The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PD

(501)

Sat. Nov 8, 2014 10:00 AM - 12:00 PM 501 (5階)

[PD096] 生涯発達におけるクオリティ・オブ・ライフと精神的健康(6)

保育の質を測定する

川島亜紀子1, 菅原ますみ2, 松本聡子3 (1.東京福祉大学, 2.お茶の水女子大学大学院, 3.お茶の水女子大学)

Keywords:生涯発達, クオリティ・オブ・ライフ, 保育

問題と目的
深刻な待機児童問題がメディア等によって指摘されている。就職を継続したいのに子どもの預け先がなく断念するケースや,預け先を確保するために妊娠中から保育園探しに奔走する「保活」といった現象も指摘されている(AERA, 2010)。これに伴い,政府は保育所を毎年度増設,利用人数は過去最高となった(厚生労働省,2013)。しかし,量的な拡充が政策としてなされることで,「質」についての保証が問題視されている(林,2014)。保育の「質」の問題は,子どもの健やかな発達に関連するのみならず,結果として子どもを含めた家族のQOLに関連する可能性があるが,保育の「質」とは何かということは明確に定義されていない。
米国では高い母親の就業率を背景に国立小児保健・人間発達研究所(以下NICHD ECCRN)が包括的な長期縦断調査を開始,早期の家庭外保育と子どもの発達との関連を検討している(NICHD ECCRN, 2001; 日本子ども学会, 2009)。保育のプロセス(保育士-子ども相互作用)について量的・質的に検討するためにObservational Record of the Caregiving Environment(以下,ORCE, NICHD, ECCRN, 1996, 2000)が開発され使用されている。本研究では,日本版ORCEの信頼性を検討し,量的評定と質的評定との関連から妥当性を検討する。

方法
対象 2002年10月1日から2003年3月31日までに首都圏で誕生した0歳児をもつ家族に対し,3ヶ月健診時に保健所を通じて調査への参加を呼びかけた。住所記載に応諾した918名の母親を対象に郵送による質問紙調査を実施し,703世帯から回答を得た。このうち,保育所を利用中で観察調査に応諾した家庭について(男児17名,女児24名),保育所での観察調査を実施した(41園)。
測定内容 NICHDが開発したORCE(NICHD ECCRN, 1996)の全尺度,実施要項,トレーニングマニュアルを日本語訳,再翻訳を行い,原作者 (Dr. Friedman)の校閲を経て尺度の日本語版を確定した。44分間を1ターンとし,保育者の対象児に対する関わりを1)量的(単位時間内に出現する養育者の行動の頻度),2)質的(関わりの質に関する観察者の総合的評価)の2側面から測定した(Table 1)。訓練用録画映像を使用した評定者間の一致率は平均88%(33%~100%)であった。
結果と考察
2週間以内に実施した2回の観察調査の量的・質的データの相関分析を行ったところ,一部粗頻度の低い項目を除き,概ね十分な相関関係が確認された(Table 1)。日本版ORCEについて一定の信頼性と妥当性が評価されたと判断される。結果の詳細は発表時に報告する。