The 2024 SSJ Fall Meeting

Presentation information

Room C

Regular session » S03. Crustal deformation, GNSS, and gravity

[S03] PM-2

Tue. Oct 22, 2024 3:15 PM - 4:45 PM Room C (Medium-sized Conference room 302 (3F))

chairperson:Takeshi Iinuma(Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology (JAMSTEC)), Yusuke Yokota

4:00 PM - 4:15 PM

[S03-08] Utilization of Unmanned Surface Vehicles in GNSS-Acoustic Observation Using to Detect the Seafloor Crustal Deformation

*Takeshi IINUMA1, Motoyuki Kido2, Tatsuya Fukuda1, Yusaku Ohta3, Fumiaki Tomita2, Ryota Hino3, Hiroaki Takahashi4, Takane Hori1, Yusuke Yokota5 (1. Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology (JAMSTEC), 2. International Research Institute of Disaster Science, Tohoku University, 3. Graduate School of Science, Tohoku University, 4. Graduate School of Science, Hokkaido University, 5. Institute of Industrial Science, University of Tokyo)

2018年に開発に着手して以来,海洋研究開発機構と東北大学は無人観測機ウェーブグライダーを用いてGNSS-音響測距結合方式の海底地殻変動観測(以下,GNSS-A観測)を行うシステムを運用してきた.2019年7月に実海域での試験観測を実施したのち,2020年度以降は年二回,各運航で多数の観測点(7~18点)を巡回してGNSS-A観測を行っており,本予稿執筆時点までに計11回の長期(20~80日程度)運航を終えている.これらの運航において収録されたデータを解析して得られた地殻変動場については,富田・他(本大会)により報告される.本講演ではウェーブグライダーを用いてGNSS-A観測を実施してきたことによって得られた,海上無人機の活用及び運航に関する知見を報告するとともに,今後計画されている取り組みについて紹介する.ウェーブグライダーはLiquid Robotics社(米)が開発した,自動自律航行する海上無人機であり,波浪による海水の上下運動の大きさが海面と海中とで違うことを利用して推進力を得る.海面に位置するフロート部の太陽光パネルと二次電池からの電力供給により,航行制御や陸上との衛星通信,観測機器の作動及びデータ収録などが行われる.燃料の消費を要しないため,太陽光パネルによる発電量が十分な時期であれば,長期間の航行及びGNSS-A観測の実施が可能である.また,ラダーの角度を海流の向きや機体の進行方向を踏まえて調節して,設定した航路をたどれるようにしたり,船舶自動識別装置を搭載した船舶と接近した場合には,その針路に応じて衝突を回避したりといった自律制御がなされる.これまで,根室半島沖~茨城県沖の観測点を網羅する1~2か月程度の観測を春~夏に,青森県沖~宮城県沖の観測点を重点的に巡回する1か月弱の観測を夏~秋にそれぞれ実施してきた.他船との接触や内部機器の深刻な不具合のような,機体の亡失や大破につながる大きな事故やGNSS-A観測が実施不能となるトラブル等を起こすことなく航行及び観測を実施できている.とはいえ,海流の影響で設定した通りの航路をたどれないことがあったり,太陽光パネルによる発電量が十分ではないために観測時間を短縮せざるを得ないことがあったりと,機体の性能による運用の限界も明らかとなってきた.海流についていえば,ウェーブグライダーの航行速度(対水速度)は補助スラスタを最大出力で稼働させたとしても2ノット程度であり,黒潮続流や津軽暖流の中心域においては,設定どおりの航路を期待した速度で航行するのが難しい.特に,GNSS-A観測点における移動観測(観測点の水深を直径とする円を航路として設定)は,高精度の測位に不可欠であるものの,その実施の可否は流速による制限を大きく受けてしまうことになる.また,移動観測の実施可否は,補助スラスタ使用時には消費電力が非使用時の2~4倍にもなるため,電力残量及び発電量にも依存する.これまでの経験からすると10月下旬以降の日射量は不十分であることが多く,運用可能時期は限定的である.一方,無人機によるGNSS-A観測の実施には,費用対効果の面や荒天耐性の面で,船舶に比して優れたところは数多く存在する.現在,ウェーブグライダーの他にも,セイルドローンやブルーボトルといった風力によって航行する無人機が存在し様々な海域観測に用いられている.大型の機体を用いるならば,発電量を増やしたり航行速度をあげたりすることが可能となるが,日本国内においては,無人船舶と位置づけられるか漂流物とみなされるかが,機体の大きさに依存する.無人船舶扱いとなると運用面でのコストが増大し,費用対効果の面での利点を損ないかねない.本講演では,それらのうちどのような機体がGNSS-A観測にとって望ましいのかについて,ウェーブグライダーを用いて重ねてきた実績をもとに考察するともに,開発途上にある新たな機体についても紹介する. 謝辞:本研究の一部はJSPS科研費JP19H05596,JP20KK0097, JP23H01262及びJP24H00258の助成を受けて行われた. また,ウェーブグライダーの投入及び回収の一部は,海洋研究開発機構所内利用航海(MR20-E02,「みらい」)及び東京大学大気海洋研究所の共同利用研究航海(KS-19-12,KS-20-16,KS-21-5,KS-21-25,KS-23-4,KS-23-14,KS-24-7及びKS-24-20,すべて「新青丸」)にて行われた(KS-24-20については,行われる見込み).記して感謝を表する.