[PA019] 保護者による子どもの学級担任に対する評価の関連要因
Keywords:保護者との関係, 担任への評価の要因
目的
教育現場において,教員が保護者との良好な関係を重要視しているのは言うまでもないが,保護者との関係が難しくなってきていると感じる教員は年々増加の傾向にある(小野田,2009)。両者の良好な関係構築を目的とした先行研究は多くあるが,そのほとんどが教員の立場から検討を加えたものである。加えて,保護者が日頃,教員との関係について教員ほどは気にかけていないことも予想された(新,2007)が,保護者が子どもを育てるうえでも,教員との良好な関係は必要であろう。そこで本研究では,保護者の立場から教員との関係を検討していくものとする。また,保護者同士が教員との関係について語る際によく用いる“あたりの先生”“はずれの先生”という言葉を手掛かりにして,保護者が捉える教員に対する評価の要因を明らかにしていく。
方法
調査時期 2013年8月~9月。
調査協力者 公立小学校に子どもが在籍する保護者236名。
調査方法 調査協力者には知人等を介して質問紙を配布,郵送にて回収。回収率70.3%(166名)。
調査内容 1.協力者と子どもの属性, 2.担任の属性, 3.担任の特徴を知り得る情報源(「家庭訪問」等10種類)の1学期の実施状況および情報源が担任を理解することに役立ったかどうかの“役立ち度”(4段階), 4.予備調査を経て作成された「担任と我が子の関係」「担任の学級での指導」「担任と保護者の関係」「担任の人柄」「担任の噂や第一印象」「クラス便り等」の6カテゴリーから構成される担任の特徴(56項目に対して当てはまる程度の4段階に「今のところ全然分からない」を加えた5つの選択肢から回答), 5.担任への評価(「あたりの先生」から「はずれの先生」までの4段階に「まだ分からない」を加えた5つの選択肢から回答)。
結果と考察
協力者および担任の属性による評価の差異
担任に対しては70%以上の保護者が“あたり”と評価していた。協力者の属性(年齢層),子どもの属性(性別・学年・きょうだいの人数・きょうだい順),担任の属性(性別・年齢層・婚姻の有無・子どもの有無)と担任への評価(あたり/はずれ/分からない)の関連を検討するためにχ2検定を行ったが,全てにおいて有意な関連は認められなかった。
担任の情報源と評価
担任と保護者のコミュニケーションの機会は全体として少なかったが,担任と直接関わる情報源の役立ち度が低い場合に“はずれ”の評価が多かった。つまり,担任が機会の少ないコミュニケーションの場を有効に利用して,自分の考えを上手に保護者へ伝えていくことが,良い評価に繋がることが示唆された。
担任への第一印象と評価
担任への第一印象は好意的な保護者が多かった(78.6%)。“はずれ”の評価をしている場合も,その44.4%は第一印象では好意的であった。評価に変化をもたらした要因を検討するために,第一印象が良くなかった群における“あたり群”と“はずれ群”の間で「担任の特徴」についてt検定を行ったところ,56項目38項目で有意な差異が認められた。両群の得点差が特に大きかったのは「担任と保護者との関係」カテゴリーの項目であり,「担任についての噂・評判」や「クラスでトラブルがあった」においては有意差は認められなかった。
担任の特徴と評価の関連
担任の特徴を尋ねた56項目において「今のところ全然分からない」という回答が全く選択されなかった項目はなく,1学期を終えた時点でも保護者が把握できていない担任の特徴は少なくないということが分かった。56項目における「今のところ全然分からない」の回答数を従属変数,評価の3群を独立変数とした分散分析では群の主効果が有意であった(F(2,158)=8.556,p<.001)。しかし多重比較の結果,「今のところ分からない」の回答が多かったのは評価における“分からない群”であり,“あたり群”と“はずれ群”では差異がなかった。したがって,担任の特徴を把握していないことは“あたり”か“はずれ”かの評価に影響を与えてはいないと考えられる。
担任に対する評価にどのような特徴が関連しているのかについては,数量化Ⅲ類により検討を行った。その結果,子どもがクラスを気に入ってトラブルなく学校に通っており,保護者もあまり学校のことを考えることもなく過ごしていることが,担任に対する“あたり”の評価と関連していることが明らかとなった。また,クラスでトラブルが発生したことは評価と関連していなかったが,トラブルが発生した際の対応が“はずれ”の評価に関連していることが示された。具体的には「子ども達の話し合いを大切にしている」「自分に都合の悪いことでも,保護者(あなた)に隠さずに話す」「子どものもめ事に上手に対応している」が担任に“当てはまらない”ことが“はずれ”の評価との関連が強かった。
教育現場において,教員が保護者との良好な関係を重要視しているのは言うまでもないが,保護者との関係が難しくなってきていると感じる教員は年々増加の傾向にある(小野田,2009)。両者の良好な関係構築を目的とした先行研究は多くあるが,そのほとんどが教員の立場から検討を加えたものである。加えて,保護者が日頃,教員との関係について教員ほどは気にかけていないことも予想された(新,2007)が,保護者が子どもを育てるうえでも,教員との良好な関係は必要であろう。そこで本研究では,保護者の立場から教員との関係を検討していくものとする。また,保護者同士が教員との関係について語る際によく用いる“あたりの先生”“はずれの先生”という言葉を手掛かりにして,保護者が捉える教員に対する評価の要因を明らかにしていく。
方法
調査時期 2013年8月~9月。
調査協力者 公立小学校に子どもが在籍する保護者236名。
調査方法 調査協力者には知人等を介して質問紙を配布,郵送にて回収。回収率70.3%(166名)。
調査内容 1.協力者と子どもの属性, 2.担任の属性, 3.担任の特徴を知り得る情報源(「家庭訪問」等10種類)の1学期の実施状況および情報源が担任を理解することに役立ったかどうかの“役立ち度”(4段階), 4.予備調査を経て作成された「担任と我が子の関係」「担任の学級での指導」「担任と保護者の関係」「担任の人柄」「担任の噂や第一印象」「クラス便り等」の6カテゴリーから構成される担任の特徴(56項目に対して当てはまる程度の4段階に「今のところ全然分からない」を加えた5つの選択肢から回答), 5.担任への評価(「あたりの先生」から「はずれの先生」までの4段階に「まだ分からない」を加えた5つの選択肢から回答)。
結果と考察
協力者および担任の属性による評価の差異
担任に対しては70%以上の保護者が“あたり”と評価していた。協力者の属性(年齢層),子どもの属性(性別・学年・きょうだいの人数・きょうだい順),担任の属性(性別・年齢層・婚姻の有無・子どもの有無)と担任への評価(あたり/はずれ/分からない)の関連を検討するためにχ2検定を行ったが,全てにおいて有意な関連は認められなかった。
担任の情報源と評価
担任と保護者のコミュニケーションの機会は全体として少なかったが,担任と直接関わる情報源の役立ち度が低い場合に“はずれ”の評価が多かった。つまり,担任が機会の少ないコミュニケーションの場を有効に利用して,自分の考えを上手に保護者へ伝えていくことが,良い評価に繋がることが示唆された。
担任への第一印象と評価
担任への第一印象は好意的な保護者が多かった(78.6%)。“はずれ”の評価をしている場合も,その44.4%は第一印象では好意的であった。評価に変化をもたらした要因を検討するために,第一印象が良くなかった群における“あたり群”と“はずれ群”の間で「担任の特徴」についてt検定を行ったところ,56項目38項目で有意な差異が認められた。両群の得点差が特に大きかったのは「担任と保護者との関係」カテゴリーの項目であり,「担任についての噂・評判」や「クラスでトラブルがあった」においては有意差は認められなかった。
担任の特徴と評価の関連
担任の特徴を尋ねた56項目において「今のところ全然分からない」という回答が全く選択されなかった項目はなく,1学期を終えた時点でも保護者が把握できていない担任の特徴は少なくないということが分かった。56項目における「今のところ全然分からない」の回答数を従属変数,評価の3群を独立変数とした分散分析では群の主効果が有意であった(F(2,158)=8.556,p<.001)。しかし多重比較の結果,「今のところ分からない」の回答が多かったのは評価における“分からない群”であり,“あたり群”と“はずれ群”では差異がなかった。したがって,担任の特徴を把握していないことは“あたり”か“はずれ”かの評価に影響を与えてはいないと考えられる。
担任に対する評価にどのような特徴が関連しているのかについては,数量化Ⅲ類により検討を行った。その結果,子どもがクラスを気に入ってトラブルなく学校に通っており,保護者もあまり学校のことを考えることもなく過ごしていることが,担任に対する“あたり”の評価と関連していることが明らかとなった。また,クラスでトラブルが発生したことは評価と関連していなかったが,トラブルが発生した際の対応が“はずれ”の評価に関連していることが示された。具体的には「子ども達の話し合いを大切にしている」「自分に都合の悪いことでも,保護者(あなた)に隠さずに話す」「子どものもめ事に上手に対応している」が担任に“当てはまらない”ことが“はずれ”の評価との関連が強かった。