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[129] 熊野川沿い集落における伝統的な水防建築「アガリヤ」の分布、集落内配置および利用変遷
―和歌山県田辺市本宮町を事例として
キーワード:アガリヤ、洪水常襲地、伝統的水防建築、自主水害対策
熊野川沿い集落は古来より洪水常襲地域であったため,伝統的な水防建築の一様である「アガリヤ」を建て,水害時に備えた.本研究では,和歌山県田辺市,新宮市,三重県紀宝町の熊野川沿い集落での調査により,アガリヤの分布を確認し10の集落において現存を確認した.また,田辺市本宮町を対象とした詳細調査において,アガリヤは住居式,倉庫式,住居倉庫式に分類され,地区によって倉庫式または住居倉庫式が多数を占める違いがあった.また,その配置は,住宅の裏に石段を築き整地した上に建てられた敷地内盛土型と,住宅のある敷地から離れた高台に建てられた敷地外高台型に分類した.アガリヤの減少または消失の要因は, 昭和28年以降大規模な水害の減少,公共事業や治水対策の実施,二階建住宅の普及に伴う住民の水害危機感の減少,公的避難所の整備による自己対策から避難所避難への意識変化が挙げられる.現代社会において地域に残る伝統的な水害対策の知恵の継承が重要である.