The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PC

(5階ラウンジ)

Fri. Nov 7, 2014 4:00 PM - 6:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PC048] 教員免許取得を目指す学生の教育実習に対するイメージ

実習経験,教職志望度に着目したメタファ法による検討

三島知剛1, 一柳智紀2, 坂本篤史3 (1.岡山大学, 2.新潟大学, 3.星城大学)

Keywords:教育実習, メタファ法, 実習に対するイメージ

問題と目的
教育実習が教員免許取得を目指す学生にとって重要な学びの場の一つであることは周知の事実である。そして彼らがいかに学ぶのか,また実習での学びをどう意味づけるかを解明することは,教育実習を学びの場として充実させる上で不可欠であると言える。
これらについて,坂本・三島・一柳(2013)は実習観に着目し,教育実習に関わる人々の経験と意味づけを検討している。また,教育実習についてのイメージは固定的ではなく,実習前後で変容することや,教職志望度によって異なる可能性が考えられる。
そこで,本研究では,メタファ法を用い,教員免許取得を目指す学生の実習に対するイメージを実習経験や教職への志望度と関連させて,横断的・探索的に検討することを目的とする。
方法
地方国立大学1校で調査を実施し,教員免許取得を目指している教育実習未経験の学生及び経験済みの学生に対して,それぞれメタファ法に基づき,質問紙を用いて教育実習に対する比喩生成課題を行った。また,その他に教職志望度,性別などの回答を求めた。その結果,教育実習未経験の学生(2年生)61名,教育実習を経験している3年生以上の43名から有効な回答が得られた。
結果と考察
1.実習イメージのカテゴリーの分類
まず,協力者の持つ実習イメージの全体像を把握するために,生成された比喩並びに比喩生成の理由の記述(全184個)を基に,カテゴリー分類した。その結果,実習による身体的精神的負荷を強調しているイメージである「過酷さ」,実際に教師になることに向けた練習というイメージの「教職に向けた練習」,など14個のカテゴリーが見出された。
2.実習経験,教職志望度と実習イメージの関係
分類した14カテゴリーに関して,調査協力者が各カテゴリーに該当する記述を何件書いているかを件数として点数化し,カテゴリーごとに,実習経験の有無と教職志望度(志望・非志望・迷い)の2要因の分散分析を行った。その結果,「過酷さ」「自分を知る場」「実習の限界性」「社会人としての経験の場」「進路選択」「通過儀礼・イベント」「能動的な学びの場」において有意または有意傾向が見られた。
このうち,まず交互作用が見られた結果に着目する。「進路選択」に有意傾向が認められたため,単純主効果の検定を行った結果,実習経験学生において志望群が迷い群に比べ,得点が高いことが示唆された。また,「通過儀礼・イベント」に関しては,迷い群において実習未経験学生の得点が実習経験学生に比べ高いこと,実習未経験学生において非志望学生が他の学生に比べ得点が高いこと,が示唆された。最後に,「能動的な学びの場」に関しては,迷い群において実習経験学生の方が得点が高いこと,実習経験学生において迷い群の学生が他の学生に比べ得点が高いことが示唆された。
次に,交互作用が見られず,実習経験の有無の主効果が得られたカテゴリーについて,「実習の限界性」「社会人としての経験の場」において,実習経験学生の得点が高かった。これは実際に実習を経験したからこそ気づいたと考えられる。「実習の限界性」に関しては,森下ら(2010) において教育実習の学習の特徴の一つとして学習の制約があることが見出されているが,実習経験学生も同様のことを実感した可能性が考えられる。一方,「過酷さ」は,実習未経験学生の得点が実習経験学生に比べ高かった。教育実習に対する不安は実習が進むにつれて低下していくという長谷川・浅野(2008) などの知見を踏まえると「過酷さ」に関する結果はうなづける。
また,交互作用が見られず,志望度の主効果が見られたカテゴリーについて,「自分を知る場」は,非志望学生の得点が志望学生より高かった。これは,教師になるつもりがない非志望学生が教職以外のことを知ることに実習の意味を見出している結果である可能性が考えられる。
最後に,実習後に迷っている学生について考察を行う。先述の分散分析において実習経験学生における迷い群に関して有意差が認められたカテゴリーは「進路選択」「能動的な学びの場」であった。また,実習経験学生だけのことではないが,「実習の限界性」に関して迷い群の学生の得点が高く,記述の多くが実習に対する批判的な記述であった。これらを総合的に考えると,実習に期待していたが,進路選択に答えが導き出せなかったことや実習で自らが頑張らなかったことへの後悔の思いが推察される。同時に,彼らが実習そのものについてのイメージは持っていても,実習での自分の経験を意味づけあぐねている可能性も推察される。