[PB065] キャリア教育をどうすすめるか
大学生の体験回想と自己効力感との関連
Keywords:体験回想, 自己効力感, 大学生
【問題および目的】
『今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について』(2011)では、キャリア教育とは「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」であると定義されており、端的に言えば、「生き方」探究教育といえる。よって、キャリア教育は、就学前の幼児期の段階から大学に至るまで、全ての学校種において体系的・系統的に実践されるものであり、当然のことながらそれは、幼稚園・保育所・小学校にとっても、必要不可欠な学習や経験の機会を提供する重要な役割を担っているわけである。
本研究では、青年期を迎えた大学生が幼少期から現在に至るまで、それぞれの発達段階をどのように過ごしてきたのか、記憶に残る体験を想起し、それが自分にとってどのような意味があったのかを振り返るレジュメ作成から、キャリア発達の過程を探り、その効果や影響を検討する。さらに自己効力感との関連も合わせて検討する。
【方法】
1.調査協力者:教員免許取得を目指す私立大学生60名(男子32名、女子28名)。2.調査時期:2013年11月下旬。 3.課題:“自分史を書いてみよう”と題し,「今の私が完成されるまで」というテーマで「幼稚園,小学校,中学校,高校のそれぞれの時期でもっとも印象に残っている出来事(1つでなくても構いません)についてできるだけ詳細に記述し(いつ,誰と,どんな状況で,どんな気持ちだったかなど)それが今の自分にどのような影響を与えているかについて考察しなさい。」という課題を課した。4.自己効力感尺度:坂野・東條(1993)の自己効力感尺度16項目に対し「はい」「いいえ」で回答を求めた。
【結果および考察】
1.自己効力感得点 坂野・東條(1993)の結果の整理方法に従って自己効力感得点を算出し、5段階評定を行った(表1)。その結果、非常に低い学生は3人と少なく、本研究の調査協力者の学生は自己効力感は高めであった。
2.記述の内容 自己効力感の程度が「非常に低い」および「低い傾向にある」の14名(低自己肯定感群)と、「非常に高い」の14名(高自己肯定感群)について、記述内容に違いがあるか検討した。この時点で幼稚園~高校までのいずれかの時期のみの記述しかしていない4名を削除し、低自己肯定感群12名、高自己肯定感群12名を分析対象とした。
記述されたエピソードを群別にまとめ、最も多かった内容について表2に示す。記述の内容は群でほとんど差はなく、部活動やクラブ活動での体験の記述が多かった。次いで教師や友達との経験の記述が多いのも両群ともに共通しており、部活動を通じての教師や友人との体験で多くのことを学んだといった記述がみられた。また、幼稚園では園内での体験、小学校では体育祭や演劇の成功が語られており、教科外の活動が“キャリア教育=生き方教育”の基礎となっていると言える。
記述エピソードをポジティブかネガティブかに分類してみると、低自己肯定感群のポジティブエピソードは16、ネガティブエピソードは15であった。高自己肯定感群のポジティブエピソードは28、ネガティブエピソードは11で、χ2検定の結果、有意な差はみられなかった(x2(1)= 2.211, n.s.)。記述されたエピソードはネガティブであっても(例えば、失敗・死別・いじめ)それを自分の糧にしているという記述が多く、印象に残っている失敗経験が直接的に大学生の自己肯定感を低めているわけではないことが示唆される。
本研究結果は基礎的な分析である。今後は記述内容の継時的変化の分析や、将来目標のない学生の記述内容との比較を行う必要があるだろう。
『今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について』(2011)では、キャリア教育とは「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」であると定義されており、端的に言えば、「生き方」探究教育といえる。よって、キャリア教育は、就学前の幼児期の段階から大学に至るまで、全ての学校種において体系的・系統的に実践されるものであり、当然のことながらそれは、幼稚園・保育所・小学校にとっても、必要不可欠な学習や経験の機会を提供する重要な役割を担っているわけである。
本研究では、青年期を迎えた大学生が幼少期から現在に至るまで、それぞれの発達段階をどのように過ごしてきたのか、記憶に残る体験を想起し、それが自分にとってどのような意味があったのかを振り返るレジュメ作成から、キャリア発達の過程を探り、その効果や影響を検討する。さらに自己効力感との関連も合わせて検討する。
【方法】
1.調査協力者:教員免許取得を目指す私立大学生60名(男子32名、女子28名)。2.調査時期:2013年11月下旬。 3.課題:“自分史を書いてみよう”と題し,「今の私が完成されるまで」というテーマで「幼稚園,小学校,中学校,高校のそれぞれの時期でもっとも印象に残っている出来事(1つでなくても構いません)についてできるだけ詳細に記述し(いつ,誰と,どんな状況で,どんな気持ちだったかなど)それが今の自分にどのような影響を与えているかについて考察しなさい。」という課題を課した。4.自己効力感尺度:坂野・東條(1993)の自己効力感尺度16項目に対し「はい」「いいえ」で回答を求めた。
【結果および考察】
1.自己効力感得点 坂野・東條(1993)の結果の整理方法に従って自己効力感得点を算出し、5段階評定を行った(表1)。その結果、非常に低い学生は3人と少なく、本研究の調査協力者の学生は自己効力感は高めであった。
2.記述の内容 自己効力感の程度が「非常に低い」および「低い傾向にある」の14名(低自己肯定感群)と、「非常に高い」の14名(高自己肯定感群)について、記述内容に違いがあるか検討した。この時点で幼稚園~高校までのいずれかの時期のみの記述しかしていない4名を削除し、低自己肯定感群12名、高自己肯定感群12名を分析対象とした。
記述されたエピソードを群別にまとめ、最も多かった内容について表2に示す。記述の内容は群でほとんど差はなく、部活動やクラブ活動での体験の記述が多かった。次いで教師や友達との経験の記述が多いのも両群ともに共通しており、部活動を通じての教師や友人との体験で多くのことを学んだといった記述がみられた。また、幼稚園では園内での体験、小学校では体育祭や演劇の成功が語られており、教科外の活動が“キャリア教育=生き方教育”の基礎となっていると言える。
記述エピソードをポジティブかネガティブかに分類してみると、低自己肯定感群のポジティブエピソードは16、ネガティブエピソードは15であった。高自己肯定感群のポジティブエピソードは28、ネガティブエピソードは11で、χ2検定の結果、有意な差はみられなかった(x2(1)= 2.211, n.s.)。記述されたエピソードはネガティブであっても(例えば、失敗・死別・いじめ)それを自分の糧にしているという記述が多く、印象に残っている失敗経験が直接的に大学生の自己肯定感を低めているわけではないことが示唆される。
本研究結果は基礎的な分析である。今後は記述内容の継時的変化の分析や、将来目標のない学生の記述内容との比較を行う必要があるだろう。