日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PG

(5階ラウンジ)

2014年11月9日(日) 10:00 〜 12:00 5階ラウンジ (5階)

[PG005] 「スクールカースト」とコミュニケーション・スキル,学校適応感との関連

水野君平 (北海道大学)

キーワード:コミュニケーション・スキル, 学校適応感, 友人関係

問題と目的:鈴木(2012)は,「スクールカースト」の地位がコミュニケーション能力と学校適応に関連していることを示した。しかし,鈴木(2012)は,所属集団ではなく個人の人気度に関する指標(「私は人気者である」)で分析しており,関連させる項目数についても少ない。本研究では人気度だけではなく,集団間と集団内の地位という視点から,自身の所属する集団と所属する集団内での地位と,コミュニケーション・スキル(以下,CS),学校適応感(以下,適応感)の関係について,検討することを目的とする。

方法
調査協力者:公立中学校の学生1年~3年生の780名(男子395名,女子380名,性別不明5名)
調査時期:2013年10月
調査内容:(1)フェイスシート(学年,性別,クラス)。(2)CSの簡易版の尺度であるENDCORE(藤本・大坊,2007)を5件法に変更して用いた(6項目)。(3)学校適応感尺度(渡辺・内野,2009)の一部を用いた(8項目,6件法)。(4)教室内の立ち位置(「クラスで人気者か(以下,人気度)」「自身の所属するグループはクラスで中心的か(以下,中心度)」「自身が所属するグループの中で自分は中心か(以下,ポジション)」について4件法で尋ねた)。

結果と考察:教室内の立ち位置について,回答を鈴木(2012)と同様の方法で高・中・低の3分割にして,それぞれ独立変数とし,CSと学校適応感尺度の因子を従属変数として一要因の分散分析を行った。
その結果,また,中心度が高いとCS・適応感が高くなることが示された(表1)。低群と中群との比較でみた場合,以下のことが考えられる。地位の高い集団は表現力や解読力といった基礎的なCSよりも,自分をコントロールするスキル,相手に自分の意見を主張するスキル,対立などに対処し円滑に人間関係を築いてゆくスキル等といった,対人関係に関連する発展的なCSが関わる。適応感では学習での充実が関わる。
特に,本研究の結果の適応感について,鈴木(2012)では示されなかったことが3点あった。まず,教師に対する適応について,多重比較の結果は各群の間に有意な差は見られなかった。次に,学習への適応では低群と中群の間に,友人関係への適応では低群と高群の間に有意な差が見られた。つまり,自身が所属する友人グループの地位が低いことは,教師への適応には関連しないが,学習と友人に対する適応に関連した。生徒のグループから教師への肯定的な印象は地位では変わらなく,地位の低いグループは授業や学習に対する肯定的な印象を何らかの影響によって抱いていないという可能性が考えられる。
今後,「スクールカースト」を計量的に計測できる手法を検討することはもちろん,本研究で示された関連を明らかにすることが課題として挙げられる。