The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PD

(5階ラウンジ)

Sat. Nov 8, 2014 10:00 AM - 12:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PD048] 大学生における自己表現方略と性役割観との関連

安藤有美 (四国大学)

Keywords:自己表現, 性役割, 性別

問題
従来から,自己表現行動に影響する要因として性別を取り上げた研究は多い(例えば,Deluty,1983,1985;塩田,2004など)。Deluty(1983,1985)は,自己表現における表現方法(アサーティブ,攻撃的,非主張的)について,選択のされやすさは性別によって異なるとしている。また,社会的望ましさの観点からも性別によっては選択することが困難な表現方法があるとされ(Alberti & Emmons,1970),自己表現は性別という縛りの中で表出される行動と捉えられてきた。しかしながら,近年は草食系男子に代表されるように,行動は性別により限定されるものでなく,多様性を増していると考える。本研究は,生物学的な性別に加え,性役割観という個人のパーソナリティ要因を用いて,大学生における自己表現の方略について検討する。

方法
調査時期 2012年7月
調査対象者 大学生556名のうち,調査参加への同意が得られ,回答に不備のなかった545名を分析対象とした(男性363名,女性182名,平均年齢19.32歳,標準偏差1.18)。
調査内容
1)自己表現方略尺度 安藤(2012)が作成した自己表現の方略を測定する尺度である。「主張の曖昧さ」「自己犠牲性」「自己中心性」「互恵性」の4下位因子で成る(全32項目5件法)。
2)性役割観尺度 性役割観パーソナリティを測定する尺度である。日本語版BSRI(東,1990,1991) のうち,男性性尺度(20項目)と女性性尺度(20項目)を用いた(7件法,得点範囲20点~140点)。

結果と考察
1)自己表現方略尺度の因子分析
全32項目について因子分析(最尤法,Promax回転)を行った。固有値の減衰状況や解釈の適切さから4因子を抽出した。その後,因子負荷量が.40以下を削除したところ,4因子28項目(得点範囲は「曖昧さ」9点~45点,「犠牲」7点~35点,「自己中」6点~30点,「互恵」6点~30点)となった。
2)自己表現方略と性役割観の関連
方略と性役割観との相関分析の結果をTable1に示す。男性性は「互恵性」と「自己中心性」と正の相関,「主張の曖昧さ」と「自己犠牲」と負の相関を示した。女性性は「自己犠牲」と「互恵性」と正の相関,「自己中心性」と負の相関を示した。これにより,性役割観と自己表現方略との間には弱い相関関係があり,方略によっては男性性と女性性において異なる方向で関連することが示唆された。
3)性役割観と性別による自己表現方略の違い
性役割観尺度における男性性尺度得点と女性性尺度得点の平均値を基準に,各尺度の高低群を設定した。Table2にカテゴリーごとの平均値を示す。そして,独立変数として性役割観(男性性/女性性)の高低と性別,従属変数として各自己表現方略とした多変量分散分析を行った。その結果,性別の主効果はみられなかったものの,性役割観高低は男性性と女性性のどちらも主効果がみられた。また2次の交互作用はみられなかった。これにより,性別よりも性役割観の高さが自己表現方略に関わることが示唆された。しかしながら,今回の調査では調査対象者数の男女差が大きいことは問題である。今後さらなるデータの収集と分析の必要がある。