The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PD

(501)

Sat. Nov 8, 2014 10:00 AM - 12:00 PM 501 (5階)

[PD072] 子ども期の社会性の発達に関する縦断研究プロジェクト(7)

子どもはいかにして習い事に出会いコンピテンスを育むのか

梅崎高行1, 眞榮城和美2, 前川浩子3, 則定百合子4, 上長然5, 田仲由佳6, 酒井彩子7, 酒井厚8 (1.甲南女子大学, 2.清泉女学院大学, 3.金沢学院大学, 4.和歌山大学, 5.佐賀大学, 6.神戸医療福祉大学, 7.お茶の水女子大学大学院, 8.山梨大学)

Keywords:就学前児, 養育態度, 学校適応

問題と目的 家庭や学校と並び,子ども期の社会性を育む環境として,習い事や部活といった放課後の活動が挙げられる。こうした活動は,子どものコンピテンスを育むのみならず,学校からのドロップアウトを抑制する要因としても機能している(Mahoney, & Robert, 1997)。幼少期の習い事は,就学期以降にこうした活動へ参入していくに当たり,心身両面での準備をもたらす経験と考えられよう。ところが先行研究では,就学期以降の放課後の活動を基礎づけるような,就学前児を対象とした研究が見当たらない。幼少期の習い事は,保育所・幼稚園などの通園施設に比べ,明白な成功・失敗体験や,異質な友人との出会いも予想される。対象児の発達を考慮しても,適切な大人の介入があって初めて,発達にポジティブな影響をもたらす経験へと代えていけるだろう。こうしたかかわりは,大人によるあまりに早期かつ過度の活動への従事がもたらす弊害の観点からも議論の余地がある。そこで本研究では,習い事が就学前児のコンピテンスを高め,就学期への移行をスムースにすることを通して,社会性の発達を育むという仮説に立つ。親の養育態度や,習い事における子どもの経験等との関連を探る(Anderson, Funk, Elliott, & Smith, 2014; 佐々木, 2009)。
方法 対象 「子ども期の社会性の発達に関する縦断研究プロジェクト(PEERS)」に登録している調査対象者のうち,子どもが3歳と4歳の二時点で調査への協力を得た184家庭を分析の対象とした。 質問紙調査内容 (1)Harter, & Pike (1984)の日本版「自己有能感と社会的受容感測定尺度(親評定用)」(眞榮城,2011)を用い,子どものコンピテンス(12項目)を測定した。(2)Parental Bonding Instrument (Parker, 1979)を元に作成した親回答版(酒井他,2003)を用い,養育態度(5項目)を測定した。他に,習い事への取り組み(3項目),親や講師による評価(2項目)を測定した。
結果と考察 4歳時点で対象者が最も長く続けている(いた)習い事(上位3項目)は,スイミング24人,英会話10人,ピアノ・バイオリンなどの楽器8人であった。習い事開始の平均月齢は38.85(SD=11.02)ヶ月であり(Table 1),「始めた理由」は,本人の意思28.2%,親の勧め57.6%, その他14.1%であった(Table 2)。「辞めた理由」とともに3歳時からの変化を参照すると,親の都合や判断から次第に本人の意思へと決定の主体が移っている。一方で「取り組み」得点は「始めた理由」に関わらず得点の高さ(二時点平均4.35/最大5点)を示しており,動機づけ研究(自己決定とコンピテンスの関係)の観点からも興味深い。

なお,習い事がコンピテンスを育むという仮説の検証について,本項では,対象児の従事期間(平均13.95ヶ月)も考慮し今後の検討を待ちたい。少なくとも養育態度と評価(3歳:r=0.29, p<.05),評価と取り組み(4歳:r=0.32, p<.05)などの相関は,これら関連を示していると言えよう(Table 1)。この点は,被「評価」(スケール中の1項目である「褒め」)経験のある4歳児で,取り組み得点が有意に高いことからも示唆される(Table 3)。