[PF071] 多面的学校不適応予防チェックリストの作成の試み(1)
Keywords:いじめ
問題と目的
いじめ問題や暴力等の不適応問題においては,問題が発生した後の介入も重要であるが,予防的介入による問題の発生自体を防ぐことが求められる(松尾,2002)。George Varnava(2003)は,6つの観点(「連携」「価値」「組織」「環境」「カリキュラム」「トレーニング」)を元にいじめ,暴力予防のためのCheckpointsを開発した。これらは,学校,子ども,保護者に対し,多面的に実態把握を行うチェックリストである。本研究ではVarnava(2003)のCheckpointsを基に,日本版の多面的な学校不適応予防のチェックリストを作成することを目的とする。そこで研究(1)では,いじめ対策を中心にまとめ,学校現場の教職員への調査を踏まえ,日本における不適応予防の現状を明らかにする。
文部科学省(2012)は学校におけるいじめ対策として,アンケート調査による正確な実態把握と,その実態に合った取組を行うこと,教職員間や関係機関との連携,学校内での点検や校内研修を行うことを目指している。
方法
〈調査対象者〉
A県の小学校47名,中学校35名,特別支援学校1名,市教育委員会6名の生徒指導主事,計89名。
〈調査方法〉
以下の2項目について質問紙に回答を求めた。
1)いじめが生まれる学級とはどのような学級か
2)いじめが生まれない学級とはどのような学級か
〈分析方法〉
心理学を専攻している大学生1名,大学院生1名,報告者の計3名が,KJ法を行った。以上3名の協議によるカテゴリ化を行った。
結果
1)「いじめが生まれる学級とはどのような学級か」は「教師の力量」「子どもの能力」「環境」「連携」の4つの大カテゴリに分類された。また,2)「いじめが生まれない学級とはどのような学級か」では「教師の力量」「子どもの能力」「環境」の3つの大カテゴリに分類された。各大カテゴリには2~6つの小カテゴリが包含され,計12~14つの小カテゴリとなった。それぞれは独立するものではなく,小カテゴリは複数の大カテゴリに属する場合もあった。
考察
日本におけるいじめ対策は文部科学省をはじめとする各機関で行われている。しかし,予防的な取組においては課題も指摘されている(松尾,2002)通り,学校現場が求められている対策と現状では,少なからず異なる点があることが明らかとなった。いじめ対策推進法(文科省,2013)が制定された背景にもあるように,いじめ対策の徹底が急務である。研究(1)の結果を踏まえても,日本版不適応予防チェックリストの開発には意義があるだろう。今後は,学校不適応予防に関して理論的な枠組みを用いて検討する。
参考文献
松尾直博 2002 学校における暴力・いじめ防止プログラムの動向:学校・学級単位での取り組み 教育心理学研究,50,487-499
George Varnava 2003 Checkpoints for schools
文部科学省 2012 「いじめの問題に関する児童生徒の実態把握並びに教育委員会及び学校の取組状況に係る緊急調査」を踏まえた取組の徹底について
文部科学省 2013 いじめ防止対策推進法
いじめ問題や暴力等の不適応問題においては,問題が発生した後の介入も重要であるが,予防的介入による問題の発生自体を防ぐことが求められる(松尾,2002)。George Varnava(2003)は,6つの観点(「連携」「価値」「組織」「環境」「カリキュラム」「トレーニング」)を元にいじめ,暴力予防のためのCheckpointsを開発した。これらは,学校,子ども,保護者に対し,多面的に実態把握を行うチェックリストである。本研究ではVarnava(2003)のCheckpointsを基に,日本版の多面的な学校不適応予防のチェックリストを作成することを目的とする。そこで研究(1)では,いじめ対策を中心にまとめ,学校現場の教職員への調査を踏まえ,日本における不適応予防の現状を明らかにする。
文部科学省(2012)は学校におけるいじめ対策として,アンケート調査による正確な実態把握と,その実態に合った取組を行うこと,教職員間や関係機関との連携,学校内での点検や校内研修を行うことを目指している。
方法
〈調査対象者〉
A県の小学校47名,中学校35名,特別支援学校1名,市教育委員会6名の生徒指導主事,計89名。
〈調査方法〉
以下の2項目について質問紙に回答を求めた。
1)いじめが生まれる学級とはどのような学級か
2)いじめが生まれない学級とはどのような学級か
〈分析方法〉
心理学を専攻している大学生1名,大学院生1名,報告者の計3名が,KJ法を行った。以上3名の協議によるカテゴリ化を行った。
結果
1)「いじめが生まれる学級とはどのような学級か」は「教師の力量」「子どもの能力」「環境」「連携」の4つの大カテゴリに分類された。また,2)「いじめが生まれない学級とはどのような学級か」では「教師の力量」「子どもの能力」「環境」の3つの大カテゴリに分類された。各大カテゴリには2~6つの小カテゴリが包含され,計12~14つの小カテゴリとなった。それぞれは独立するものではなく,小カテゴリは複数の大カテゴリに属する場合もあった。
考察
日本におけるいじめ対策は文部科学省をはじめとする各機関で行われている。しかし,予防的な取組においては課題も指摘されている(松尾,2002)通り,学校現場が求められている対策と現状では,少なからず異なる点があることが明らかとなった。いじめ対策推進法(文科省,2013)が制定された背景にもあるように,いじめ対策の徹底が急務である。研究(1)の結果を踏まえても,日本版不適応予防チェックリストの開発には意義があるだろう。今後は,学校不適応予防に関して理論的な枠組みを用いて検討する。
参考文献
松尾直博 2002 学校における暴力・いじめ防止プログラムの動向:学校・学級単位での取り組み 教育心理学研究,50,487-499
George Varnava 2003 Checkpoints for schools
文部科学省 2012 「いじめの問題に関する児童生徒の実態把握並びに教育委員会及び学校の取組状況に係る緊急調査」を踏まえた取組の徹底について
文部科学省 2013 いじめ防止対策推進法