日本地震学会2024年度秋季大会

講演情報

C会場

一般セッション » S03. 地殻変動・GNSS・重力

[S03] PM-2

2024年10月22日(火) 15:15 〜 16:45 C会場 (3階中会議室302)

座長:飯沼 卓史(海洋研究開発機構)、横田 裕輔(東京大学)

15:45 〜 16:00

[S03-07] SGO-Aにおいて検知される海域のSSEに関する調査

*横田 裕輔1、石川 直史2、渡邉 俊一2、中村 優斗2、永江 航也2 (1. 東京大学生産技術研究所、2. 海上保安庁海洋情報部)

これまで,海上保安庁のGNSS-音響測距結合方式(GNSS-A)による海底地殻変動観測網SGO-Aのデータは,海底局,海上局の機器バイアスによる影響を受けていた.この機器バイアスを評価し,補正するために,東京大学,JAMSTECにおいて水槽実験が実施された(中村ほか, 2023, 海洋情報部研究報告; Yoshizumi et al., 2024, JASA; 永江ほか, 2024, 超音波研究会).これらの結果に基づくバイアス補正法,Acoustic Ambiguity Reduction (AAR) 法(Yokota et al., 2024, EPS)が開発され,すべての観測点での上下の位置決定精度,異なる種類の海底局が混じって設置されている観測点・観測時期の水平・上下の位置決定精度が改善された.

SGO-A観測網では南海トラフ浅部においてスロースリップイベント(SSE)が検知されている(Yokota & Ishikawa, 2020, Sci Adv).本発表では,最新のデータのGARPOS(Watanabe et al., 2020, FES)による解析結果から浅部SSEの活動について調査し報告する.

ここでは,Yokota & Ishikawa (2020, Sci Adv)(以下,YI)のSSE検知と同様の手法を南海トラフに設置された15観測点と房総沖に設置された観測点を合わせた16観測点の2013年から2023年までのデータの水平動の時系列に対して適用する.最小二乗法で時系列に対する折れ線関数と直線をそれぞれ推定し,c-AICが最小となるケースを解とする.イベントの向きはすべり欠損の方向にならないものとした.YIではSSEの信号の長さを1年と仮定して推定していたが,この推定では,信号の長さは可変とした.

結果として,YIにおいて強い信号として検知された4地点の信号が今回も検出された.一方で,当時のデータ・期間では検知されなかった信号がいくつか検出された.たとえば,房総沖に設置された観測点ではOzawa et al. (2019, EPS)で推定された房総沖のSSEと同時期に信号が検出されている.

上下の位置決定精度が向上したことで上下動の時系列に対しても同様にイベントの探索を行うことができるようになった.この手法とデータ,期間(2013-2023年)においては5 cm程度の上下動を伴うイベントは検出されなかった.

謝辞:本研究は東京大学地震研究所の公募研究ERI JURP 2024-Y-KOBO12,セコム科学技術財団,JSPS科研費 学術変革A ”Slow to Fast地震学”のJP21H05200により実施されています.