[PF072] 多面的学校不適応予防チェックリストの作成の試み(2)
Keywords:チェックリスト, いじめ, 不登校
問題と目的
学校におけるいじめや暴力行為,不登校,自死などの不適応問題は各調査で報告されており,その対策は急務である。しかし,これまで様々な予防プログラムが作られ取り組まれてきたが,課題も指摘されている(松尾,2002)。
小林(2004)は,学校不適応とは「児童・生徒が学校環境に適応できないことであり,このことは学校環境が児童・生徒に合わないことでもある」と述べている。また学校適応感について,大久保(2005)は「居心地の良さの感覚」「課題・目的の存在」「非信頼・受容感」「劣等感の無さ」の4因子からなる尺度を開発し,大対・大竹・松見(2007)は,従来の研究を概観し,行動的機能から学業的・社会的機能へ,そして学校適応感へと影響し合っているという,三水準モデルを示した。石井・井上・沖林・栗原・神山(2009)は,これらの先行研究などを踏まえ,学校適応感尺度を開発した。しかし,この尺度は主に児童・生徒の社会的サポートや対人面・学習面の能力について尋ねる尺度であり,小林(2004)が述べる学校不適応が起きる要因ともなる学校環境について尋ねる項目は含まれていない。
そこで,本研究では,イギリスの反いじめ協会のコンサルタントであるGeorge Varnavaが作成したCheck Pointsの「連携」「価値」「組織」「環境」「カリキュラム」「トレーニング」の観点を元に,日本版の多面的な学校不適応予防チェックリストを作成することを目的とする。
予備調査1:自由記述
方法
対象者:A県8市町の6小学校(生徒200名,教師25名,保護者・地域住民47名),5中学校(生徒137名,教師20名,保護者・地域住民39名),教育委員会25名。
質問紙:George Varnava氏の同意の元,Check Points for schoolを日本語に翻訳し,各観点について具体的に行われていることを自由記述で調査対象者に尋ねた。
結果と考察
KJ法により,回収された回答をCheck Pointsの観点ごとに回答を整理すると,児童・生徒,教師においてはトレーニングの比率が高いが,保護者・地域住民,および教育委員会では連携が高かった(Figure1)。
Figure1 いじめ予防の観点別にみた回答数
連携の観点について,児童・生徒においては,意見が全く出なかったことや,教師においても該当する回答数が少なかったことなどは,意識されていない課題と考王えられ,保護者や地域住民,教育委員会からあげられた回答を参考に,チェックリストを作成していく必要性が示唆された。
予備調査2:フォーカスグループ
方法
予備調査1でまとめられた回答を元に,十分回答が得られなかった観点について,各集団に追加項目を検討してもらうため,フォーカスグループを行った。
対象者:A県の小学生6名,中学生6名,保護者6名,学校長6名,養護教諭6名,小学校教諭6名,中学校教諭6名
結果と考察
連携に関して,「バザー」や「読み聞かせ」「登下校のあいさつ」など,児童生徒でも意識できる具体的な活動を聞き出すことができ,より日本の実態に即した項目が作成できると考えられる。また,今回は保護者や養護教諭,学校長にも聞くことができたため,トレーニングなどのたくさん候補が挙げられた観点について,項目を精選する示唆が得られ,最終的に39項目からなるチェックリストが作成された。今後の課題として,実際にチェックリストを実施し,学校現場での諸問題との相関を検討し,項目の精選を測る必要があると考えられる。
引用文献
V,George 2005 Checkpoints for schools. NSPCC
学校におけるいじめや暴力行為,不登校,自死などの不適応問題は各調査で報告されており,その対策は急務である。しかし,これまで様々な予防プログラムが作られ取り組まれてきたが,課題も指摘されている(松尾,2002)。
小林(2004)は,学校不適応とは「児童・生徒が学校環境に適応できないことであり,このことは学校環境が児童・生徒に合わないことでもある」と述べている。また学校適応感について,大久保(2005)は「居心地の良さの感覚」「課題・目的の存在」「非信頼・受容感」「劣等感の無さ」の4因子からなる尺度を開発し,大対・大竹・松見(2007)は,従来の研究を概観し,行動的機能から学業的・社会的機能へ,そして学校適応感へと影響し合っているという,三水準モデルを示した。石井・井上・沖林・栗原・神山(2009)は,これらの先行研究などを踏まえ,学校適応感尺度を開発した。しかし,この尺度は主に児童・生徒の社会的サポートや対人面・学習面の能力について尋ねる尺度であり,小林(2004)が述べる学校不適応が起きる要因ともなる学校環境について尋ねる項目は含まれていない。
そこで,本研究では,イギリスの反いじめ協会のコンサルタントであるGeorge Varnavaが作成したCheck Pointsの「連携」「価値」「組織」「環境」「カリキュラム」「トレーニング」の観点を元に,日本版の多面的な学校不適応予防チェックリストを作成することを目的とする。
予備調査1:自由記述
方法
対象者:A県8市町の6小学校(生徒200名,教師25名,保護者・地域住民47名),5中学校(生徒137名,教師20名,保護者・地域住民39名),教育委員会25名。
質問紙:George Varnava氏の同意の元,Check Points for schoolを日本語に翻訳し,各観点について具体的に行われていることを自由記述で調査対象者に尋ねた。
結果と考察
KJ法により,回収された回答をCheck Pointsの観点ごとに回答を整理すると,児童・生徒,教師においてはトレーニングの比率が高いが,保護者・地域住民,および教育委員会では連携が高かった(Figure1)。
Figure1 いじめ予防の観点別にみた回答数
連携の観点について,児童・生徒においては,意見が全く出なかったことや,教師においても該当する回答数が少なかったことなどは,意識されていない課題と考王えられ,保護者や地域住民,教育委員会からあげられた回答を参考に,チェックリストを作成していく必要性が示唆された。
予備調査2:フォーカスグループ
方法
予備調査1でまとめられた回答を元に,十分回答が得られなかった観点について,各集団に追加項目を検討してもらうため,フォーカスグループを行った。
対象者:A県の小学生6名,中学生6名,保護者6名,学校長6名,養護教諭6名,小学校教諭6名,中学校教諭6名
結果と考察
連携に関して,「バザー」や「読み聞かせ」「登下校のあいさつ」など,児童生徒でも意識できる具体的な活動を聞き出すことができ,より日本の実態に即した項目が作成できると考えられる。また,今回は保護者や養護教諭,学校長にも聞くことができたため,トレーニングなどのたくさん候補が挙げられた観点について,項目を精選する示唆が得られ,最終的に39項目からなるチェックリストが作成された。今後の課題として,実際にチェックリストを実施し,学校現場での諸問題との相関を検討し,項目の精選を測る必要があると考えられる。
引用文献
V,George 2005 Checkpoints for schools. NSPCC