特別講演のご案内
特別講演のご案内
特別講演を以下 3名の先生方にご登壇頂きます。(2023/5/16更新)► 特別講演1
| 開催日時: | 6月8日(木) 15:10-15:40 |
| 演題名: | 新型コロナウイルスの探求 |
| 座長名前・所属: | 福原 崇介(北海道大学 大学院医学研究院微生物部門免疫学分野 教授) |
| 演者名前・所属: | 河岡 義裕 先生 (東京大学 国際高等研究所 新世代感染症センター、 国立国際医療研究センター、東京大学 医科学研究所 特任教授、ウイスコンシン大学) |
| 抄録: | 新型コロナウイルスは人類に深刻な影響を及ぼしています。私たちの研究室では、このウイルスとの戦いに向けた様々な研究を進めています。例えば、新型コロナウイルス研究のための動物モデルの開発、変異株の特性分析、抗体薬や低分子化合物への感受性解析です。また、ワクチンの効果を評価するために、ワクチン被接種者の血清を用いた反応性試験も行っています。 新型コロナウイルスワクチンとして、mRNAワクチンがウイルス出現から1年以内に実用化されました。しかし、mRNAワクチンは感染局所における免疫反応の誘導に限界があり、感染そのものの抑制は困難です。この課題を解決するため、私たちの研究室では生ワクチンの開発を進めています。 さらに、新型コロナウイルスの病原性のメカニズムを解明するため、二光子顕微鏡を用いた解析も行っています。本講演では、これらの研究結果の一部についてご紹介します。 |
► 特別講演2
| 開催日時: | 6月9日(金) 10:50-11:20 | |
| 演題名: | いまの学際研究ではパンデミック問題に対応できない。ならばどうするか。 | |
| 座長名前・所属: | 佐藤 佳(東京大学医科学研究所 教授、G2P-Japan発起人) | |
| 演者名前・所属: | 瀬名 秀明 様(瀬名秀明事務所、作家) | |
| 抄録: | 本講演は本年3月に演者が押谷仁・東北大教授や渡辺政隆・東北大特任教授らと刊行した書籍『知の統合は可能か パンデミックに突きつけられた問い』[1]で議論を展開した内容を基盤としつつ、作家の立場から「人間らしさ」「生と死」などAI/ロボット学でも今後ますます重要なテーマとなるであろう概念を主軸に据え、最近の省察を盛り込んでおこなう。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)があぶり出した社会の諸問題は感染症学のみならず人文・社会科学の隅々にまで大きな衝撃をもたらし、私たちはこれまでおこなってきた「学際研究」なるものがパンデミックにおいていかに無力であったかを痛感することとなった。そのため私たちは今後の新しい知のあり方を再構築しなければならないが、すでに3年を経て人々の間には科学への諦念が広がり、そして大学研究者のなかにはCOVID-19の統合的問題に研究時間を割くだけの情熱が湧かないと漏らす者や、一方では「正解のない問い」という近年の流行語に飛びつき、COVID-19問題には正解がないのだから仕方がないとの態度を取り、世間の期待の重圧感から逃れようとする者も見受けられる。 よって私たちは、まず自分たちが科学者や専門家である以前に「生きて死ぬ人間」であることを踏まえ、「人間らしさ」の根本に立ち戻って、お仕着せの総合知ではなく真の総合知と全体知のあり方を探る必要がある。日本学術会議 [2]や内閣府第6期科学技術・イノベーション基本計画[3]が提唱する「知の統合」「総合知」では不充分と思われる点を検討しつつ、今後各々の「知」はどのように連帯してゆくべきか、どのように過去に学ぶべきかを再検討し、極めて困難な課題ではあるが皆様のヒントとなり得るような考え方や道筋を提案したい。【利益相反】本講演において開示すべき利益相反関連事項はない。 [1]瀬名秀明、渡辺政隆、押谷仁、小坂健ほか『知の統合は可能か パンデミックに突きつけられた問い』時事通信出版局、2023. [2] 日本学術会議「提言 社会のための学術としての「知の統合」─その具現に向けて─」(2011.8.19)https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-t130-7.pdf [3] 内閣府「「総合知」ポータルサイト」https://www8.cao.go.jp/cstp/sogochi/index.html |
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► 特別講演3
| 開催日時: | 6月9日(金) 15:10-15:40 |
| 演題名: | 新型コロナウイルスに対する免疫と誤解 |
| 座長名前・所属: | 池田 輝政(ヒトレトロウイルス学共同研究センター・熊本大学 准教授) |
| 演者名前・所属: | 宮坂 昌之 先生(大阪大学免疫学フロンティア研究センター) |
| 抄録: | 新型コロナウイルスの出現後、実際の免疫学的エビデンスが無かったにもかかわらず、「日本人の多くは既にこのウイルスに感染している」、「日本の社会にはすでに集団免疫がある(あるいは今後すぐにできる)。だから、行動制限やマスク着用はまったく不要」、「マスク着用でかえって免疫力が弱まる」などというコメントが世間を駆け巡った。しかし、実際はどうであっただろうか?また、「BCG接種を受ければ新型コロナは広がらない」、「罹っても軽いので早く罹ろう」など、免疫学をまったく無視した意見もあった。mRNAワクチンについても、「開発数カ月で安全なものができるはずがない」、「ワクチン成分が卵巣に貯まるので女性が不妊になる」、「ワクチン接種でかえってADE(抗体依存性感染増強)が起きて人がばたばた亡くなるはず」、「ワクチンでできた抗体はすぐに下がるのでワクチン接種は無意味。感染したほうが良い」、「子どもは重症化しないのでワクチンは不要」などと言われたが、これについても実際のデータはどうだっただろうか?このような状況のもと、本来は厚労省や専門家会議が科学的に正しい情報をより頻繁に発出すべきだったのだが、それが十分にできていたであろうか?もしかして政府の役人には疫学と免疫学の区別が曖昧で、専門家会議の構成に歪みが出ていたのではなかろうか。厚労省、首相官邸を含む政策決定側に果たして免疫学専門家が含まれていたのだろうか?つらつら考えるに、様々な問題があったように思われる。ここでは、これまでにわかってきた新型コロナウイルスに対する免疫反応とそれに関する誤解(misinformation/disinformation)についてお話する。 |