日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PC

(501)

2014年11月7日(金) 16:00 〜 18:00 501 (5階)

[PC082] 学級の課題性と課題共有度が学級集団構造に及ぼす影響

教師-児童関係にみる集団構造からの検討

弓削洋子 (愛知教育大学)

キーワード:学級集団, 課題性, 対人関係

目 的
弓削(2014)において,小学校教師の認知する学級課題を学級内で児童が共有している程度(課題共有度)が教育機能統合に及ぼす影響を検討した結果,中学年においては,授業をみんなで楽しく受ける‘授業態度’が学級課題であるときには,課題共有度が高いほど教師の指導行動を媒介として児童の対人志向性および学習志向性を高めること,一方,高学年においては,学級課題が個人の学習や自立性を高める‘個人伸長’であるとき,課題共有度が低いほど教師の指導行動を媒介として児童の対人志向性と学習志向性を高めることが示された。
本報告は,学級の課題性によって学級課題共有度が学級に及ぼす影響の仕方を検討するために,教師-児童関係から捉えた学級構造を分析することを目的とする。
方 法
調査対象:関東地域の小学校74学級の児童(3年生~6年生2250名,担任教師(74名)。
調査期間:2012年10月から12月。
手続き:質問紙調査を実施。
1.児童対象:(1)学校生活の課題(学校にいるとき一番大事なこと)を選ばせた。選択肢は,個人伸長(授業がわかる・難問へのチャレンジ,みんなをひっぱる),友人関係(友だち・同級生と仲良くやっていく),授業態度(みんなと授業を楽しく受ける,授業中に先生に注意されない)の計8項目である。(2)教師との関係性:正当性(e.g.,先生の言うことになるほどと思う)と親密性(e.g.,先生には話しやすい)について5件法で評定させた。(3)学級連帯性,学習志向性を5件法で評定させた。
2.教師対象
学級課題認知:担任学級の課題を,個人伸長,友人関係,授業態度(8項目)から一つ選択。
結 果 と 考 察
1.学級課題共有度の算出
教師の選択した学級課題と同じものを,自分の課題として選択した児童(共有児童)の学級内の%を指標とした。
2.学級の課題性ごとの学級課題共有度と教師-児童関係の相関 高学年において学級課題が‘個人伸長’のとき,学級課題共有度が高いほど教師への児童の親密さは低くなり(r =-.21**),学級ごとの教師-児童間の親密さのSDは大きくなることが示された(r = .42†)。
3.課題共有度と学級集団構造との関係
高学年で学級課題が‘個人伸長’の学級について,学級ごとの教師-児童間の親密さをグラフにまとめ(Figure1),サブグループ(連帯性と教師との親密さが類似した児童グループ)の有無を分類した(Table1)。共有度が40%以上になるとサブグループに分かれやすいこと(χ2(4)=11.7*),サブグループがある学級のほうが連帯性と学習志向性は低いことが示された(Table2)。但し,サブグループの有無および共有度は学級ごとの教師への親密さと学習志向性および連帯性との相関に影響しなかった。また,課題共有児童が教師に親密さを感じているとは限らないことが読み取れる(Fig.1)。高学年にとって‘個人伸長’の課題は個別作業になりうること,このことと学級のサブグループ化との関連が示唆される。