The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PC

(5階ラウンジ)

Fri. Nov 7, 2014 4:00 PM - 6:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PC047] 教員研修でのワールドカフェ体験に対する参加者の評価

尾之上高哉 (兵庫教育大学)

Keywords:教員研修, ワールドカフェ, 特別支援学校教員

問題と目的
教師の専門的発達を支えるのは、実践の中での省察と実践後の省察という一連の省察的実践であると言われる(佐藤, 1997)。本研究では、教師の実践後の省察を援助する方法としてワールドカフェ(以下、WCと記す)に注目し、教員研修で実施、その効果を検討したのでそれを報告する。
WCとは、設定されたテーマについて、少人数(4人程度)でのグループ対話(意見を出し合い、聴き合い、協働して考える)を、メンバーの組み合わせを替えながら繰り返す話し合いの技法である(Junita et al., 2005 香取他訳 2007)。カフェのようなリラックスした雰囲気の中で対話を繰り返すため、素朴な意見や漠然とした感想であっても表現し易いという特徴がある。組織変革のためのアプローチとして、参加者個人の省察、気づきを促すためのアプローチとして期待されている。
本研究では、(1)教員は研修でのWCをどのように評価するのか、(2)研修でのWC体験はその後の実践にどのように活かされるのかを検討する。

方法
場の設定と参加者
A県内の特別支援学校で地域支援の中核を担う教員を対象とした研修の一部で実施(この研修は研修1~研修3の3つで構成され、研修2がWCに該当)。参加教員は33名。33名は別々の特別支援学校に勤務。教職歴は8年~39年、平均24年。
手続き
WCは、「地域における特別支援学校の役割とは」をテーマとし、20分間のグループ対話を3回繰り返す方式で実施した。WCの目的と手順、テーマとカフェエチケット(WCでのルール)を説明後、第1ラウンドを開始。開始から20分経過後、テーブル毎にホストを1名選び、その者以外は他のテーブルに自由に移動する席替えを行い、第2ラウンドを始めた。第2ラウンド終了後は、再び第1ラウンドの座席に戻って第3ラウンドを行った。
測定と分析方法
WCに対する教員の評価 WC終了後に参加者にWCの感想を記述してもらった。この感想から参加者のWCに対する評価内容を抽出、分析した。記述された文章一文ずつを取り上げ、それを次の5つのカテゴリ、つまり、「気づき」(実践を行う上で重要な点に気づいたことを示す記述)、「WCの価値」(WCの良さや利点を示す記述)、「WCの問題点」(WCの欠点や弱点を示す記述)、「情報収集」(他校の実践、他地域の実態を把握できたことを示す記述)、「その他」に分類した。
WC体験が実践場面で活かされるか WCの2か月後に参加者に「研修を実践場面でどのように活かせたか」についてのレポート提出を求めた。このレポートは、研修1、WC、研修3のそれぞれが実践場面でどのように活かせたかについての記述が期待されるものである。そこで、このレポートを対象にWCが実践にどう活かされるかを分析した。具体的には、レポートの中に研修でのWC体験が実践で活かされたとの記述がみられる者を特定し、WC体験がどのように活かされたかを分析した。

結果
教員はWCをどのように評価するのか
5つのカテゴリ毎に、少なくとも1記述以上行った人数を算出すると、気づきは29名、WCの価値は16名、WCの問題点は5名、情報収集は14名、その他は15名だった。
WC体験は実践にどのように活かされるのか
WC体験が実践で活かされたとの記述がレポートにみられた者は14名いた。研修1と研修3が活かされたと記述した者はそれぞれ8名、6名であり、WCを記述した者が最も多かった。14名の記述は、次の3つ、「対話環境のデザイン(4名)」(WCを契機に勤務校でも教員同士で気軽に対話できる環境を作るようになったとの記述)、「WCの実施(6名)」(校内研修会でWCを実施した、或いは実施予定であるという記述)、「WCで得られた気づきや情報の活用(4名)」に分けることができた。

結論
1.WCに対する教員の評価を分析した結果、参加教員の9割は実践についての気づきがあったと評価し、5割はWCの良さや利点を評価した。
2.研修でのWC体験が実践にどう活かされるかを分析した結果、WCで得られた気づきや情報が活かされるだけでなく、WC体験が教師同士の対話環境の創造にも繋がっていることが示された。