[PA020] 大学生活充実感を規定する要因の検討
Keywords:大学生活充実感, 規定要因, ソーシャルスキル
問題
学校適応感に影響を及ぼす要因には「学業」、「教師との関係」、「友人との関係」があると言われている(戸ヶ崎ら,1997)。その中でも「友人との関係」はどの学齢期にも共通して最も強い影響を及ぼす要因であることがわかっている(例:大久保, 2005)。しかし、先行研究の多くは小学生から高校生までを対象としており、大学生の適応について検討したものは少ない。現在、大学生の退学率は約10%であるという事実からも、退学やその他の不適応への対応を考える上で、大学生の適応を規定する要因を明らかにすることは重要である。
そこで、本研究では大学生の大学生活充実感を規定する要因を学業面と友人面から検討する。
方法
対象者 K大学文系学部に所属する1年生と2年生352名(男子175名、女子177名)で、実験者の担当する授業科目の受講生であった。
実施時期 2012年1月に実施した。
質問紙 以下の3つの尺度を含む質問紙を作成した。①大学生活充実度尺度(奥田ら, 2010)、②成人用ソーシャルスキル自己評定尺度(相川・藤田, 2005)、③大学生活充実感尺度(坂柳, 1997)
手続き 授業内にて配布及び回収を行った。
その他の指標 対象者の同意の上で、受講科目の出席率と成績を、学業面での適応の指標に含めた。
結果
大学生活充実度尺度について因子分析を行った結果、奥田ら(2010)の結果と同様に4因子が抽出されたが、各因子を構成する項目が一部異なっていた。奥田らが「フィット感」と命名していた因子については、項目の内容から「期待感」と因子名を改めて本研究ではその後の分析を行った。
指標間の相関についてはTable 1に示した。
大学生活充実感の得点を目的変数、大学生活充実度尺度の4つの下位尺度の得点を説明変数として重回帰分析を行った結果がTable 2である。この結果より、大学生活における充実感には交友満足が最も大きく関連する要因であることがわかった。学業満足については、関連が見られなかった。
次に、交友満足に関連するソーシャルスキルを特定するために、大学生活満足度の「交友満足」の得点を目的変数、ソーシャルスキルの6つの下位尺度の得点を説明変数として重回帰分析を行った(Table 3)。この結果より、関係開始や維持のスキルが高いほど交友関係に満足していると言え、解読や感情統制のスキルが高いほど交友関係に対する満足度が低いことがわかった。
論議
本研究の結果より、大学生活の充実感に関わる要因として、学業以上に友人関係に満足できていることが重要であることが示された。また、友人関係への満足度が高い学生ほど、関係開始や維持に関わるスキルが高く、一方で解読や感情統制に関わるスキルが低いという結果は、現代青年の「広く浅く」友人関係を築くという傾向とも重なるように思われる。最近では、入学後のオリエンテーション時などに大学生に対してSSTを行うという実践の報告も見られるが、本研究の結果からも、そのような対人関係への介入が大学生の不適応予防につながる可能性が示唆された。
学校適応感に影響を及ぼす要因には「学業」、「教師との関係」、「友人との関係」があると言われている(戸ヶ崎ら,1997)。その中でも「友人との関係」はどの学齢期にも共通して最も強い影響を及ぼす要因であることがわかっている(例:大久保, 2005)。しかし、先行研究の多くは小学生から高校生までを対象としており、大学生の適応について検討したものは少ない。現在、大学生の退学率は約10%であるという事実からも、退学やその他の不適応への対応を考える上で、大学生の適応を規定する要因を明らかにすることは重要である。
そこで、本研究では大学生の大学生活充実感を規定する要因を学業面と友人面から検討する。
方法
対象者 K大学文系学部に所属する1年生と2年生352名(男子175名、女子177名)で、実験者の担当する授業科目の受講生であった。
実施時期 2012年1月に実施した。
質問紙 以下の3つの尺度を含む質問紙を作成した。①大学生活充実度尺度(奥田ら, 2010)、②成人用ソーシャルスキル自己評定尺度(相川・藤田, 2005)、③大学生活充実感尺度(坂柳, 1997)
手続き 授業内にて配布及び回収を行った。
その他の指標 対象者の同意の上で、受講科目の出席率と成績を、学業面での適応の指標に含めた。
結果
大学生活充実度尺度について因子分析を行った結果、奥田ら(2010)の結果と同様に4因子が抽出されたが、各因子を構成する項目が一部異なっていた。奥田らが「フィット感」と命名していた因子については、項目の内容から「期待感」と因子名を改めて本研究ではその後の分析を行った。
指標間の相関についてはTable 1に示した。
大学生活充実感の得点を目的変数、大学生活充実度尺度の4つの下位尺度の得点を説明変数として重回帰分析を行った結果がTable 2である。この結果より、大学生活における充実感には交友満足が最も大きく関連する要因であることがわかった。学業満足については、関連が見られなかった。
次に、交友満足に関連するソーシャルスキルを特定するために、大学生活満足度の「交友満足」の得点を目的変数、ソーシャルスキルの6つの下位尺度の得点を説明変数として重回帰分析を行った(Table 3)。この結果より、関係開始や維持のスキルが高いほど交友関係に満足していると言え、解読や感情統制のスキルが高いほど交友関係に対する満足度が低いことがわかった。
論議
本研究の結果より、大学生活の充実感に関わる要因として、学業以上に友人関係に満足できていることが重要であることが示された。また、友人関係への満足度が高い学生ほど、関係開始や維持に関わるスキルが高く、一方で解読や感情統制に関わるスキルが低いという結果は、現代青年の「広く浅く」友人関係を築くという傾向とも重なるように思われる。最近では、入学後のオリエンテーション時などに大学生に対してSSTを行うという実践の報告も見られるが、本研究の結果からも、そのような対人関係への介入が大学生の不適応予防につながる可能性が示唆された。