[PA059] 人が生きる上で重視すること(3)
青年期を対象として
Keywords:重視すること, 人生, 青年期
【目 的】 中年期,高齢期の人びとを対象として人が生きる上で重視することについての自由記述分析を行った結果,いずれも人との関わり領域や生き方態度領域が上位2領域であったこと,および年齢段階や男女の相違点についての報告がなされている(高井,2014a,b)。本研究においては,中年期および高齢期との比較も含めて,大学生および20代(大学生以外)の青年が,日々生きる上で何を重視しているのかについての検討を行う。
【方 法】 質問紙は近畿圏を中心に,中部・関東,中京地域に配布を行った。自由記述の回答者数は,大学生218名(男子117名,女子101名),20代174名(男性56名,女性118名)である。質問紙の自由記述欄で,生きていく上において何を大切だと考えるかを尋ねた。複数回答を含む記述内容についてKJ法(川喜田,1970)による分類を行った。
【結果と考察】 表1に示されるように,生きて行く上において青年が重視することの上位2領域は,「1.生き方態度」領域と「2.人とのかかわり」領域であった。中年期および高齢期では,人とのかかわり領域の割合が最も多かったが,上位2領域の内容としては同様の結果であった。「1.生き方態度」領域の記述例としては,“精一杯生きる”,“努力する”や“主体性を持つ”,“前向きに生きる”,“向上心を持つ”,“後悔しないように生きる”といった内容が多かった。“自分らしく生きる”ことも比較的多くあげられていた。「2.人とのかかわり領域」では,下位分類として家族関係も含まれるのであるが,青年期では,中年期,高齢期に比して家族関係よりも友人関係・人間関係を重視する割合の方が多かった。
青年期の特徴としては,男女共に「3.楽しみ・幸福感・充実感」領域の割合が3番目に多かったことがあげられる。“楽しみを見つける”や“幸せになる”,“充実した生活を送る”等があげられていたが,特に「楽しさ」に関する記述が多かった。「4.心の支え」領域が上位に位置しているのは,中年期,高齢期と同様であった。男女共に,心の支えになる人の存在や生きがいを見つけることを大切なものとしてあげていた。「5.目標・夢・希望」を持つことが大切だとする割合は,大学生が20代,中年期,高齢期よりも高かった(大学生6.0%→20代3.3%→中年期5.0%→高齢期2.2%)。
男女比較においては,「2.人とのかかわり」領域を重視する割合は女性の方が男性よりも多かった(大学生男子17.2%,女子30.7%;20代男性22.3%,女性25.7%)。逆に「8.なすべき事」に分類される“趣味”や“打ち込めるものを持つ”ことが大切とした割合は男性の方が女性よりも多かった(大学生男子8.3%,女子1.5%;20代男性6.0%,女性1.4%)。下位分類には,“社会的貢献”も含まれ,中年期,高齢期では当領域を重視する割合が最も多かったのであるが,青年期では20代女性1名のみであった。
「6.自己の存在価値意識」の記述内容においては,“必要とされること”,“役立つ自分であること”等,中年期,高齢期と同様の内容も挙げられていたが,中年期,高齢期の人びとが,具体的な生活上の役割意識に基づくところからの自己の存在価値意識であることが示唆されたが,青年期においては,“自分の存在を認めてもらえ,存在できる場所があることが大切”といった,その根底に自己存在の不安が示唆される記述も見られたことが特徴的であった。
また,図1に示されるように,中年期,高齢期との比較における特徴としては,「3.楽しみ・幸福感・充実感」が大切だとする割合が加齢に伴って減少していることである(青年期12.4%→中年期5.6%→高齢期2.0%)。一方,「10.心身の健康」は,加齢に伴って割合が増加し,60代以上においては3番目に位置するものであった(青年期2.4%→中年期7.6%→高齢期20.8%)。健康なくしては実現し得ないものが多く,健康の重要性が加齢に伴って高まっていく様子が窺えた。同じく割合が増加していたのは,「7.自己の内面」領域であった。青年期では“気持ちの持ち方”や“自分を強く持つこと”といった記述が見られた。中年期(5.9%),高齢期(6.8%)では,下位分類としてあげられる“感謝の気持ちが大切”とする記述が増加していた。
以上のように,年齢段階を問わず,人は生きて行く上において「人との関わり」や「生き方態度」を重視していることが示された。一人では存在し得ない人間存在としての自覚が「人との関わり」の重視へ,また,自己の可能性の具現や,有限の自己の人生を悔いなく生きたいという希求が「生き方態度」重視の根底にあるのではないかと示唆された。さらに,人が生きる上で重視することは,個人が置かれている状況や身体的側面,残されている人生の時間的展望観に応じて変化していくことも示された。
〔文献〕高井範子(2014a).「人が生きる上で重視すること:中年期を対象として」日本発達心理学会第25回大会,388.(2014b).日本心理学会第78回大会,印刷中.
【方 法】 質問紙は近畿圏を中心に,中部・関東,中京地域に配布を行った。自由記述の回答者数は,大学生218名(男子117名,女子101名),20代174名(男性56名,女性118名)である。質問紙の自由記述欄で,生きていく上において何を大切だと考えるかを尋ねた。複数回答を含む記述内容についてKJ法(川喜田,1970)による分類を行った。
【結果と考察】 表1に示されるように,生きて行く上において青年が重視することの上位2領域は,「1.生き方態度」領域と「2.人とのかかわり」領域であった。中年期および高齢期では,人とのかかわり領域の割合が最も多かったが,上位2領域の内容としては同様の結果であった。「1.生き方態度」領域の記述例としては,“精一杯生きる”,“努力する”や“主体性を持つ”,“前向きに生きる”,“向上心を持つ”,“後悔しないように生きる”といった内容が多かった。“自分らしく生きる”ことも比較的多くあげられていた。「2.人とのかかわり領域」では,下位分類として家族関係も含まれるのであるが,青年期では,中年期,高齢期に比して家族関係よりも友人関係・人間関係を重視する割合の方が多かった。
青年期の特徴としては,男女共に「3.楽しみ・幸福感・充実感」領域の割合が3番目に多かったことがあげられる。“楽しみを見つける”や“幸せになる”,“充実した生活を送る”等があげられていたが,特に「楽しさ」に関する記述が多かった。「4.心の支え」領域が上位に位置しているのは,中年期,高齢期と同様であった。男女共に,心の支えになる人の存在や生きがいを見つけることを大切なものとしてあげていた。「5.目標・夢・希望」を持つことが大切だとする割合は,大学生が20代,中年期,高齢期よりも高かった(大学生6.0%→20代3.3%→中年期5.0%→高齢期2.2%)。
男女比較においては,「2.人とのかかわり」領域を重視する割合は女性の方が男性よりも多かった(大学生男子17.2%,女子30.7%;20代男性22.3%,女性25.7%)。逆に「8.なすべき事」に分類される“趣味”や“打ち込めるものを持つ”ことが大切とした割合は男性の方が女性よりも多かった(大学生男子8.3%,女子1.5%;20代男性6.0%,女性1.4%)。下位分類には,“社会的貢献”も含まれ,中年期,高齢期では当領域を重視する割合が最も多かったのであるが,青年期では20代女性1名のみであった。
「6.自己の存在価値意識」の記述内容においては,“必要とされること”,“役立つ自分であること”等,中年期,高齢期と同様の内容も挙げられていたが,中年期,高齢期の人びとが,具体的な生活上の役割意識に基づくところからの自己の存在価値意識であることが示唆されたが,青年期においては,“自分の存在を認めてもらえ,存在できる場所があることが大切”といった,その根底に自己存在の不安が示唆される記述も見られたことが特徴的であった。
また,図1に示されるように,中年期,高齢期との比較における特徴としては,「3.楽しみ・幸福感・充実感」が大切だとする割合が加齢に伴って減少していることである(青年期12.4%→中年期5.6%→高齢期2.0%)。一方,「10.心身の健康」は,加齢に伴って割合が増加し,60代以上においては3番目に位置するものであった(青年期2.4%→中年期7.6%→高齢期20.8%)。健康なくしては実現し得ないものが多く,健康の重要性が加齢に伴って高まっていく様子が窺えた。同じく割合が増加していたのは,「7.自己の内面」領域であった。青年期では“気持ちの持ち方”や“自分を強く持つこと”といった記述が見られた。中年期(5.9%),高齢期(6.8%)では,下位分類としてあげられる“感謝の気持ちが大切”とする記述が増加していた。
以上のように,年齢段階を問わず,人は生きて行く上において「人との関わり」や「生き方態度」を重視していることが示された。一人では存在し得ない人間存在としての自覚が「人との関わり」の重視へ,また,自己の可能性の具現や,有限の自己の人生を悔いなく生きたいという希求が「生き方態度」重視の根底にあるのではないかと示唆された。さらに,人が生きる上で重視することは,個人が置かれている状況や身体的側面,残されている人生の時間的展望観に応じて変化していくことも示された。
〔文献〕高井範子(2014a).「人が生きる上で重視すること:中年期を対象として」日本発達心理学会第25回大会,388.(2014b).日本心理学会第78回大会,印刷中.