[PC098] 大学生のグループ活動におけるTransactive Memoryの変化に関する検討
キーワード:Transactive Memory, PBL, 協同学習
問題と目的
本研究の目的は,PBL型のグループワーク活動に置ける活動の質を,Transactive Memory(TM)の観点から検討することにある。
近年,高等教育の現場では,アクティブ・ラーニングの手法の活用が盛んになっている。プロジェクト・ベースド・ラーニング(PBL)などは,その代表的な手法であるが,学生はグループ活動における仲間との実践的学びを通じて,汎用的技能の向上や,専門に関する知識を構成していくことが期待されている。
活発なグループ活動は,質の高い学習成果と関連すると予測される。しかし,高等教育の現場を対象に,どのような活動のあり方が活発なグループ活動や学習成果と関連するかについては,検討事例は多くない。そこで本研究では,まず組織や集団の効率的な運営に関するTransactive Memory(TM)の観点を中心に,大学生のグループ活動を対象として,その活動プロセスの変化の様相を明らかにする。TMは,組織における情報共有のあり方に関する概念である。さらに,組織内の活動プロセスとして社会的公正に焦点をあて,公正な相互作用と情報共有システムとしてのTMの関連について検討する。
方法
分析対象者 2013年度前期にPBL形式の初年次教育科目を履修した大学生の内,調査に回答した1288 名(男性 763 名,女性 525 名)。
調査時期と実施方法 半期15回の開講期間の内,3 回実施した(初回(1・2 回),途中(7・8 回),終了時(14・15 回))。質問紙は授業内て?配付し,授業時間外て?回答後に回収した。
質問項目 グループ内の活動プロセスとしては田中(2004)を参考に,集団における手続きの公正さに関する項目を用意した(項目例: メンバーは,自分の誤りに気づいた時に速やかに修正しうる努力をしようとする)。また,情報共有のあり方としてはLewis(2003)を参考に,Transactive Memoryに関する項目を用いた (項目例:各メンハ? ーは,それそ?れか?ク?ルーフ?・フ?ロシ?ェクトに役立つような得意技を持っている)。それぞれの質問については,まったく当てはまらない(1)から,非常によく当てはまる(5)の,5段階で回答を求めた。
結果
TMの各因子について,3時点の平均値を反復測定による分散分析で比較した(表1)。その結果,特殊化,及び信頼において,初回とそれ以降で差が見られた(それぞれ順にF(2,356)=10.67, F(2, 350)=6.86)。反対に調整に関しては得点差が見られなかった。また,授業終了時におけるTMに対して,初回から終了時にかけての公正な相互作用を説明変数とし,ステップワイズ法による重回帰分析を行った(表2)。いずれの条件でも,説明変数としては,終了時の公正さのみが,TMに影響を与えていた。全体としては,手続きの公正さが,情報共有に正の影響を及ぼしている。
考察
本研究では,教育場面におけるグループ活動の変化について,社会心理学的概念から検討を行った。グループ活動の様相と学習成果については未検討であり,今後の重要な課題である。なお,三沢・佐相・山口(2009)は看護師を対象に総合的な視点からチームワークを測定する尺度等を検討している。今後はグループワークのあり方についても,多面的に捉える視点も必要だろう。
本研究の目的は,PBL型のグループワーク活動に置ける活動の質を,Transactive Memory(TM)の観点から検討することにある。
近年,高等教育の現場では,アクティブ・ラーニングの手法の活用が盛んになっている。プロジェクト・ベースド・ラーニング(PBL)などは,その代表的な手法であるが,学生はグループ活動における仲間との実践的学びを通じて,汎用的技能の向上や,専門に関する知識を構成していくことが期待されている。
活発なグループ活動は,質の高い学習成果と関連すると予測される。しかし,高等教育の現場を対象に,どのような活動のあり方が活発なグループ活動や学習成果と関連するかについては,検討事例は多くない。そこで本研究では,まず組織や集団の効率的な運営に関するTransactive Memory(TM)の観点を中心に,大学生のグループ活動を対象として,その活動プロセスの変化の様相を明らかにする。TMは,組織における情報共有のあり方に関する概念である。さらに,組織内の活動プロセスとして社会的公正に焦点をあて,公正な相互作用と情報共有システムとしてのTMの関連について検討する。
方法
分析対象者 2013年度前期にPBL形式の初年次教育科目を履修した大学生の内,調査に回答した1288 名(男性 763 名,女性 525 名)。
調査時期と実施方法 半期15回の開講期間の内,3 回実施した(初回(1・2 回),途中(7・8 回),終了時(14・15 回))。質問紙は授業内て?配付し,授業時間外て?回答後に回収した。
質問項目 グループ内の活動プロセスとしては田中(2004)を参考に,集団における手続きの公正さに関する項目を用意した(項目例: メンバーは,自分の誤りに気づいた時に速やかに修正しうる努力をしようとする)。また,情報共有のあり方としてはLewis(2003)を参考に,Transactive Memoryに関する項目を用いた (項目例:各メンハ? ーは,それそ?れか?ク?ルーフ?・フ?ロシ?ェクトに役立つような得意技を持っている)。それぞれの質問については,まったく当てはまらない(1)から,非常によく当てはまる(5)の,5段階で回答を求めた。
結果
TMの各因子について,3時点の平均値を反復測定による分散分析で比較した(表1)。その結果,特殊化,及び信頼において,初回とそれ以降で差が見られた(それぞれ順にF(2,356)=10.67, F(2, 350)=6.86)。反対に調整に関しては得点差が見られなかった。また,授業終了時におけるTMに対して,初回から終了時にかけての公正な相互作用を説明変数とし,ステップワイズ法による重回帰分析を行った(表2)。いずれの条件でも,説明変数としては,終了時の公正さのみが,TMに影響を与えていた。全体としては,手続きの公正さが,情報共有に正の影響を及ぼしている。
考察
本研究では,教育場面におけるグループ活動の変化について,社会心理学的概念から検討を行った。グループ活動の様相と学習成果については未検討であり,今後の重要な課題である。なお,三沢・佐相・山口(2009)は看護師を対象に総合的な視点からチームワークを測定する尺度等を検討している。今後はグループワークのあり方についても,多面的に捉える視点も必要だろう。