4:15 PM - 4:30 PM
[S03-09] Estimation of Fault Interaction in Eastern Taiwan Using InSAR and GNSS: Case of the 2022 Yuli Earthquake
台湾東部はフィリピン海プレートとユーラシアプレートの衝突境界に位置し,世界で最も急速な造山運動が進行する地域の一つである (Chai, 1972; Takada et al., 2007).衝突の境界には,台東縦谷断層 (Longitudinal Valley Fault, LVF) と中央山脈断層 (Central Range Fault, CRF) の2つの活断層が並行して存在するが (Shyu et al., 2006; Lee et al., 2023),これらの断層の力学的相互作用はほとんど解明されていない.本研究では,まず2022年3月22日にLVFで発生したYuli地震 (Mw 6.7) による地殻変動をInSARとGNSSを用いて面的かつ高精度に検出し,断層面上のすべり分布を求めた.さらに,Yuli地震の断層すべりに伴うCRF上での応力変化量を計算することで,2022年9月18日にCRFで発生したChihshang地震 (Mw 7.0) への影響を調べた.
はじめに,ALOS-2のInSAR画像とGNSSデータを用いて,半無限弾性体のグリーン関数 (Okada, 1985) によるジョイントインバージョン解析を行い,Yuli地震に伴うLVF上でのすべり分布を推定した.InSAR画像の誤差は空間的に相関を持つため,共分散成分を指数関数でモデル化した (Lohman & Simons, 2005; Fukushima et al., 2005).推定されたすべりベクトルは逆断層成分を示し,断層すべりは深さ約10 kmから30 kmの範囲に集中した.最大すべり量は約60 cm,モーメントマグニチュードは6.8であった.
次に,Coulomb 3.3 (Toda et al., 2011) を用いて,LVFで発生したYuli地震の断層すべりに伴うCRF上のクーロン破壊関数の変化 (ΔCFF) を計算した.その結果,Chihshang地震の震源北部の主破壊域においてCFFが約0.3 MPa増加したことが明らかになった (図1).これは,Yuli地震がChihshang地震の破壊域を北側に広げる役割を担ったと解釈できる.また,このΔCFFをCRFの長期的な応力蓄積速度で割ることで,Yuli地震がChihshang地震の発生を約50年早めた可能性を示した.
一方で,1951年にLVFで発生した台東縦谷地震や,2022年にCRFで発生したChihshang地震では,向かい合う断層面上に負のΔCFFを引き起こす (Tang et al., 2023).このようなΔCFFの正負の違いをもたらす原因を解明するために,震源断層面でのすべり角を90°から0°まで系統的に変化させてΔCFFを計算した.その結果,震源断層面でのすべり角が90°の場合にはレシーバー断層面上のΔCFFは正の値となるが,0°に近づくにつれて負のΔCFFが現れることが明らかになった.LVFとCRFの位置関係はハの字型に向かい合っているため,LVFで発生した地震がCRF上にもたらす応力変化だけでなく,逆の場合についても同様の結果が得られる.
さらに,この地域の過去の地震記録を調べた結果,上記で明らかにしたように,震源断層のすべり角の違いによって,他方の断層面上において地震活動が活発化・静穏化する事例を見出した.以上より,台湾東部の2つの断層での地震発生間隔は,他方の断層で発生する地震によって大きく変化し,その影響の大きさは断層のすべり角に強く依存すると結論付けた.
謝辞:本研究は東京大学地震研究所共同利用 (2024-B-02) の援助をうけた.本研究で用いた PALSAR-2データはPIXEL (PALSAR Interferometry Consortium to Study our Evolving Land surface) において共有しているものであり,宇宙航空研究開発機構 (JAXA) とPIXELとの共同研究契約に基づきJAXAから提供された.PALSAR-2データの所有権はJAXAにある.
はじめに,ALOS-2のInSAR画像とGNSSデータを用いて,半無限弾性体のグリーン関数 (Okada, 1985) によるジョイントインバージョン解析を行い,Yuli地震に伴うLVF上でのすべり分布を推定した.InSAR画像の誤差は空間的に相関を持つため,共分散成分を指数関数でモデル化した (Lohman & Simons, 2005; Fukushima et al., 2005).推定されたすべりベクトルは逆断層成分を示し,断層すべりは深さ約10 kmから30 kmの範囲に集中した.最大すべり量は約60 cm,モーメントマグニチュードは6.8であった.
次に,Coulomb 3.3 (Toda et al., 2011) を用いて,LVFで発生したYuli地震の断層すべりに伴うCRF上のクーロン破壊関数の変化 (ΔCFF) を計算した.その結果,Chihshang地震の震源北部の主破壊域においてCFFが約0.3 MPa増加したことが明らかになった (図1).これは,Yuli地震がChihshang地震の破壊域を北側に広げる役割を担ったと解釈できる.また,このΔCFFをCRFの長期的な応力蓄積速度で割ることで,Yuli地震がChihshang地震の発生を約50年早めた可能性を示した.
一方で,1951年にLVFで発生した台東縦谷地震や,2022年にCRFで発生したChihshang地震では,向かい合う断層面上に負のΔCFFを引き起こす (Tang et al., 2023).このようなΔCFFの正負の違いをもたらす原因を解明するために,震源断層面でのすべり角を90°から0°まで系統的に変化させてΔCFFを計算した.その結果,震源断層面でのすべり角が90°の場合にはレシーバー断層面上のΔCFFは正の値となるが,0°に近づくにつれて負のΔCFFが現れることが明らかになった.LVFとCRFの位置関係はハの字型に向かい合っているため,LVFで発生した地震がCRF上にもたらす応力変化だけでなく,逆の場合についても同様の結果が得られる.
さらに,この地域の過去の地震記録を調べた結果,上記で明らかにしたように,震源断層のすべり角の違いによって,他方の断層面上において地震活動が活発化・静穏化する事例を見出した.以上より,台湾東部の2つの断層での地震発生間隔は,他方の断層で発生する地震によって大きく変化し,その影響の大きさは断層のすべり角に強く依存すると結論付けた.
謝辞:本研究は東京大学地震研究所共同利用 (2024-B-02) の援助をうけた.本研究で用いた PALSAR-2データはPIXEL (PALSAR Interferometry Consortium to Study our Evolving Land surface) において共有しているものであり,宇宙航空研究開発機構 (JAXA) とPIXELとの共同研究契約に基づきJAXAから提供された.PALSAR-2データの所有権はJAXAにある.