[PF005] チャレンジスクールにおける学力向上戦略の検証(2)
達成感・自己効力感・自発学習意欲を高め学力は伸びたか
Keywords:不登校, 学習意欲, 学力向上
1)問題
稔ヶ丘高校は、不登校等からの立ち直りを支援する都立の「チャレンジスクール」(三部制定時制高校)の5校目として、2007年4月に開校した。学習スキルや人間関係スキルを教える学校設定科目「コーピング」の実践で知られる(山崎2008)。
稔ヶ丘高校では、2010年から都の「学力向上開拓推進校」として、授業の中で、①「やったらできた」という小さな達成感を味わわせて、②「やればできる」という自己効力感を育て、③「自発学習」意欲を引き出すという「学力向上戦略」を掲げて全校で取り組んだ。その3年目に、これらの目標に対応した質問紙調査を1年次生に年3回実施し、ほぼ全教科で肯定的回答が有意に増加した(山崎2013)。
今回は、これらの実感の変化が、実際の学力向上につながっているのかどうかを検討する。
2)方法
稔ヶ丘高校2013年度1年次生200名に4月と7月の2回、国語、数学、英語の授業について、次の3項目の質問紙で四件法回答を求め、これらの回答の変化を比較した。4月は該当教科の過去の授業経験について回答するよう指示した。
〈質問項目〉
①この授業では、「やったらできた」と実感できる
②この授業では、「やればできる」と自信がつく
③この授業では、自発的に学習する気持ちになる
また、4月と9月に実施したベネッセの「基礎力診断テスト」(国語、数学、英語)の全国偏差値を学力指標として、平均値の変化を比較した。
3)結果
3教科の質問紙調査、基礎力診断テスト各2回のいずれかに欠損、回答不備のある者を除外して、96名を分析対象とした。
Table1に学力偏差値の変化と検定結果を示す。
いずれの教科の偏差値も有意に上昇した。また、学力向上3項目の四件法回答は、最大値4の数量データとし、平均を比較したところ、3科目とも有意に向上した。しかし、回答の変化と学力偏差値の変化との間に、相関は見られなかった。
そこで、学力偏差値の上昇・下降と、自発学習意欲の上昇・下降をTable2のように整理した。
4)考察
4ケ月足らずの学習で、学力向上3項目の実感は肯定的に変化し、学力も伸びている。しかし、その間に相関が見られないのはなぜか
成績上昇した生徒のうち、自発学習意欲の回答も上昇している生徒は、国語28人(29%)、数学53人(55%)、英語30人(31%)だが、回答が横ばい(±0)の生徒を加えると、国語49人(51%)、数学82人(85%)、英語71人(74%)にまで上昇する。とくに、数学・英語において自発学習意欲の自覚に変化はなくとも、成績が伸びている生徒は多い。さらに回答の内訳をみると、±0の生徒の7,8割は、4月の時点で肯定的な回答をしており、四件法の尺度では、変化を拾いきれていない可能性がある。
以上の結果は、稔ヶ丘高校の英数国の授業が、生徒に学力向上戦略3項目の実感を高め、学力の向上をもたらすという仮説を支持する。
ただ、国語では成績の下がるグループが生じており、課題が残る。また、山崎(2013)ではこのあと12月の第3回でも3項目で肯定的回答の増加が確認されているが、9月以降の学力の伸びも含めて、さらに検証が必要である。
稔ヶ丘高校は、不登校等からの立ち直りを支援する都立の「チャレンジスクール」(三部制定時制高校)の5校目として、2007年4月に開校した。学習スキルや人間関係スキルを教える学校設定科目「コーピング」の実践で知られる(山崎2008)。
稔ヶ丘高校では、2010年から都の「学力向上開拓推進校」として、授業の中で、①「やったらできた」という小さな達成感を味わわせて、②「やればできる」という自己効力感を育て、③「自発学習」意欲を引き出すという「学力向上戦略」を掲げて全校で取り組んだ。その3年目に、これらの目標に対応した質問紙調査を1年次生に年3回実施し、ほぼ全教科で肯定的回答が有意に増加した(山崎2013)。
今回は、これらの実感の変化が、実際の学力向上につながっているのかどうかを検討する。
2)方法
稔ヶ丘高校2013年度1年次生200名に4月と7月の2回、国語、数学、英語の授業について、次の3項目の質問紙で四件法回答を求め、これらの回答の変化を比較した。4月は該当教科の過去の授業経験について回答するよう指示した。
〈質問項目〉
①この授業では、「やったらできた」と実感できる
②この授業では、「やればできる」と自信がつく
③この授業では、自発的に学習する気持ちになる
また、4月と9月に実施したベネッセの「基礎力診断テスト」(国語、数学、英語)の全国偏差値を学力指標として、平均値の変化を比較した。
3)結果
3教科の質問紙調査、基礎力診断テスト各2回のいずれかに欠損、回答不備のある者を除外して、96名を分析対象とした。
Table1に学力偏差値の変化と検定結果を示す。
いずれの教科の偏差値も有意に上昇した。また、学力向上3項目の四件法回答は、最大値4の数量データとし、平均を比較したところ、3科目とも有意に向上した。しかし、回答の変化と学力偏差値の変化との間に、相関は見られなかった。
そこで、学力偏差値の上昇・下降と、自発学習意欲の上昇・下降をTable2のように整理した。
4)考察
4ケ月足らずの学習で、学力向上3項目の実感は肯定的に変化し、学力も伸びている。しかし、その間に相関が見られないのはなぜか
成績上昇した生徒のうち、自発学習意欲の回答も上昇している生徒は、国語28人(29%)、数学53人(55%)、英語30人(31%)だが、回答が横ばい(±0)の生徒を加えると、国語49人(51%)、数学82人(85%)、英語71人(74%)にまで上昇する。とくに、数学・英語において自発学習意欲の自覚に変化はなくとも、成績が伸びている生徒は多い。さらに回答の内訳をみると、±0の生徒の7,8割は、4月の時点で肯定的な回答をしており、四件法の尺度では、変化を拾いきれていない可能性がある。
以上の結果は、稔ヶ丘高校の英数国の授業が、生徒に学力向上戦略3項目の実感を高め、学力の向上をもたらすという仮説を支持する。
ただ、国語では成績の下がるグループが生じており、課題が残る。また、山崎(2013)ではこのあと12月の第3回でも3項目で肯定的回答の増加が確認されているが、9月以降の学力の伸びも含めて、さらに検証が必要である。