[PB066] キャリア選択に対する自己効力が就職活動の成果に与える影響
就職活動方針に注目して
Keywords:キャリア選択に対する自己効力, 大学生, 満足度
目 的
就職活動を行っている学生にとって,内定獲得は大学から職業へと移行するための手段であり,望ましい成果でもある。従来,進路選択研究においては,個人に望ましい結果をもたらす要因として,キャリア選択に対する自己効力(CDMSE:Career Decision-Making Self-Efficacy)に関する知見が蓄積されてきた。そこでは,CDMSEが目標設定や行動に肯定的な影響を与えることが示されてきたが,就職活動時に学生により設定される方針はどのようなものであるか,実際の内定獲得という成果に結びつく方針は何であるかを明らかにした研究は少ない。
したがって,本研究では,学生が就職活動において設定する就職活動方針と,それによりもたらされる成果について検討を行う。具体的には,就職活動開始前に測定されたCDMSEと就職活動時に設定された方針との関連,それら変数が内定獲得数と内定満足度に与える影響について,縦断的アプローチにより検討する。
方 法
1.調査時期および内容
第1回調査2012年7月 CDMSE:安達(2001)がTaylor&Betz(1983)を参照し作成した測度であり,進路選択・課題解決・計画立案・自己評価・職業情報収集に関する自己効力についての各7項目,計35項目。
第2回調査2013年4月 就職活動方針:内定獲得者に対するインタビューをもとに筆者が作成した。活動量重視・内定数重視・条件重視についての各3項目,計9項目。
第3回調査2013年10月 内定獲得数:内定を獲得した数について回数の記入を求めた。 内定満足度:「受理した内定に満足している」という就職活動結果への満足度を問う1項目。
2.調査対象
いずれの調査も授業時間を利用して一斉に実施した。全ての調査に参加し,進路希望を就職としていた関東圏内の私立大学の大学3年生,男性18名女性36名の計54名(平均年齢は20.93歳,SD=.77)を分析対象とした。
結 果
CDMSEについては,因子間相関の高さから1因子構造を採用した。「CDMSE→就職活動方針→内定獲得数・内定満足度」とする因果モデルを仮定し,重回帰分析を行った結果がFigure1である。CDMSEから内定数重視へ-.39(p<.01),活動量重視,内定数重視から内定獲得数へそれぞれ.25(p<.10),-.28(p<.05),内定数重視から内定満足度へ.29(p<.10)の直接的なパスが認められた。
Figure1 CDMSE,就職活動方針,内定獲得数,内定満足度の関連
考 察
就職活動前に当該活動の自信の低かった者は,就職活動時に内定数重視の方針を採用する傾向にあった。また,活動方針については,活動量を重視した者が内定数を獲得した一方で,内定数を重視した者は,内定数獲得という成果にはむすびつかなかった。以上のことから,自信の低い者が設定した就職活動方針からは,個人の望む成果が必ずしも導かれないということが示された。
今後は,CDMSEの低い者がなぜ内定数重視の方針を設定するのかについて検討する必要がある。
就職活動を行っている学生にとって,内定獲得は大学から職業へと移行するための手段であり,望ましい成果でもある。従来,進路選択研究においては,個人に望ましい結果をもたらす要因として,キャリア選択に対する自己効力(CDMSE:Career Decision-Making Self-Efficacy)に関する知見が蓄積されてきた。そこでは,CDMSEが目標設定や行動に肯定的な影響を与えることが示されてきたが,就職活動時に学生により設定される方針はどのようなものであるか,実際の内定獲得という成果に結びつく方針は何であるかを明らかにした研究は少ない。
したがって,本研究では,学生が就職活動において設定する就職活動方針と,それによりもたらされる成果について検討を行う。具体的には,就職活動開始前に測定されたCDMSEと就職活動時に設定された方針との関連,それら変数が内定獲得数と内定満足度に与える影響について,縦断的アプローチにより検討する。
方 法
1.調査時期および内容
第1回調査2012年7月 CDMSE:安達(2001)がTaylor&Betz(1983)を参照し作成した測度であり,進路選択・課題解決・計画立案・自己評価・職業情報収集に関する自己効力についての各7項目,計35項目。
第2回調査2013年4月 就職活動方針:内定獲得者に対するインタビューをもとに筆者が作成した。活動量重視・内定数重視・条件重視についての各3項目,計9項目。
第3回調査2013年10月 内定獲得数:内定を獲得した数について回数の記入を求めた。 内定満足度:「受理した内定に満足している」という就職活動結果への満足度を問う1項目。
2.調査対象
いずれの調査も授業時間を利用して一斉に実施した。全ての調査に参加し,進路希望を就職としていた関東圏内の私立大学の大学3年生,男性18名女性36名の計54名(平均年齢は20.93歳,SD=.77)を分析対象とした。
結 果
CDMSEについては,因子間相関の高さから1因子構造を採用した。「CDMSE→就職活動方針→内定獲得数・内定満足度」とする因果モデルを仮定し,重回帰分析を行った結果がFigure1である。CDMSEから内定数重視へ-.39(p<.01),活動量重視,内定数重視から内定獲得数へそれぞれ.25(p<.10),-.28(p<.05),内定数重視から内定満足度へ.29(p<.10)の直接的なパスが認められた。
Figure1 CDMSE,就職活動方針,内定獲得数,内定満足度の関連
考 察
就職活動前に当該活動の自信の低かった者は,就職活動時に内定数重視の方針を採用する傾向にあった。また,活動方針については,活動量を重視した者が内定数を獲得した一方で,内定数を重視した者は,内定数獲得という成果にはむすびつかなかった。以上のことから,自信の低い者が設定した就職活動方針からは,個人の望む成果が必ずしも導かれないということが示された。
今後は,CDMSEの低い者がなぜ内定数重視の方針を設定するのかについて検討する必要がある。