The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PD

(5階ラウンジ)

Sat. Nov 8, 2014 10:00 AM - 12:00 PM 5階ラウンジ (5階)

[PD052] インクルーシブ教育の視点を活かした特別支援教育

特別支援学級在籍児童を対象とした包括的支援

藤城光好 (大阪府立吹田支援学校)

Keywords:インクルーシブ教育, 包括的支援

1.問題と目的
平成18年に国連総会において採択された「障害者の権利条約」が、本年1月わが国においても締結された。教育分野については、障がい者を包容する教育制度(インクルーシブ教育システム)の方向性が明確に示され、特別支援教育においても共生社会の形成に向けた効果的な取り組みが求められている(文部科学省,2012)。本研究では特別支援学級在籍の子どもが通常学級での学習や交流を深めていくための包括的支援を実施し、その効果を検証することを目的とする。

2.方法
広汎性発達障がいの診断を受けている小学校2年生の特別支援学級在籍児童を対象に、特別支援学級における個別指導、通常学級における個別配慮、および教職員全員を対象とした事例研修会等と多方面にわたる包括的支援を実施した。なお、筆者は特別支援学校のコーディネーターとして、定期的な巡回相談の中で、教職員へのコンサルテーションおよび研修講師を担当した。

①個別SST
2学期から週1回、特別支援学級で抽出指導を行った。児童の実態に合わせて、「朝のあいさつ」「学習準備」などのスキルを教示・モデリング・リハーサル・フィードバックなどのSST(ソーシャルスキル・トレーニング)の手法に従い指導した。
②学校行事への参加
運動会や音楽会などの学校行事に参加するために、状況や概念、社会的スキルを短い文章で記述して伝えたり(ソーシャル・ストーリー)、当日の見通しを持たせるために、プログラムに行動の詳細を記入したり、自己選択・自己決定の機会を与えたりした。また、本児の動機付けを高めるために、点検表を作成した(トークンエコノミー・システム)。

3.結果
ソーシャルスキル尺度(上野・岡田,2006)の結果を図に示す。包括的支援実施前と比較して、「集団行動」「仲間関係」「コミュニケーション」の各項目の評価点が大きく向上し、学年の平均域(7~13)に入った。しかし、「セルフコントロール」については、依然として同学年の平均を下回っていた。

4.考察
本児は知的発達の遅れはないものの、衝動性の高さや、状況理解の困難さがあり、通常学級での授業や学校行事に参加することが苦手であった。個別SSTによるスキルトレーニングやソーシャル・ストーリーなどの見通しを持たせる工夫により、授業や学校行事にも参加できることが増えた。また、教職員を対象にした事例研修によって本児への理解が促進された。インクルーシブ教育を推進するためには、このような包括的支援が有効であると考えられる。