[PF040] 状況的興味の維持に影響する要因の検討
小学生の課外活動の文脈において
キーワード:興味, 課外活動, 動機づけ
問題と目的
Hidi & Renninger(2006)は,特定の対象に対する興味が,感情や認知過程の一時的変化という状況的興味の喚起から,ある内容に繰り返し取り組もうとするより安定した個人的興味へ発達するという興味発達の四局面モデル(The Four-Phase Model of Interest Development)を提唱した。このモデルを支持した実証的研究は,学業文脈においていくつか見られる(Lipstrin & Renninger,2007;Nolen,2007)。しかし,学校外ワークショップの研究においては,興味の発達の異なる軌跡が確認されている(Renninger & Riley,2013)。したがって,興味の発達は,様々な文脈において検討する必要があるといえる。
そこで,本研究では,課外活動という文脈において,小学生の活動参加前の個人的興味,活動に従事する志向性(努力志向または達成志向),活動で得た有能感および状況的興味の喚起が活動に対する興味の維持に及ぼす影響について検討することを目的とする。
方 法
調査協力者 千葉県内A小学校および岐阜県内B小学校に通う3年生~6年生86名(男子42名,女子44名)を調査対象とした。内訳は,3年生が26名,4年生が35名,5年生が16名,6年生が9名であった。
調査時期および手続き 2013年7月に千葉県内A小学校,岐阜県内B小学校それぞれにおいて,なわとびあるいはかけっこの課外活動(スキルアップさせるためにアスリートによる指導が活動内容の中に含まれた)を行い,活動の前後で質問紙を実施した。
質問紙 活動前は,“個人的興味”(3項目),“活動従事の志向性”(努力志向1項目,達成志向1項目)を尋ねた。活動後は“状況的興味の喚起”(3項目),“有能感”(1項目)“,“自発的取り組み志向”(1項目)を尋ねた。回答は“まったくそう思わない(1点)”から“とてもそう思う(4点)”までの4件法で求めた。
結 果
Figure1に示したモデルについて重回帰分析の繰り返し(ステップワイズ法)によるパス解析を行った。その結果,活動前の“個人的興味”“努力志向”から“状況的興味の喚起”へ(β=.27,p<.05;β=.28,p<.05),活動前の“達成志向”から“有能感”へ(β=.28,p<.05)正の影響がみられた。 また,“状況的興味の喚起”から“自発的取り組み志向”に(β=.79,p<.001)正の影響が見られた。
考 察
課外活動の文脈において,活動前の個人的興味が高い,また努力して活動に従事することが重要と思っている子どもほど,活動をより面白く感じる。一方,活動がうまくできることが自分にとって重要と思って活動に取り組む子どもほど,活動において有能感が得られると考えられる。また,本研究では,状況的興味の維持(自発的取り組み志向)が,活動で得られた有能感より,体験された楽しさによって大きく影響された。この結果より,興味発達の四局面モデル(Hidi & Renning,2006)における喚起された状況的興味の局面から,維持された状況的興味の局面へ発達する仮説が部分的に支持されたといえる。しかし,学業場面の先行研究において,自己概念が興味の発達に影響を及ぼすことが示されている。よって,文脈の違いが興味の発達過程に影響を及ぼす可能性が考えられる。この点について,今後詳細な検討が必要であろう。
Hidi & Renninger(2006)は,特定の対象に対する興味が,感情や認知過程の一時的変化という状況的興味の喚起から,ある内容に繰り返し取り組もうとするより安定した個人的興味へ発達するという興味発達の四局面モデル(The Four-Phase Model of Interest Development)を提唱した。このモデルを支持した実証的研究は,学業文脈においていくつか見られる(Lipstrin & Renninger,2007;Nolen,2007)。しかし,学校外ワークショップの研究においては,興味の発達の異なる軌跡が確認されている(Renninger & Riley,2013)。したがって,興味の発達は,様々な文脈において検討する必要があるといえる。
そこで,本研究では,課外活動という文脈において,小学生の活動参加前の個人的興味,活動に従事する志向性(努力志向または達成志向),活動で得た有能感および状況的興味の喚起が活動に対する興味の維持に及ぼす影響について検討することを目的とする。
方 法
調査協力者 千葉県内A小学校および岐阜県内B小学校に通う3年生~6年生86名(男子42名,女子44名)を調査対象とした。内訳は,3年生が26名,4年生が35名,5年生が16名,6年生が9名であった。
調査時期および手続き 2013年7月に千葉県内A小学校,岐阜県内B小学校それぞれにおいて,なわとびあるいはかけっこの課外活動(スキルアップさせるためにアスリートによる指導が活動内容の中に含まれた)を行い,活動の前後で質問紙を実施した。
質問紙 活動前は,“個人的興味”(3項目),“活動従事の志向性”(努力志向1項目,達成志向1項目)を尋ねた。活動後は“状況的興味の喚起”(3項目),“有能感”(1項目)“,“自発的取り組み志向”(1項目)を尋ねた。回答は“まったくそう思わない(1点)”から“とてもそう思う(4点)”までの4件法で求めた。
結 果
Figure1に示したモデルについて重回帰分析の繰り返し(ステップワイズ法)によるパス解析を行った。その結果,活動前の“個人的興味”“努力志向”から“状況的興味の喚起”へ(β=.27,p<.05;β=.28,p<.05),活動前の“達成志向”から“有能感”へ(β=.28,p<.05)正の影響がみられた。 また,“状況的興味の喚起”から“自発的取り組み志向”に(β=.79,p<.001)正の影響が見られた。
考 察
課外活動の文脈において,活動前の個人的興味が高い,また努力して活動に従事することが重要と思っている子どもほど,活動をより面白く感じる。一方,活動がうまくできることが自分にとって重要と思って活動に取り組む子どもほど,活動において有能感が得られると考えられる。また,本研究では,状況的興味の維持(自発的取り組み志向)が,活動で得られた有能感より,体験された楽しさによって大きく影響された。この結果より,興味発達の四局面モデル(Hidi & Renning,2006)における喚起された状況的興味の局面から,維持された状況的興味の局面へ発達する仮説が部分的に支持されたといえる。しかし,学業場面の先行研究において,自己概念が興味の発達に影響を及ぼすことが示されている。よって,文脈の違いが興味の発達過程に影響を及ぼす可能性が考えられる。この点について,今後詳細な検討が必要であろう。