究所、4. GNS Science, New Zealand、5. Victoria University of Wellington, New Zealand、6. University of Wisconsin - Madison, United States of America、7. University of Otago, New Zealand)

2016年11月13日にニュージーランドで発生したMw7.8 Kaikōura地震は約20枚の複数断層による連動破壊により生じた。本研究(Matsuno et al., 2022) では、Kaikōura地震の発生に対する応力の影響を理解することを目的とする。そのためには震源域の応力場を精度良く推定することが必要である。そこで、2013年4月から2018年12月,すなわちKaikōura地震前後における地殻応力場を推定した.臨時地震観測網により得られたP波初動による震源メカニズム解とGeoNetのモーメントテンソル解の両方を用いた。その際、本震の断層面以外で発生した地震をを選択した。そして、選択した震源メカニズムの解に対して、応力テンソルインバージョンを行った。Kaikōura地震前の応力状態は震源域全体で概ね横ずれ型であり、応力テンソルの最大圧縮軸方向(σ1)はWNW-ESEの方向であった。地震後、応力場の向きは大きく変化していなかった。このことは、Kaikōura地震の際の応力変化が応力方位を変えるには小さすぎたことを示唆しており、Kaikōura地震地震の前に大きな差応力が存在していた可能性を示唆している。しかし、地震後、それぞれの領域の応力比は増加あるいは減少の2つの異なるパターンで変化しており、差応力の大きさの領域による違い、あるいは間隙水圧が領域によって異なる変化をした可能性を示唆している。応力テンソルインバージョンの結果を用いて、Slip tendency (ST) の計算を行った。破壊開始点の断層では、高いSTが求められた。震源域中央に位置する断層(Jordan thrustに相当する断層)は低いSTであったが、大きなすべりを起こした周辺の断層では高いST値が推定されており、破壊過程が周辺の断層に伝播していることと調和的である。震源域北端の断層はSTが最も低く、そのために破壊過程が停止したことを示唆される。また、各断層のすべり方向は推定した応力場により概ね再現することができた。以上の結果からは、地震前の応力がKaikōura地震の連動破壊過程を説明できることを示唆している。

Reference:
Matsuno, M., Tagami, A., Okada, T., Matsumoto, S., Kawamura, Y., Iio, Y., Sato, T., Nakayama, T., Hirahara, S., Bannister, S., Ristau, J., Savage, M.K., Thurber, C.H., Sibson, R.H., 2022. Spatial and temporal stress field changes in the focal area of the 2016 Kaikōura earthquake, New Zealand: A multi-fault process interpretation. Tectonophysics 835, 229390. https://doi.org/10.1016/j.tecto.2022.229390