[PD071] 子ども期の社会性の発達に関する縦断研究プロジェクト(6)
コンピテンスの発達に影響を及ぼす養育態度ときょうだい環境
Keywords:コンピテンス, 養育態度, きょうだい環境
【目的】近年,子どもの発達と家庭環境との関連について語る際,「きょうだい環境」を考慮した上で子どもの発達に影響を及ぼしている要因を実証的に検討する研究が行われるようになってきている(Anderson,Hetherington,Reiss and Howe,1994,眞榮城・前川・則定・酒井・上長・梅崎・田仲・酒井,2013)。しかしながら,子どものコンピテンスの発達に影響を及ぼす親の養育態度について「きょうだい環境」に注目して取り組んでいる研究は未だに少ない。そこで本研究では,子どものコンピテンスの発達に影響を及ぼす「きょうだい環境」の中でも,特に,きょうだいそれぞれに向けられる親の養育態度として,「しつけ(ルール説明)」「放任(子どもの自由にさせる)」「体罰(手を挙げる)」に焦点を当て,子どものコンピテンスの発達との関連について検討することとした。
【方法】調査対象者および調査時期:子ども期の社会性の発達に関する縦断研究プロジェクト(酒井ら,2012)に登録されている被験者の内,調査対象児(以下TCと表記)がWave1(以下W1と表記):3歳時点とWave2(以下W2と表記):4歳時点の2時点の調査に参加した184家庭[TC:男児88名・女児96名,TCより年長のきょうだい(以下Sibと表記):男児39名・女児24名,平均年齢5.94歳(SD=1.36),母親:平均年齢35.66歳(SD=4.37)]を本研究の分析対象とした。調査時期は2011年12月~2014年3月であった。
調査方法:対象児の年齢に合わせて質問紙調査票を郵送し回答を求める形式で実施した。TCに年長のきょうだいが居る場合にはきょうだいに関する質問紙も同時に郵送し回答を求めた。
調査内容:①子どものコンピテンス:Harter&Pike(1984)の日本版「自己有能感と社会的受容感測定尺度(親評定用)」(眞榮城,2011)を用い,子どものコンピテンス(12 項目)について測定した。評定方法は「あてはまる」から「あてはまらない」までの4 件法であった。②親の養育態度:親のしつけ(ルールなどについて説明する態度)・放任・体罰について測定可能な尺度:Harsh, Firm and Permissive Parenting(Shumow,Vandell,Posner,1998)10項目を翻訳して使用した。評定方法は「全く違う」から「全くそのとおりだ」までの4件法であった。
【結果と考察】分析にはSPSS22.0を用いた。
①コンピテンスの発達的変化について検討するためW1とW2の双方に回答した男児80名・女児93名を対象とし,対応のあるt検定を行った。その結果,男女ともにW1(3歳時点)よりもW2(4歳時点)においてコンピテンスが高くなっていることが確認された(Table1参照)。つまり、この時期のコンピテンスの発達には年齢要因(実際にできることが増える等の要因)が大きくかかわっていることが確認された結果であると考えられる。
②コンピテンスと親の養育態度との関連についてTC・Sib別にW1/W2における相関分析を行った結果,TC・Sibどちらも「しつけ」とコンピテンスとの間に有意な正の相関が認められた(Table2参照)。次に,親の「しつけ」がコンピテンスの発達に及ぼす影響について「きょうだい環境」を考慮した偏相関分析を行った。結果,TCではW2「コンピテンス」とW2「しつけ」,SibではW2「コンピテンス」とTC・SibのW1/W2「しつけ」の間に正の相関が認められた(Table3参照)。W1/W2の親からTCへの「しつけ」がW2のSib「コンピテンス」に影響を及ぼしていたことは,親の養育態度がきょうだいそれぞれに対して一貫しており公平性が保たれていることが,子どものコンピテンスを高める可能性を実証した結果であると考えられる。
【方法】調査対象者および調査時期:子ども期の社会性の発達に関する縦断研究プロジェクト(酒井ら,2012)に登録されている被験者の内,調査対象児(以下TCと表記)がWave1(以下W1と表記):3歳時点とWave2(以下W2と表記):4歳時点の2時点の調査に参加した184家庭[TC:男児88名・女児96名,TCより年長のきょうだい(以下Sibと表記):男児39名・女児24名,平均年齢5.94歳(SD=1.36),母親:平均年齢35.66歳(SD=4.37)]を本研究の分析対象とした。調査時期は2011年12月~2014年3月であった。
調査方法:対象児の年齢に合わせて質問紙調査票を郵送し回答を求める形式で実施した。TCに年長のきょうだいが居る場合にはきょうだいに関する質問紙も同時に郵送し回答を求めた。
調査内容:①子どものコンピテンス:Harter&Pike(1984)の日本版「自己有能感と社会的受容感測定尺度(親評定用)」(眞榮城,2011)を用い,子どものコンピテンス(12 項目)について測定した。評定方法は「あてはまる」から「あてはまらない」までの4 件法であった。②親の養育態度:親のしつけ(ルールなどについて説明する態度)・放任・体罰について測定可能な尺度:Harsh, Firm and Permissive Parenting(Shumow,Vandell,Posner,1998)10項目を翻訳して使用した。評定方法は「全く違う」から「全くそのとおりだ」までの4件法であった。
【結果と考察】分析にはSPSS22.0を用いた。
①コンピテンスの発達的変化について検討するためW1とW2の双方に回答した男児80名・女児93名を対象とし,対応のあるt検定を行った。その結果,男女ともにW1(3歳時点)よりもW2(4歳時点)においてコンピテンスが高くなっていることが確認された(Table1参照)。つまり、この時期のコンピテンスの発達には年齢要因(実際にできることが増える等の要因)が大きくかかわっていることが確認された結果であると考えられる。
②コンピテンスと親の養育態度との関連についてTC・Sib別にW1/W2における相関分析を行った結果,TC・Sibどちらも「しつけ」とコンピテンスとの間に有意な正の相関が認められた(Table2参照)。次に,親の「しつけ」がコンピテンスの発達に及ぼす影響について「きょうだい環境」を考慮した偏相関分析を行った。結果,TCではW2「コンピテンス」とW2「しつけ」,SibではW2「コンピテンス」とTC・SibのW1/W2「しつけ」の間に正の相関が認められた(Table3参照)。W1/W2の親からTCへの「しつけ」がW2のSib「コンピテンス」に影響を及ぼしていたことは,親の養育態度がきょうだいそれぞれに対して一貫しており公平性が保たれていることが,子どものコンピテンスを高める可能性を実証した結果であると考えられる。