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[23] 京都市における引揚者住宅の供給・廃止政策と高野川寮の運営・居住環境実態に関する一考察
キーワード:引揚者住宅、引揚者寮、高野川寮、住宅政策
本研究では、全国で展開された引揚者住宅政策の一つの事例として京都市を取り上げ、引揚者住宅の供給・廃止政策、引揚者住宅の廃止プロセスと府議会での議論、京都府内最大の引揚者住宅であった高野川寮を対象に、引揚者寮の運営と寮構造と居室構成等から居住環境の実態を明らかにした。 結果として、京都における引揚者住宅政策の変遷としては、1946年から1951年にかけて遊休施設を転用した引揚者寮の設置と大邸宅等の余裕住宅の開放が行われた。1950年以降は、応急的な引揚者寮の住民の住環境を改善するため疎開住宅を建設された。1955年以降、寮の廃止に消極的であった京都府が財政再建のために、引揚者寮の廃止へと大きく方針転換することになった。高野川寮の実態として、寮の居住環境は簡素な造りで、狭小な空間であったため居住環境は劣悪であった。一方で、病院・市場・保育園等といった応急的な施設ながらも生活を支える基盤が存在し、施設というよりも一つの町として引揚者の自力更生を支援した。また、運営は府から派遣された寮長ではなく、実質的には住民によって組織された自治会によって運営された。