日本地震学会2023年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(2日目)

一般セッション » S19. 地震一般・その他

[S19P] PM-P

2023年11月1日(水) 17:00 〜 18:30 P10会場 (F201・3側フォワイエ) (アネックスホール)

[S19P-03] 大型ハリケーンで強く励起された一次脈動の発生源

*河上 洋輝1、須田 直樹1 (1. 広島大学)

一次脈動は、およそ0.05-0.10 Hzの周波数を示す地震計バックグラウンドノイズの一つであり、海洋波と海底地形のカップリングにより発生すると考えられている(Nishida et al., 2008; Fukao et al., 2010; Saito, 2010)。特に、熱帯低気圧の接近時には一次脈動の振幅が大きくなることが観測されている。しかし、その発生源やメカニズムについては議論の余地を残している。先行研究では、南シナ海周辺に接近した台風で励起された一次脈動の発生源が一か所に集中することが示された(Park & Hong 2020)。また、日本に接近した強い台風で励起された一次脈動には特に強く励起される領域があることが示された(河上・須田2022地震学会)。このような局所的な一次脈動の強い励起は、台風だけでなくハリケーンやサイクロンなど、世界中で発生する熱帯低気圧についても同様に観測されると考えられる。本研究では、北アメリカ大陸に接近した大型ハリケーンについて、一次脈動が強く励起される領域を広帯域地震計データの解析から推定した。

地震計データとしては、GSNおよびUSNSNの全69個の観測点から一次脈動のピークが顕著な観測点を選択し、その三成分記録を用いた。ハリケーンについては、National Hurricane Centerのデータベースを参照し、2017年から2021年の5年間に大西洋で発生してカテゴリー3以上で北アメリカ大陸沿岸に接近した12個の大型ハリケーンを対象とした。強い励起源の推定には、Park & Hong (2020)と同様にRayleigh波の極性を利用する方法を用いた。この方法では、ある方位に回転させた水平成分と位相をπ/2シフトさせた上下動成分との相互相関係数が最も大きいとき、その方位に発生源があると考える。今回は北緯10度~50度、 西経50度~100度の範囲において0.5度間隔で仮想的な震源を地表に設定し、各仮想震源に対して相互相関係数の観測点平均を計算することで強く励起された一次脈動の発生源を推定した。

解析の結果、メキシコ湾にハリケーンが進入した際に、ルイジアナ州の沿岸部で一次脈動が特に強く励起されることが明らかになった。この結果から、ルイジアナ州周辺の浅く複雑な海底地形が一次脈動を強く励起したと考えられる。発表では、海洋波と海底地形から推定した海底圧力分布との比較も行う予定である。