[PA092] 青年期の精神的回復力に及ぼす親子関係と性差の影響
親との同一視欲求に関する検討
Keywords:精神的回復力, 親子関係, 性差
[目的]田村(2012)では青年期の精神的回復力に幼少期の両親との同一視欲求が影響していることが明らかにされた。しかし,田村(2012)の分析では,調査対象者の性別が区別されていない。両親との同一視欲求から受ける影響を考えた場合,親が同性であるか異性であるかによって影響力が異なっているということが考えられる。
そこで本研究では,青年期の精神的回復力に及ぼす幼少期の両親との同一視欲求の影響に性差がどのように影響しているかについて検討する。
[方法]調査対象者 調査対象者は専門学校生と大学生273人であった(女112人,男161人,)。平均年齢は19歳7ヶ月であった。
調査手続き 幼少時の親子関係を調査するために,親との親密性尺度(森下,1980)の親との同一視欲求に関わる6項目の質問について,幼少期の母親と父親との関係について尺度評定を求めた。この尺度は例えば「あなたはお母さんのまねをすることが多かったですか」という質問項目に対して「はい」「?」「いいえ」で答えさせるものであった。
精神的回復力を調査するために小塩ら(2002)の精神的回復力尺度の21項目について尺度評定を求めた。この尺度は,新奇性追求,感情調整,肯定的未来志向の3つの因子に関する項目から成り,「5.あてはまる」~「1.あてはまらない」の5段階で評定させるものであった。
[結果と考察]母親,父親のそれぞれについて,男性,女性毎に親との親密性尺度の評定値の上位,下位からそれぞれ25%にあたる調査対象者の評定値と同じ評定値の者をすべて含めて同一視欲求高群,同一視欲求低群とした。Table1,Table2は各群の精神的回復力に関わる平均評定値(SD)を示したものである。2(親との同一視欲求:高低)×2(性差:男女)の分散分析を行ったところ,母親との関係では,精神的回復力に関する評定値において同一視欲求×性別の交互作用が有意であった(F(1,152)=6.74, p< .05)。単純主効果の検定を行ったところ,女性では同一視欲求高群が低群よりも有意に高かったのに対して(F(1,152)=28.09, p< .001),男性では高群と低群の間に有意差はなかった。下位項目では新奇性追求と肯定的な未来志向に同様の有意な交互作用があった。
父親との関係では,精神的回復力に関する評定値において同一視欲求×性別の交互作用が有意であった(F(1,162)=10.75, p< .01)。単純主効果の検定を行ったところ,女性では同一視欲求高群が低群よりも有意に高かったのに対して(F(1,162)=26.66, p< .001),男性では高群と低群の間に有意差はなかった。下位項目では,新奇性追求と感情調整で同様の有意な交互作用があった。
これらの結果から,青年期の精神的回復力は幼児期の両親との同一視欲求の影響を受けていることが明らかにされ,男性よりも女性の方がその影響を受けやすいことが示された。
[引用文献]田村隆宏(2012) 青年期の精神的回復力に及ぼす幼少期の親子関係の影響;親との同一視欲求 日本教育心理学会第54回大会発表論文集
そこで本研究では,青年期の精神的回復力に及ぼす幼少期の両親との同一視欲求の影響に性差がどのように影響しているかについて検討する。
[方法]調査対象者 調査対象者は専門学校生と大学生273人であった(女112人,男161人,)。平均年齢は19歳7ヶ月であった。
調査手続き 幼少時の親子関係を調査するために,親との親密性尺度(森下,1980)の親との同一視欲求に関わる6項目の質問について,幼少期の母親と父親との関係について尺度評定を求めた。この尺度は例えば「あなたはお母さんのまねをすることが多かったですか」という質問項目に対して「はい」「?」「いいえ」で答えさせるものであった。
精神的回復力を調査するために小塩ら(2002)の精神的回復力尺度の21項目について尺度評定を求めた。この尺度は,新奇性追求,感情調整,肯定的未来志向の3つの因子に関する項目から成り,「5.あてはまる」~「1.あてはまらない」の5段階で評定させるものであった。
[結果と考察]母親,父親のそれぞれについて,男性,女性毎に親との親密性尺度の評定値の上位,下位からそれぞれ25%にあたる調査対象者の評定値と同じ評定値の者をすべて含めて同一視欲求高群,同一視欲求低群とした。Table1,Table2は各群の精神的回復力に関わる平均評定値(SD)を示したものである。2(親との同一視欲求:高低)×2(性差:男女)の分散分析を行ったところ,母親との関係では,精神的回復力に関する評定値において同一視欲求×性別の交互作用が有意であった(F(1,152)=6.74, p< .05)。単純主効果の検定を行ったところ,女性では同一視欲求高群が低群よりも有意に高かったのに対して(F(1,152)=28.09, p< .001),男性では高群と低群の間に有意差はなかった。下位項目では新奇性追求と肯定的な未来志向に同様の有意な交互作用があった。
父親との関係では,精神的回復力に関する評定値において同一視欲求×性別の交互作用が有意であった(F(1,162)=10.75, p< .01)。単純主効果の検定を行ったところ,女性では同一視欲求高群が低群よりも有意に高かったのに対して(F(1,162)=26.66, p< .001),男性では高群と低群の間に有意差はなかった。下位項目では,新奇性追求と感情調整で同様の有意な交互作用があった。
これらの結果から,青年期の精神的回復力は幼児期の両親との同一視欲求の影響を受けていることが明らかにされ,男性よりも女性の方がその影響を受けやすいことが示された。
[引用文献]田村隆宏(2012) 青年期の精神的回復力に及ぼす幼少期の親子関係の影響;親との同一視欲求 日本教育心理学会第54回大会発表論文集