日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PE

(5階ラウンジ)

2014年11月8日(土) 13:30 〜 15:30 5階ラウンジ (5階)

[PE045] 実用的価値認知への介入が授業に対する興味に及ぼす影響

中谷素之1, 梅本貴豊2, 解良優基2, 中西満悠1 (1.名古屋大学大学院, 2.名古屋大学)

キーワード:実用的価値, 興味

『何のために勉強するのかわからない』―このような学習の意味への問いは,現代の学生にとって積極的な学習の取り組みへの障壁となっている可能性がある。中高生を対象としたBenesse教育研究開発センター(2009)の調査でも,学習の意味に疑問をもつ生徒は5割を超え,広く一般に共有される教育的問題であると考えられる。
このような学習の意味づけに関する教育心理学的概念の主なものに,『課題価値(Task Value)』があげられる。特に実用的価値は,近年注目を集める重要な価値側面であり,『生活に役立ちそうだ』と認知する内容に対して,関心が高まり動機づけが促されることが示されてきた。例えばHulleman & Harackiewicz(2009)では,高校生を対象に,理科学習の実用的価値を促すことで,興味や成績が高まるという結果が見出されている。しかしこれまでわが国で課題価値に介入した研究は田中(2013)などわずかであり,さらに今日学力低下が指摘される大学生を対象にした研究はない。そこで本研究では、大学生の心理学授業の実用的価値への介入による興味や成績への効果を検討する。
【 方 法 】
対象 中部地方の大規模私立大学に在籍する2年生376名(男子149名・女子96名)。
科目 教職課程『発達と学習』に該当する科目であり,70~80名程度のクラスごとに実施した。授業者は第一,第二筆者であった。
手続 実用的価値介入群では,半期の全15回の授業のうち,前半・中盤・後半の3時点において,学習内容について,『“子どもの学びと育ちの理解に役立ちそうだ”と思ったテーマについて,具体的に説明してください。』という教示とともに,学習した内容の日付およびテーマを示したシートを配布し,各自で役に立つと思う内容について10分間考え,記述させた。一方対照群では,同じ3回の授業の学習について,内容を簡潔に要約するよう記入を求めた。従属変数は、授業内容に関する興味の6項目(α=.87)が,事前,2回目の介入時点,および事後に測定された。また,全15回の授業の後に,授業内容に関する30問から構成される30分間のテストを実施した。
【 結果と考察 】
実用的価値教授介入群と対照群のそれぞれにおいて,プレ,ミドル,ポストの3時点における興味の変化について,群×時期の2要因分散分析を行った。その結果,群×時期の交互作用(F(2, 375)=4.13, p <.05)および群の主効果が有意(F(1, 375)=17.13, p <.001)であった(FIGURE 1)。また,授業終了後のテスト成績について,介入群ではM=47.38, SD=3.63,対照群ではM=46.29, SD=4.45であり,t検定を行った結果,介入群のほうが対照群に比べて得点が有意に高いことが示された(t(160)=1.98; p<.05)。実用的価値について考えさせる介入を行うことによって,課題成績も促進される可能性があることが示された。
FIGURE 1 実用的価値介入による興味得点の変化