The 56th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PE

(501)

Sat. Nov 8, 2014 1:30 PM - 3:30 PM 501 (5階)

[PE088] 高校生のLINE使用と,いじめ,友人関係,心理面との関連

仲がよい3人の友人とのコミュニケーションに着目して

若本純子 (鹿児島純心女子大学)

Keywords:LINE, いじめ, 友人関係

問題と目的
現在の児童生徒にはLINEは必要不可欠なコミュニケーションツールとなっている。それと呼応するようにLINEをめぐるトラブルが頻発している。LINEをめぐるトラブルは何が要因となっているのであろうか。また,トラブルを防ぐ支援において我々は何に着目すればよいのであろうか。
本研究では,前思春期の喪失によって常に親密な友人と密着し続けようとする傾向があり,以前と比較して友人関係が未熟になったと言われる(e.g., 保坂, 2010)高校生を対象に,仲がよい3人の友人とのLINE使用を含むコミュニケーションのあり方が,いじめ経験,友人関係,心理面とどのような関連があるのかを検討する。
方 法
2013年7月に,A公立高校において質問紙調査を実施した。1,2年生を対象に行われた調査で,374名(男子141名,女子224名,不明9名)の回答を得た。
調査内容 仲がよい友人3人を想定してもらい,1)仲のよさの順位(複数同位可),2)対面でのコミュニケーション頻度,3)LINEでのコミュニケーション頻度を尋ねた。また,いじめ経験に関して,暴力,言葉・態度,LINEでのいじめについて加害,被害,目撃別にある・ないで回答を求めた。さらに,友人関係をめぐる心理面を測定するために,心理的距離と同調性(石本ら, 2009),自尊感情(伊藤・若本, 2010),アンビバレント(詫摩・戸田, 1988)に対して回答を求めた(4段階評定)。
結 果
高頻度のLINE使用と,いじめ経験,心理面との関連 まず,高頻度にLINEを使用することといじめ等との関連を検討した。3人の友人全員と「1日に何度もLINEする」と回答した者(N=30)とそうでない者(N=341)との間でいじめ経験と心理面を比較したところ,有意差は見出されなかった。
LINE・対面双方のコミュニケーションの様相といじめ経験,心理面との関連 続いて,友人3人とのコミュニケーションのあり方に関して,中央値を境にLINEコミュニケーション頻度(高低)×対面でのコミュニケーション頻度(高低)の4群を設定し,群によっていじめ経験と心理面に違いがあるかを検討したところ,2つの有意差が見出された。ひとつはLINEいじめの加害経験において,対面・低×LINE・高群が他3群より有意に高い値を示した(F(3,342)=4.74, p<.01)。もうひとつは同調性において,対面・高×LINE・高群が対面・低×LINE・低群より有意に高かった(F(3,342)=2.91, p<.05)。表1に2変数の記述統計量を示す。

(表1挿入)

3人の順位づけの仕方と,いじめ経験,心理面との関連 最後に,3人の友人に対する順位をすべて1位とする者は3人との友人関係がより密であろうと仮定し,3人全員を1位とした者(N=52)とそうでない者(N=319)との比較を行った。その結果,3人全員を1位とした者はそうでない者と比較して,心理的距離が有意に近く(t(369)=2.18, p<.05;全員1位M3.54,SD.43,それ以外M3.38,SD.52),アンビバレントが有意に低かった(t(368)=2.44, p<.05;全員1位M2.38,SD.77,それ以外M2.64,SD.68)。なお,LINE使用の頻度には両者による有意差は見られなかった。
考 察
本研究からは,高校生では高頻度のLINE使用はいじめ経験や心理状態に直接的にはつながらず,仲のよさとLINE使用の頻度も関連が弱いと考えられる。また友人3人全員が等しく最も仲がよいとする群は,対人関係をめぐる心理状態が良好であることが示唆された。一方で,仲のよい友人とのコミュニケーションが対面で少なくLINEで高い群が,他のどの群よりもLINEいじめの加害者となりやすいことが見出された。この群は,仲のよい友人が他校にいるとも考えられるが,コミュニケーションの手段がLINEに偏っている可能性も想定される。つまり,高頻度のLINE使用が単独で問題なのではなく,そこに対面でのコミュニケーションの低さが加わった場合,LINEトラブルへの注意が必要になると言えるだろう。