[PD076] 児童間の葛藤状況での話し合いにおけるネガティブ感情を含む意見表明
5年生グループ及び2年生ペアのやりとりに着目して
Keywords:葛藤状況, ネガティブ感情, 児童
【問題と目的】
学童期において他者と良好な関係を築き,円滑なコミュニケーションを行うことは重要な発達課題であり,教育現場でも,年齢段階に応じた人間関係づくりが重要視されている(土田,2006,等)。一方,学童期は感情理解が深まる中で,ネガティブな感情を伴う葛藤状況も生じる。特に話し合いの場面では相手の立場を考慮に入れ,良好な関係を維持する形で,それらの感情を表出し,かつ問題解決に向けて話し合いを進めていくことが求められる。本研究では,小学校5年及び2年学級での特別活動の授業において葛藤状況が生じていたと考えられるグループ・ペアの話し合いに着目し,ネガティブ感情を含む意見をどのように表明し,やりとりがなされていくかについて検討を行った。
【方法】
研究協力者:千葉市のC小学校の5年生・2年生の1クラス(5年生39名,2年生40名)
観察内容と分析:本研究は,2010年6月から7月まで行われた特別活動の授業(1単位時間20分,16時間扱い(2年生),8時間扱い(5年生))(テーマ:「みんなで遊ぼう」(2年生),「1年生と遊ぼう」(5年生))について研究対象とした。各学級で数回の遊びと話し合いを経た後の,2年生はペア,5年生は4名のグループの話し合いで,特にやりとりが円滑に進まず,話し合い後のコミュニケーション調査において自己・他者評価のずれが大きかった各1グループ・ペアのやりとりを葛藤状況が招じたやりとりと捉え,分析を行った。
【結果と考察】
いずれの事例も,児童間で意見の相違や対立がみられる中のやりとりであったが,2年生ペアの話し合い(Table1)では,最終的には相手への批判となる中で(③),話し合いは中断となり,その後は各自が別々にシートに書き込むことが中心となってしまった。そうした葛藤を含む話し合いではあったものの,級友への配慮を含んだ意見(①)や,相互間のやりとりの中で,A児に譲歩するような発言(②)等,話し合いの内容に関わる建設的な意見や,相互間の葛藤を含んだやりとりを調整するような発言がみられる様子も窺えたことは,興味深い点といえた。一方,5年生グループの話し合い(Table2)では,意見の対立等による葛藤状況が生じていたものの,互いを直接的に非難するようなやりとりはみられず,E児の提案に対し,異なる角度から1年生に配慮した意見をG児,H児が述べるなど(①~③),「1年生とよりよく遊ぶ」というテーマに焦点化する中で,互いの意見を表明し,話し合いを進める様子が窺えた。
これらの事例からは,こうした葛藤状況での話し合いにおいて,ネガティブ感情を含んだ意見を良好な形で表明し,やりとりを調整的に行うことが,2年生は過渡期にあるが,高学年期の5年生ではそれらが可能になってきていることが窺えるものといえる。これらは,筆者らの6年生の検討(2012,2013)で,葛藤を伴う話し合いが合意的に展開していく様相がみられたこととも一部重なるところであった。今後は他の多くの事例も含めさらに検討を行う必要がある。
学童期において他者と良好な関係を築き,円滑なコミュニケーションを行うことは重要な発達課題であり,教育現場でも,年齢段階に応じた人間関係づくりが重要視されている(土田,2006,等)。一方,学童期は感情理解が深まる中で,ネガティブな感情を伴う葛藤状況も生じる。特に話し合いの場面では相手の立場を考慮に入れ,良好な関係を維持する形で,それらの感情を表出し,かつ問題解決に向けて話し合いを進めていくことが求められる。本研究では,小学校5年及び2年学級での特別活動の授業において葛藤状況が生じていたと考えられるグループ・ペアの話し合いに着目し,ネガティブ感情を含む意見をどのように表明し,やりとりがなされていくかについて検討を行った。
【方法】
研究協力者:千葉市のC小学校の5年生・2年生の1クラス(5年生39名,2年生40名)
観察内容と分析:本研究は,2010年6月から7月まで行われた特別活動の授業(1単位時間20分,16時間扱い(2年生),8時間扱い(5年生))(テーマ:「みんなで遊ぼう」(2年生),「1年生と遊ぼう」(5年生))について研究対象とした。各学級で数回の遊びと話し合いを経た後の,2年生はペア,5年生は4名のグループの話し合いで,特にやりとりが円滑に進まず,話し合い後のコミュニケーション調査において自己・他者評価のずれが大きかった各1グループ・ペアのやりとりを葛藤状況が招じたやりとりと捉え,分析を行った。
【結果と考察】
いずれの事例も,児童間で意見の相違や対立がみられる中のやりとりであったが,2年生ペアの話し合い(Table1)では,最終的には相手への批判となる中で(③),話し合いは中断となり,その後は各自が別々にシートに書き込むことが中心となってしまった。そうした葛藤を含む話し合いではあったものの,級友への配慮を含んだ意見(①)や,相互間のやりとりの中で,A児に譲歩するような発言(②)等,話し合いの内容に関わる建設的な意見や,相互間の葛藤を含んだやりとりを調整するような発言がみられる様子も窺えたことは,興味深い点といえた。一方,5年生グループの話し合い(Table2)では,意見の対立等による葛藤状況が生じていたものの,互いを直接的に非難するようなやりとりはみられず,E児の提案に対し,異なる角度から1年生に配慮した意見をG児,H児が述べるなど(①~③),「1年生とよりよく遊ぶ」というテーマに焦点化する中で,互いの意見を表明し,話し合いを進める様子が窺えた。
これらの事例からは,こうした葛藤状況での話し合いにおいて,ネガティブ感情を含んだ意見を良好な形で表明し,やりとりを調整的に行うことが,2年生は過渡期にあるが,高学年期の5年生ではそれらが可能になってきていることが窺えるものといえる。これらは,筆者らの6年生の検討(2012,2013)で,葛藤を伴う話し合いが合意的に展開していく様相がみられたこととも一部重なるところであった。今後は他の多くの事例も含めさらに検討を行う必要がある。