11:20 〜 11:40
[135] 条里制集落・針江地区の換地以前の耕作地灌漑水利における共同体間の関係性
―安曇川沖積平野(木津荘, 滋賀県)を対象として
キーワード:文化的景観、灌漑水利、相関関係、耕地所有権、共同体
本研究は琵琶湖西唯一の安曇川沖積平野中央部に位置する条里制集落・針江地区の換地以前の耕作地灌漑水利を分析対象とし,共同体間の関係性の解明を目的とする。具体的には,換地直前の1984年の直近耕作地間の水利を紐解き,耕地所有者属性の分析から,耕作地水利を介して存在したであろう,集落内外の共同体間の関係性を考察するものである。当該地は伝統的な景観の利用が進むほど保全が担保される地域の水環境システムが評価され,湧水利用による特徴的な生活井の居住域,水田地帯,湖岸のヨシ群落域が,重要文化的景観に選定された。
本研究の分析結果から,「耕地を複数の水路と関連づけることで,耕作者の集落に対する帰属意識を高める」安曇川流域に伝統的な耕地零細分散所有に内在する,具体的な関係性が明らかになった。すなわち,集落の中心部に居住する隣組が,より多くの矮小な耕地を所有し,集落内外のあらゆる属性と日々の耕作を通して交流を図っていた姿である。直近耕地の水利における関係性を通して,集落内外の各属性の特徴的な相関関係や役割に関する詳細,支配者目線の歴史史料では描かれることのない居住地開発の新旧までが考察された。
本研究の分析結果から,「耕地を複数の水路と関連づけることで,耕作者の集落に対する帰属意識を高める」安曇川流域に伝統的な耕地零細分散所有に内在する,具体的な関係性が明らかになった。すなわち,集落の中心部に居住する隣組が,より多くの矮小な耕地を所有し,集落内外のあらゆる属性と日々の耕作を通して交流を図っていた姿である。直近耕地の水利における関係性を通して,集落内外の各属性の特徴的な相関関係や役割に関する詳細,支配者目線の歴史史料では描かれることのない居住地開発の新旧までが考察された。