2023年度全国大会(第58回論文発表会)

講演情報

都市計画論文

講演番号[42]-[44]

2023年11月11日(土) 13:30 〜 14:30 第IV会場 (A棟 G22教室)

司会:岩見 達也(国土技術政策総合研究所)、石原 凌河(龍谷大学)

13:30 〜 13:50

[42] 防災集団移転促進事業の創設経緯とその理念

-当初事例である熊本県天草地域を事例として

○荒木 笙子1、眞駈 来美2、木村 伶皇、秋田 典子3 (1. 東北大学大学院工学研究科、2. 千葉大学大学院園芸学研究科、3. 千葉大学大学院園芸学研究院)

キーワード:防災集団移転促進事業、過疎地域、昭和47年7月豪雨、立法プロセス、熊本県天草地域

本研究の目的は、防災集団移転促進事業創設時の立法プロセスと事業要件、事業内容、50年経過後の実態を明らかにすることで、今後の防集事業に示唆を得ることである。私たちは防集事業導入の契機となった1972年発生の昭和47年7月豪雨後に集団移転を行った事例の一つとして熊本県天草地域を対象に、国会議事録の分析と天草地域における移転実態と推移の分析を実施した。立法経緯は過疎地域における災害の発生によって、従来の過疎法に災害復旧の視点が加わり、補助率と補助対象が拡充した。実態について、移転先団地はほとんどが海面埋め立てで確保され、2年間で移転事業が完了、87.4%が同町内に居住を継続していた。これは移転先の用地確保に時間がかからなかったこと、通い農業の早期再開と職業斡旋のため短時間で近隣に居住可能だったためであると考えられる。高い国庫補助率を定めた防集事業創設の契機は、1970年の過疎法を踏まえて目指された「魅力あるまちづくり」にあった。東日本大震災後は防集事業導入地域において過疎化が進んでおり、今後は移転先を集約するなど、人口減少下における防集事業のあり方を改めて検討する必要がある。