[PA037] ふきだし法を用いてメタ認知をオンラインで捉える試み
小学校算数科における検討
キーワード:ふきだし法, メタ認知, オンラインメソッド
目 的
2010年に学術誌「Educational Psychologist」が,2011年には「Metacognition and Learning」がメタ認知の測定に関する特集号を組むなど,メタ認知の測定に関する研究は近年益々注目されている。Veenman(2011)は,メタ認知の測定には質問紙やインタビューといったオフラインメソッドと,発話思考法や観察法といったオンラインメソッドの2つのアプローチがあるが,自己報告に頼るオフラインメソッドは記憶の失敗や歪みなどに左右されるため,オンラインメソッドを用いたほうがよいと述べ,さらに,発話思考法は学習者に認知的負荷をかけること,観察法は目立った行動しか捉えられないことからこれらにも限界があるとして,新たなオンラインによる測定法開発の必要性を主張している。
そこで,本研究ではメタ認知をオンラインで捉える方法として「ふきだし法」に着眼した。ふきだし法は,亀岡(1990)によって提唱された小学校算数科における学習法で,問題解決の際に自己の思考の営みを記号化(言語化,図化,式化)してノートにふきだしとして記述していく学習法である。ふきだし法を用いることによって,課題遂行時の内省的記述が多く得られることから,メタ認知をオンラインで捉えるツールとしても有効なのではないかと考え,得られた記述の分類と課題の正誤との関連性の検討を行った。
方 法
参加者と時期 私立小学校第6学年2学級の児童57名(男子27名,女子30名)を対象に,2014年5月に実施した。なお,この児童たちは第4学年からふきだし法を用いた算数科の授業に日常的に取り組んでおり,ふきだし法に慣れ親しんでいる。
使用課題 小学校算数科第6学年「数と計算」領域の中から,児童がメタ認知を働かせ熟考しなければ解けないと思われる難易度のやや高い問題1題が担当教諭によって選定された。
手続き 課題は算数科の授業内(学級単位)で個別に実施された。課題文が貼付されたノート形式のプリントを配布し,はじめに見通し段階として課題文を読んで考えたことを記述させた。次に,解決段階として実際に問題を解く際に考えたことを記述させた。所要時間は配布から回収まで含め,約30分間であった。
コーディング ふきだし法によって得られた記述は,Bannert et al.(2013)が自己調整学習の方略を発話思考法によって分析するために用いたコーディングスキーマを改変して援用した。コーディングは,第1筆者と第2筆者が得られた記述1件ずつに対して協議して行った。
結果と考察
コーディングを行った正誤別の結果と,各カテゴリーの記述数と課題の正誤との関連についてスピアマンの順位相関係数を求めた結果を表1に示す。課題を解くことができた児童は,解けなかった児童に比べてオリエンテーションの記述数が少なく,プランニングの記述数が多いことが示された。また,メタ認知の5つのカテゴリーを合算した記述数と課題の正誤との関連について分析した結果,解決段階のメタ認知の記述数と課題の正誤との相関は,rs=.37, p<.01であった。つまり,解決段階においてメタ認知(特にもプランニング)に関する記述が多い児童は,正答を導き出せていることが確認された。今後は,課題数を増やし因果関係などについて詳しく分析を行っていく。
2010年に学術誌「Educational Psychologist」が,2011年には「Metacognition and Learning」がメタ認知の測定に関する特集号を組むなど,メタ認知の測定に関する研究は近年益々注目されている。Veenman(2011)は,メタ認知の測定には質問紙やインタビューといったオフラインメソッドと,発話思考法や観察法といったオンラインメソッドの2つのアプローチがあるが,自己報告に頼るオフラインメソッドは記憶の失敗や歪みなどに左右されるため,オンラインメソッドを用いたほうがよいと述べ,さらに,発話思考法は学習者に認知的負荷をかけること,観察法は目立った行動しか捉えられないことからこれらにも限界があるとして,新たなオンラインによる測定法開発の必要性を主張している。
そこで,本研究ではメタ認知をオンラインで捉える方法として「ふきだし法」に着眼した。ふきだし法は,亀岡(1990)によって提唱された小学校算数科における学習法で,問題解決の際に自己の思考の営みを記号化(言語化,図化,式化)してノートにふきだしとして記述していく学習法である。ふきだし法を用いることによって,課題遂行時の内省的記述が多く得られることから,メタ認知をオンラインで捉えるツールとしても有効なのではないかと考え,得られた記述の分類と課題の正誤との関連性の検討を行った。
方 法
参加者と時期 私立小学校第6学年2学級の児童57名(男子27名,女子30名)を対象に,2014年5月に実施した。なお,この児童たちは第4学年からふきだし法を用いた算数科の授業に日常的に取り組んでおり,ふきだし法に慣れ親しんでいる。
使用課題 小学校算数科第6学年「数と計算」領域の中から,児童がメタ認知を働かせ熟考しなければ解けないと思われる難易度のやや高い問題1題が担当教諭によって選定された。
手続き 課題は算数科の授業内(学級単位)で個別に実施された。課題文が貼付されたノート形式のプリントを配布し,はじめに見通し段階として課題文を読んで考えたことを記述させた。次に,解決段階として実際に問題を解く際に考えたことを記述させた。所要時間は配布から回収まで含め,約30分間であった。
コーディング ふきだし法によって得られた記述は,Bannert et al.(2013)が自己調整学習の方略を発話思考法によって分析するために用いたコーディングスキーマを改変して援用した。コーディングは,第1筆者と第2筆者が得られた記述1件ずつに対して協議して行った。
結果と考察
コーディングを行った正誤別の結果と,各カテゴリーの記述数と課題の正誤との関連についてスピアマンの順位相関係数を求めた結果を表1に示す。課題を解くことができた児童は,解けなかった児童に比べてオリエンテーションの記述数が少なく,プランニングの記述数が多いことが示された。また,メタ認知の5つのカテゴリーを合算した記述数と課題の正誤との関連について分析した結果,解決段階のメタ認知の記述数と課題の正誤との相関は,rs=.37, p<.01であった。つまり,解決段階においてメタ認知(特にもプランニング)に関する記述が多い児童は,正答を導き出せていることが確認された。今後は,課題数を増やし因果関係などについて詳しく分析を行っていく。