[S01P-08] 拡散波動場における歪成分へのエネルギー分配 (2)
はじめに 無限媒質において震源から輻射された実体波は,媒質の不均質構造によりP波とS波の変換散乱を繰り返し,充分時間が経過した後にはエネルギー等分配状態に達することが予測される.この時,P波とS波のエネルギー比が初期状態によらず一定値になること(例えばWeaver, 1982)や変位3成分へのエネルギー分配も一定値となることが予測される (たとえばSanchez-Sesma and Campillo, 2006) .近年,分散型音響計測(DAS)により歪地震動の計測が行われるようになってきた.そこで著者らは,DASの歪記録を理解するための基礎研究の一つとして,歪の各成分へのエネルギー分配について検討をはじめている.中原(2023,連合大会)は,2次元無限媒質中における歪各成分のエネルギー分配を考え,各成分にそれぞれ異なるエネルギーが分配されることを明らかにした.その続きとして,本研究では3次元無限媒質における歪各成分へのエネルギー分配について検討した.
原理 Nakahara and Haney (2022, GJI)は,波動場が等方かつエネルギー等分配状態にある場合,2観測点間の歪成分間のクロススペクトルとグリーン関数との関係を理論的に明らかにした.特に,震源と観測点が同じ場合,歪テンソルの(i, k)成分であるeikのエネルギースペクトルは,モーメントテンソルMikとMki成分に対するeikのグリーン関数の和に比例する.また,歪テンソルの(i, i)成分eiiと(k, k)成分ekk とのクロススペクトルは,モーメントテンソルMkk成分に対するeiiのグリーン関数に比例する.これらの関係式で,グリーン関数として3次元無限均質媒質中のものを用いると,歪テンソルの各成分のエネルギースペクトルを具体的に計算することができる.
結果 デカルト座標系で,観測点rにおけるx方向の軸歪のエネルギースペクトルは
<|exx(r,w;r)|2>∝3/Vp2(w/Vp)3 + 2/Vs2(w/Vs)3 (1)
となる.ここで,Vp, VsはP波速度,S波速度,wは角周波数である.また,等方的な波動場を仮定しているので,y軸方向,z軸方向の軸歪も同じ値をとる.一方,せん断歪exyのエネルギースペクトルは
<|exy(r,w;r)|2>∝1/Vp2(w/Vp)3 + 3/(2Vs2)(w/Vs)3 (2)
である.以上より,例えばポアッソン媒質の場合,せん断歪のエネルギーは軸歪のエネルギーの約0.713倍となることがわかる.これは2次元無限一様媒質の結果である約0.833倍(中原,2023)と比べると少し小さい.
結論 3次元無限一様媒質における歪各成分へのエネルギー分配について定式化を行った.その結果,せん断歪へのエネルギー分配は,軸歪に比べて約0.713倍であることが分かった.今回の原理では,エネルギー等分配が期待される充分に時間が経過した後の状態のことしかわからない.今後,差分法に基づくランダム媒質中の波動伝播の数値計算により,この状態への遷移が時間的にどのように行われるのかについて検討することが必要である.
原理 Nakahara and Haney (2022, GJI)は,波動場が等方かつエネルギー等分配状態にある場合,2観測点間の歪成分間のクロススペクトルとグリーン関数との関係を理論的に明らかにした.特に,震源と観測点が同じ場合,歪テンソルの(i, k)成分であるeikのエネルギースペクトルは,モーメントテンソルMikとMki成分に対するeikのグリーン関数の和に比例する.また,歪テンソルの(i, i)成分eiiと(k, k)成分ekk とのクロススペクトルは,モーメントテンソルMkk成分に対するeiiのグリーン関数に比例する.これらの関係式で,グリーン関数として3次元無限均質媒質中のものを用いると,歪テンソルの各成分のエネルギースペクトルを具体的に計算することができる.
結果 デカルト座標系で,観測点rにおけるx方向の軸歪のエネルギースペクトルは
<|exx(r,w;r)|2>∝3/Vp2(w/Vp)3 + 2/Vs2(w/Vs)3 (1)
となる.ここで,Vp, VsはP波速度,S波速度,wは角周波数である.また,等方的な波動場を仮定しているので,y軸方向,z軸方向の軸歪も同じ値をとる.一方,せん断歪exyのエネルギースペクトルは
<|exy(r,w;r)|2>∝1/Vp2(w/Vp)3 + 3/(2Vs2)(w/Vs)3 (2)
である.以上より,例えばポアッソン媒質の場合,せん断歪のエネルギーは軸歪のエネルギーの約0.713倍となることがわかる.これは2次元無限一様媒質の結果である約0.833倍(中原,2023)と比べると少し小さい.
結論 3次元無限一様媒質における歪各成分へのエネルギー分配について定式化を行った.その結果,せん断歪へのエネルギー分配は,軸歪に比べて約0.713倍であることが分かった.今回の原理では,エネルギー等分配が期待される充分に時間が経過した後の状態のことしかわからない.今後,差分法に基づくランダム媒質中の波動伝播の数値計算により,この状態への遷移が時間的にどのように行われるのかについて検討することが必要である.