[PD020] 職場における関係性攻撃と社会的情報処理の関連
Keywords:関係性攻撃, 社会的情報処理, 攻撃行動
1.序論
関係性攻撃(relational aggression)は,「故意に仲間関係を操作したりダメージを与えることをして,他者を傷つける行動」と定義された攻撃行動である(Crick, 1995).関係性攻撃の生起要因の中でも,特にSIPモデルについては,符号化,解釈,目標設定,反応検索,反応評価,反応実行の6つのステップから講成されており,社会的相互作用の間に生じる実際の過程を明確化できる,ある社会的認知がいかにしてある社会的行動を導くかを説明可能である(Dodge,Pettit,McClaskey & Brown,1986).また,SIPの先行するステップが後のステップに影響を与えるプロセスを想定し,最終的な行動の生起を説明するモデルとなっている。また,それより,行動の予測力が高まること,および不意適応行動への介入の視点を見出すことが可能になるとされている(久木山,2002).
2.研究目的
職場の成人において,関係性攻撃の生起メカニズムとSIPの関連の検討はほとんどなされていない.以上のことから,本研究では,架空の挑発場面(敵意・曖昧・非敵意)を設定し,職場における成人の関係性攻撃の生起メカニズムについて,SIPのステップの直接的,間接的な関係性攻撃への影響について検討することを目的とする.
3.方法
調査対象者:20歳以上の職業に従事している健康な者(男性116名,女性192名;平均年齢39.82歳).
調査材料:デモグラフィックデータ(年齢,性別,職業),関係性攻撃における職場成人用関係性攻撃尺度,中学生における攻撃動機の個人差と社会的
情報処理尺度を成人の就労者用に「仕事のアポイントの遅刻場面」に項目を修正し使用.
分析方法:意図条件ごとに,SIPの下位因子得点を独立変数とし,関係性攻撃の合計得点を従属変
数とした重回帰分析を行った。また,意図条件ごとに,関係性攻撃とSIPの関連について,共分散構造分析を行い,有意でなかったパスを順次削除し,適合度が最適となるモデルを探索した.
4.結果
職場における成人の関係性攻撃の生起メカニズ
ムについて,SIPのステップの関係性攻撃への影響について検証するために,共分散構造分析を行った結果,Figure1に示す結果を得た.このことから,SIPの6つのステップの関係性攻撃への直接的な影響だけではなく,SIPの6つのステップが相互に関連し合いながら間接的な影響も与えていることがわかった.特に,「符号化」から「報復的目標設定」を介し「関係性攻撃」への影響が認められることが明らかとなった。敵意条件でのこのモデルの適合度はGFI=.961,AGFI=.906,RMSEA=.055であった.
5.考察
本研究の結果から,SIPの「符号化」のステップから「報復的目標設定」のステップを介し「関係性攻撃」への影響が明らかとなった.したがって,自己の内外に存在するさまざまな手がかりを,感覚過程を通じて知覚する際に,適切な手がかりへ選択する「符号化」の段階で検討することにより,関係性攻撃による不適応行動や人間関係の悪化の抑制,抑うつ状態の予防に役立つと考える.
関係性攻撃(relational aggression)は,「故意に仲間関係を操作したりダメージを与えることをして,他者を傷つける行動」と定義された攻撃行動である(Crick, 1995).関係性攻撃の生起要因の中でも,特にSIPモデルについては,符号化,解釈,目標設定,反応検索,反応評価,反応実行の6つのステップから講成されており,社会的相互作用の間に生じる実際の過程を明確化できる,ある社会的認知がいかにしてある社会的行動を導くかを説明可能である(Dodge,Pettit,McClaskey & Brown,1986).また,SIPの先行するステップが後のステップに影響を与えるプロセスを想定し,最終的な行動の生起を説明するモデルとなっている。また,それより,行動の予測力が高まること,および不意適応行動への介入の視点を見出すことが可能になるとされている(久木山,2002).
2.研究目的
職場の成人において,関係性攻撃の生起メカニズムとSIPの関連の検討はほとんどなされていない.以上のことから,本研究では,架空の挑発場面(敵意・曖昧・非敵意)を設定し,職場における成人の関係性攻撃の生起メカニズムについて,SIPのステップの直接的,間接的な関係性攻撃への影響について検討することを目的とする.
3.方法
調査対象者:20歳以上の職業に従事している健康な者(男性116名,女性192名;平均年齢39.82歳).
調査材料:デモグラフィックデータ(年齢,性別,職業),関係性攻撃における職場成人用関係性攻撃尺度,中学生における攻撃動機の個人差と社会的
情報処理尺度を成人の就労者用に「仕事のアポイントの遅刻場面」に項目を修正し使用.
分析方法:意図条件ごとに,SIPの下位因子得点を独立変数とし,関係性攻撃の合計得点を従属変
数とした重回帰分析を行った。また,意図条件ごとに,関係性攻撃とSIPの関連について,共分散構造分析を行い,有意でなかったパスを順次削除し,適合度が最適となるモデルを探索した.
4.結果
職場における成人の関係性攻撃の生起メカニズ
ムについて,SIPのステップの関係性攻撃への影響について検証するために,共分散構造分析を行った結果,Figure1に示す結果を得た.このことから,SIPの6つのステップの関係性攻撃への直接的な影響だけではなく,SIPの6つのステップが相互に関連し合いながら間接的な影響も与えていることがわかった.特に,「符号化」から「報復的目標設定」を介し「関係性攻撃」への影響が認められることが明らかとなった。敵意条件でのこのモデルの適合度はGFI=.961,AGFI=.906,RMSEA=.055であった.
5.考察
本研究の結果から,SIPの「符号化」のステップから「報復的目標設定」のステップを介し「関係性攻撃」への影響が明らかとなった.したがって,自己の内外に存在するさまざまな手がかりを,感覚過程を通じて知覚する際に,適切な手がかりへ選択する「符号化」の段階で検討することにより,関係性攻撃による不適応行動や人間関係の悪化の抑制,抑うつ状態の予防に役立つと考える.