The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PD

(501)

Sat. Nov 8, 2014 10:00 AM - 12:00 PM 501 (5階)

[PD077] 児童期の友人関係における受容性に関する研究

友人グループの排他性・他者との関わり経験・性格特性との関連

松本恵美 (東北大学大学院)

Keywords:友人関係, 排他性, 受容性

【問題と目的】 一般に,児童期になると,特定の友人に対する親密性が高まる一方,仲間以外の児童に対する排他性も高まると考えられる。そのような点から,本研究では,異質な特徴を持った他者であっても受け入れようとする「受容性」をとりあげ,所属している「友人グループの排他性」,「自分と異なる様々な特徴を持つ他者との関わりの経験」,「性格特性」との関連を検討した。
【方法】 1.対象:小学校4年生149名(男子76名,女子73名)と小学校6年生193名(男子94名,女子99名)。2.実施時期: 2013年10月~11月に実施した。3.質問紙:質問紙は以下の質問群から構成された。①個人の受容性に関する18項目,②友人グループの排他性に関する6項目,③他者との関わり経験に関する18項目,④個人の性格に関する15項目。このうち,①,②,④は「そう思う(1)」から「そう思わない(5)」までの5段階,③は「よくある(1)」から「全然ない(4)」までの4段階で評定するように求めた。
【結果】 1.受容性について:学年と性別を要因とする2(4年生・5年生)×2(男子・女子)の2要因分散分析を行った。結果,性別の主効果のみが示された(F(1,338)=22.95, p<.01)。すなわち,女子児童(3.69)のほうが男子児童(3.28)よりも受容性得点が有意に高いことが明らかとなった。
2.受容性と他者との関わりの経験について:図1には他者との関わり経験の高群,低群の受容性の平均得点を示した。結果,関わり経験高群の方が,低群より受容性得点が有意に高かった(t(339)=‐4.84, p<.01)。すなわち,様々な特徴を持つ他者と関わったことのある児童の方が,相手を受け入れる気持ちが強いことが示された。
3.受容性と性格特性・友人グループの排他性について:①受容性について,外向性と友人グループの排他性を要因とした,2(外向性の高低)×2(グループの排他性の高低)の二要因分散分析を行った。結果,外向性(F(1,228)=12.59,p < .01)とグループの排他性(F(1,228)=17.18,p< .01)の主効果が有意であった。②協調性と友人グループの排他性を要因とした2(協調性の高低)×2(グループの排他性の高低)の二要因分散分析の結果,協調性(F(1,228)=26.08,p <.01)とグループの排他性(F(1,228)=16.41 p < 01)の主効果が有意であった。
【考察】 本調査によって,所属している友人グループの排他性,性格特性,他者との関わりの経験が,児童の「受容性」に影響を与えていることが明らかとなった。結果から,普段の生活において自分と異なる特徴を持つ他者と関わる機会の多い児童は,他児の否定的な特徴を受け入れる気持ちが高くなることが示唆された。また,性格特性として外向性,協調性が高い生徒は相手を受け入れる気持ちが高いことが示された。しかし,排他性の高いグループに所属すると,外向性や協調性が高い生徒でも,受容性が抑制され,低くなることが示された。これにより,個人としては相手を受け入れる気持ちが高い児童でも,排他性の高い友人グループに所属すると,グループからの制裁や拒否の不安から,受容性が低くなってしまうのではないかと考えられる。