[PC006] 教育にデザインされた属性(4)
教員養成課程の学生の英語学習に対する動機づけと課題価値,学習行動の関連
キーワード:第二言語習得, 課題価値
1. 問題と目的
本田(2005) は, 日常生活の中で英語に接する機会の少ない日本人のようなEFL(English as a foreign language)の環境下においては, 学習者の学習意欲をどのように高めるかが重要な課題であるとし, 授業以外でも, 学習者に英語を使う喜びや達成感を与える取り組みが必要となるとしている。日本は島国であり, 他の国々と隣接しておらず, 第二言語学習者たちは, 必ずしも高い「外国語コミュニケーション能力」を身につけなくてはならないという必要性を有していない。そのため多くの第二言語学習者たちは高等学校や大学入試を英語学習の目標として設定し学習を行っている。上述のような事に関して, 伊田(2013)は, 学習者が課題に見出している価値を課題価値(task-value)と呼び, 学習動機の重要な裏付けとしている。
本研究では, 北海道の教員養成系大学で実施した英語学習に対する動機づけと課題価値, 学習行動の関連についての質問紙調査の結果を報告する。この調査から, 教員養成系大学の学生の現在の英語学習の現状と, 学生を取り巻く環境の問題について検討していく事を目的とした。
2. 方法
調査対象者は, 北海道の教員養成系教育学部, 第一専攻(地域学校教育専攻, 以下第一専攻とする), 第二専攻(地域環境教育専攻, 以下第二専攻とする), 第三専攻(学校カリキュラム開発専攻, 以下第三専攻とする), 外国語研究室(小学校, 以下外国語研小とする), 外国語研究室(中学校, 以下外国語研中とする) の第1学年と第2学年の受講生270名(男子140名, 女子126名, 不明4名)。質問紙の項目は, Sato(2005) の(1) 自らの英語力や英語に関する知識を他者と比較し, また, 学習者自身が自分の英語力や英語に関する知識をどの程度身につけているか認識の程度を問う質問項目, (2) 学習行動に関する質問項目, (3) 英語でコミュニケーションができるようになりたい等といった英語に対する願望を問う質問項目, (4) 伊田(2001)の課題価値測定尺度, (5) Noel et al.(2000)の英語に対する心理的欲求を見る質問項目を使用した。
3. 結果
1: 第一専攻, 2: 第二専攻, 3: 第三専攻, 4: 外国語研小, 5: 外国語研中, それぞれの専攻を独立変数, 上述の尺度得点を従属変数とした1要因分散分析を行った。その結果「自主的なインプットとアウトプット」(F (4, 250)=2.83, p<.05)と「知識を得るために本を読む」(F(4, 250)=2.08, p<.05), 「自主的に学習をする」(F(4, 250)=3.90, p<.05), 「英語に対する願望」(F(4, 250)=7.40, p<.05), 「内発的動機づけの知識」(F(4, 250)=4.47, p<.05), 「無動機」(F(4, 250)=6.60, p<.05), 「外発的動機づけと同一視」(F(4, 250)=2.56, p<.05), 「内発的動機づけの刺激」(F(4, 250)=5.33, p<.05), 「利用価値」(F(4, 250)=4.11, p<0.5), 「興味価値」(F(4, 250)=6.43, p<0.5) で有意な群間差が見られた。TukeyのHSD法(5%水準)による専攻間1~5の多重比較を行ったところ,以下の結果が得られた。「自主的なインプットとアウトプット」については, 2<5, 3<5, 「知識を得るために本を読む」については, 1<4, 「自主的に学習をする」については, 2<4, 2<5, 「英語に対する願望」については, 1<4, 3<2, 3<4, 3<5,「内発的動機づけの知識」については, 1<4, 2<4, 3<4, 「無動機」については, 4<1, 4<3, 5<3, 「外発的動機づけと同一視」については, 1< 4, 「内発的動機づけの刺激」については, 1<4, 2<4, 3<4, 「利用価値」については, 1<5, 3<5, 「興味価値」については,
1< 4, 2<4, 3<4という結果が得られた。
4.考察
本研究で, 教員養成系教育学部の学生が, 英語学習に対する動機づけと課題価値, 学習行動のほぼ全ての項目において, 外国語研小と外国語研中の学生の方が第一専攻と第二専攻, 第三専攻の学生よりも自主的な学習行動と内発的動機づけ, 利用価値, 興味価値における因子が有意に高い事が明らかとなった。
結果から, 外国語研究室以外の学生は, TOEICや教員採用試験の等のテスト対策を目的として英語学習を行っていることが, 質問紙の項目から明らかとなった。これに対し, 外国語研究室の学生は, 海外の文化や学習している言語を母国語として話す人々に対する興味・関心が高く, このような純粋な興味・関心が英語学習の価値として置かれていると考えられる。つまり, 外国語研究室の学生は, 英語や海外に対する純粋な興味が英語学習に対する動機づけを高め, 自主的に外国人とメールを交換したり, 本を読み文化を学んだりといった学習行動に繋がっていると考える。今後は課題価値を高める学習環境デザインについて検討する必要がある。
本田(2005) は, 日常生活の中で英語に接する機会の少ない日本人のようなEFL(English as a foreign language)の環境下においては, 学習者の学習意欲をどのように高めるかが重要な課題であるとし, 授業以外でも, 学習者に英語を使う喜びや達成感を与える取り組みが必要となるとしている。日本は島国であり, 他の国々と隣接しておらず, 第二言語学習者たちは, 必ずしも高い「外国語コミュニケーション能力」を身につけなくてはならないという必要性を有していない。そのため多くの第二言語学習者たちは高等学校や大学入試を英語学習の目標として設定し学習を行っている。上述のような事に関して, 伊田(2013)は, 学習者が課題に見出している価値を課題価値(task-value)と呼び, 学習動機の重要な裏付けとしている。
本研究では, 北海道の教員養成系大学で実施した英語学習に対する動機づけと課題価値, 学習行動の関連についての質問紙調査の結果を報告する。この調査から, 教員養成系大学の学生の現在の英語学習の現状と, 学生を取り巻く環境の問題について検討していく事を目的とした。
2. 方法
調査対象者は, 北海道の教員養成系教育学部, 第一専攻(地域学校教育専攻, 以下第一専攻とする), 第二専攻(地域環境教育専攻, 以下第二専攻とする), 第三専攻(学校カリキュラム開発専攻, 以下第三専攻とする), 外国語研究室(小学校, 以下外国語研小とする), 外国語研究室(中学校, 以下外国語研中とする) の第1学年と第2学年の受講生270名(男子140名, 女子126名, 不明4名)。質問紙の項目は, Sato(2005) の(1) 自らの英語力や英語に関する知識を他者と比較し, また, 学習者自身が自分の英語力や英語に関する知識をどの程度身につけているか認識の程度を問う質問項目, (2) 学習行動に関する質問項目, (3) 英語でコミュニケーションができるようになりたい等といった英語に対する願望を問う質問項目, (4) 伊田(2001)の課題価値測定尺度, (5) Noel et al.(2000)の英語に対する心理的欲求を見る質問項目を使用した。
3. 結果
1: 第一専攻, 2: 第二専攻, 3: 第三専攻, 4: 外国語研小, 5: 外国語研中, それぞれの専攻を独立変数, 上述の尺度得点を従属変数とした1要因分散分析を行った。その結果「自主的なインプットとアウトプット」(F (4, 250)=2.83, p<.05)と「知識を得るために本を読む」(F(4, 250)=2.08, p<.05), 「自主的に学習をする」(F(4, 250)=3.90, p<.05), 「英語に対する願望」(F(4, 250)=7.40, p<.05), 「内発的動機づけの知識」(F(4, 250)=4.47, p<.05), 「無動機」(F(4, 250)=6.60, p<.05), 「外発的動機づけと同一視」(F(4, 250)=2.56, p<.05), 「内発的動機づけの刺激」(F(4, 250)=5.33, p<.05), 「利用価値」(F(4, 250)=4.11, p<0.5), 「興味価値」(F(4, 250)=6.43, p<0.5) で有意な群間差が見られた。TukeyのHSD法(5%水準)による専攻間1~5の多重比較を行ったところ,以下の結果が得られた。「自主的なインプットとアウトプット」については, 2<5, 3<5, 「知識を得るために本を読む」については, 1<4, 「自主的に学習をする」については, 2<4, 2<5, 「英語に対する願望」については, 1<4, 3<2, 3<4, 3<5,「内発的動機づけの知識」については, 1<4, 2<4, 3<4, 「無動機」については, 4<1, 4<3, 5<3, 「外発的動機づけと同一視」については, 1< 4, 「内発的動機づけの刺激」については, 1<4, 2<4, 3<4, 「利用価値」については, 1<5, 3<5, 「興味価値」については,
1< 4, 2<4, 3<4という結果が得られた。
4.考察
本研究で, 教員養成系教育学部の学生が, 英語学習に対する動機づけと課題価値, 学習行動のほぼ全ての項目において, 外国語研小と外国語研中の学生の方が第一専攻と第二専攻, 第三専攻の学生よりも自主的な学習行動と内発的動機づけ, 利用価値, 興味価値における因子が有意に高い事が明らかとなった。
結果から, 外国語研究室以外の学生は, TOEICや教員採用試験の等のテスト対策を目的として英語学習を行っていることが, 質問紙の項目から明らかとなった。これに対し, 外国語研究室の学生は, 海外の文化や学習している言語を母国語として話す人々に対する興味・関心が高く, このような純粋な興味・関心が英語学習の価値として置かれていると考えられる。つまり, 外国語研究室の学生は, 英語や海外に対する純粋な興味が英語学習に対する動機づけを高め, 自主的に外国人とメールを交換したり, 本を読み文化を学んだりといった学習行動に繋がっていると考える。今後は課題価値を高める学習環境デザインについて検討する必要がある。