[PD015] 中学生における社会的効力感
尺度の信頼性・妥当性の検討
Keywords:尺度作成, 社会的効力感, 中学生
目 的
さまざまな社会問題が存在する現代では,子どものうちからそれらの問題について考え行動を起こす力が重要である。人が行動を起こす力の指標としてBandura(1977)の自己効力感がある。川嶋・大渕・熊谷・浅井(2012)は,Bandura(1977)の自己効力感を援用して「私一人が行動を起こしたところで,世の中を変えることはできない」「自分が政府や行政に何か影響を与えている」の2項目からなる社会的効力感測定尺度を作成している。しかしながら項目数が少なく尺度として十分ではないこと,項目内容に政府や行政が関わっており中学生の日常の行動範囲を超えていることから,中学生の社会的効力感を測定するために使用することは適切ではないと考えられる。そこで本研究では,中学生の社会的効力感を「自分は,周りの環境をより望ましい方向に変化させるために,発言や行動ができる」と定義し,中学生向けの社会的効力感尺度を作成して,その信頼性・妥当性を検討した。
方 法
1.被験者
大阪府内と奈良県内の中学校に通う中学生452名を対象に調査を行った。うち442名(男子=210名,女子=232名,平均年齢=13.19歳,SD =0.65,有効回答率=99.3%)の有効回答を得た。
2.調査用紙
中学生160人を対象に行った予備調査において選出された,20項目の質問紙を用いた。また妥当性検討については,「自己効力感測定尺度」(桜井,1987),「社会的事象に対する関心・意欲尺度」(前田・新見・加藤・梅津,2010)を用いた。
3.手続き
「まったく当てはまらない:1」~「とても当てはまる:5」の5件法で回答を求めた。調査方法は,調査先の各中学校において教員に教示,質問紙の配布を依頼し,回答は学年・性別・年齢のみを記述させ,無記名式で行った。
結 果
因子分析を行った結果,20項目のうち14項目で解釈可能な2因子が抽出された(Table1)。第1因子は,集団や取り組みに参加することで自分自身を含む環境が改善され,行動した結果が自身の利益にも随伴する項目で構成されていることから,「個人的利益を含む社会的効力感」と命名した。第2因子は,他者への利益の要素が強く,行動した結果,直接自身に利益が随伴するとは限らない項目で成り立っていることから,「利他的な社会効力感」と命名した。また,信頼性係数としてのCronbachのα係数は,第1因子は.79,第2因子は.71であり,各因子共に十分とはいえないものの,許容しうる範囲の内的整合性が確認された。
妥当性分析では,作成した尺度の「下位尺度得点」と,自己効力感尺度の合計得点,社会的事象に対する関心・意欲尺度の「下位尺度得点」との間でピアソンの積率相関係数を求めた。その結果,「個人的利益を含む社会的効力感」「利他的な社会的効力感」ともに自己効力感と有意な中程度の相関が認められた。「社会的事象に対する関心・意欲」尺度との間では,「利他的な社会的効力感」と「公民への関心・意欲」において有意な中程度の相関が認められ,併存的妥当性が認められた。
考 察
因子分析の結果,中学生では利益の所在によって社会的効力感が機能することが示唆された。第1因子は行動することで,仲間からの承認という利益を得られる可能性のある項目で構成されている。一方,第2因子では地域との関わりや友達への注意など,行動の結果が必ずしも仲間関係を良いものにするとは限らない項目が中心となっている。このことから,利益の所在で社会的効力感が機能する背景には,中学生という発達段階における仲間関係の重要性が影響していると考えられる。
さまざまな社会問題が存在する現代では,子どものうちからそれらの問題について考え行動を起こす力が重要である。人が行動を起こす力の指標としてBandura(1977)の自己効力感がある。川嶋・大渕・熊谷・浅井(2012)は,Bandura(1977)の自己効力感を援用して「私一人が行動を起こしたところで,世の中を変えることはできない」「自分が政府や行政に何か影響を与えている」の2項目からなる社会的効力感測定尺度を作成している。しかしながら項目数が少なく尺度として十分ではないこと,項目内容に政府や行政が関わっており中学生の日常の行動範囲を超えていることから,中学生の社会的効力感を測定するために使用することは適切ではないと考えられる。そこで本研究では,中学生の社会的効力感を「自分は,周りの環境をより望ましい方向に変化させるために,発言や行動ができる」と定義し,中学生向けの社会的効力感尺度を作成して,その信頼性・妥当性を検討した。
方 法
1.被験者
大阪府内と奈良県内の中学校に通う中学生452名を対象に調査を行った。うち442名(男子=210名,女子=232名,平均年齢=13.19歳,SD =0.65,有効回答率=99.3%)の有効回答を得た。
2.調査用紙
中学生160人を対象に行った予備調査において選出された,20項目の質問紙を用いた。また妥当性検討については,「自己効力感測定尺度」(桜井,1987),「社会的事象に対する関心・意欲尺度」(前田・新見・加藤・梅津,2010)を用いた。
3.手続き
「まったく当てはまらない:1」~「とても当てはまる:5」の5件法で回答を求めた。調査方法は,調査先の各中学校において教員に教示,質問紙の配布を依頼し,回答は学年・性別・年齢のみを記述させ,無記名式で行った。
結 果
因子分析を行った結果,20項目のうち14項目で解釈可能な2因子が抽出された(Table1)。第1因子は,集団や取り組みに参加することで自分自身を含む環境が改善され,行動した結果が自身の利益にも随伴する項目で構成されていることから,「個人的利益を含む社会的効力感」と命名した。第2因子は,他者への利益の要素が強く,行動した結果,直接自身に利益が随伴するとは限らない項目で成り立っていることから,「利他的な社会効力感」と命名した。また,信頼性係数としてのCronbachのα係数は,第1因子は.79,第2因子は.71であり,各因子共に十分とはいえないものの,許容しうる範囲の内的整合性が確認された。
妥当性分析では,作成した尺度の「下位尺度得点」と,自己効力感尺度の合計得点,社会的事象に対する関心・意欲尺度の「下位尺度得点」との間でピアソンの積率相関係数を求めた。その結果,「個人的利益を含む社会的効力感」「利他的な社会的効力感」ともに自己効力感と有意な中程度の相関が認められた。「社会的事象に対する関心・意欲」尺度との間では,「利他的な社会的効力感」と「公民への関心・意欲」において有意な中程度の相関が認められ,併存的妥当性が認められた。
考 察
因子分析の結果,中学生では利益の所在によって社会的効力感が機能することが示唆された。第1因子は行動することで,仲間からの承認という利益を得られる可能性のある項目で構成されている。一方,第2因子では地域との関わりや友達への注意など,行動の結果が必ずしも仲間関係を良いものにするとは限らない項目が中心となっている。このことから,利益の所在で社会的効力感が機能する背景には,中学生という発達段階における仲間関係の重要性が影響していると考えられる。