The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PA

(501)

Fri. Nov 7, 2014 10:00 AM - 12:00 PM 501 (5階)

[PA094] 中学生の不注意および多動性・衝動性と内在化問題

学校ライフイベント,自尊感情との関連

齊藤彩 (お茶の水女子大学大学院)

Keywords:不注意, 多動性・衝動性, 内在化問題

問題と目的
不注意および多動性・衝動性を特徴とする注意欠陥/多動性障害(ADHD)を抱える子どもは,主症状に加え,主症状がもたらす困難と環境との相互作用により生じる二次的な問題に苦しむことが多い。ADHDの子どもにおける抑うつ気分や不安などの二次的な内在化問題の発現が指摘されているが,多くの研究は事例報告や経験的言及にとどまっており,その関連メカニズムについては十分に検討されていない。そこで,本研究は,不注意や多動性・衝動性が高い子どもが直面しやすい困難として,学業面ならびに友人関係面でのネガティブイベントの多さとポジティブイベントの少なさ,そして自尊感情の低下に着目し,不注意および多動性・衝動性が学校ライフイベント,自尊感情を媒介して内在化問題へと関連するという仮説について検討することとした。なお,二次的な内在化問題を発現しやすい発達段階であるとされる中学生を対象とした。
方法
調査対象者と手続き:2013年7~9月に公立中学校4校の22学級の通常学級に在籍する生徒とその学級担任教員22名に調査協力を求めた。教員評定ならびに生徒評定が揃い,かつ欠損値の見られなかった1年生(男子308名,女子315名),2年生(男子103名,女子100名)の合計826名の回答を分析の対象とした。学級と出席番号により,教員版と生徒版のデータを一致させた。
調査内容:①不注意,多動性・衝動性 ADHD Rating Scale日本語版(DuPaul et al., 1998, 市川・田中 監修, 2008)の教員評定版を使用した(各9項目・合計18項目,4件法)。②学校ライフイベント 学業4項目,友人関係6項目の10項目を作成し,経験頻度を尋ねた(4件法)。③自尊感情 Self-Perception Profile for Adolescents(Harter, 1988)日本語版(眞榮城ら, 2007)のうち,学業,社交性,親友関係,全体的自己価値感の各3項目の合成得点を使用した(12項目,4件法)。④内在化問題 Strengths and Difficulties Questionnaire(SDQ: Goodman, 1997)の情緒の問題に関する項目を使用した(5項目,3件法)。
結果と考察
性別・学年を統制した上での各変数間の偏相関係数を求めたところ,不注意と多動性・衝動性は,いずれも学業イベントネガティブ得点との間に正の相関,友人関係イベントネガティブ得点との間に正の相関,自尊感情との間に負の相関,内在化問題との間に正の相関を示した。
仮説モデルを検討するためのパス解析を行ったところ(Figure 1),不注意からは学業と友人関係の両イベントへの有意な正のパスが見られたが,多動性・衝動性の高さは学業イベントのみに関連し,友人関係イベントへの有意なパスは認められなかった。また,学業イベントならびに友人関係イベントから自尊感情への有意な負のパス,自尊感情から内在化問題への有意な負のパスが認められた。学業と友人関係の両イベントから内在化問題への直接の有意な正のパスも確認された。
不注意,多動性・衝動性が高い中学生における内在化問題の予防,早期介入のためには,学業面・友人関係面での適切なサポートや自尊感情を向上させる取り組みが重要であることが示唆された。